2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25400155
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
池畠 優 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90202910)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 物体散乱逆問題 / inverse problems / enclosure method / wave equation / Maxwell system / non destructive testing |
Outline of Annual Research Achievements |
(1) 複雑な既知の背景媒質に埋め込まれた未知の物体の存在する場所やその定性的性質を抽出する問題を、波動方程式に対する逆問題として定式化し、時間領域における波の物体散乱の逆問題に対する囲い込み法を展開した。その結果、観測場所と物体との距離の評価を与える不等式系や物体の定性的性質の情報を与える公式を導いた。これは本来Maxwell方程式系に対して展開される方法のひな型となると考えている。 (2) 波動方程式に対する外部問題に対して囲い込み法を展開し、解である波の満たす物体表面上の境界条件にあらわれる、エネルギーの減衰に貢献する係数の値を求める公式を確立した。 (3) 前年度に引き続き、Maxwell方程式系を支配方程式とする波の物体散乱の逆問題について、囲い込み法を指導原理として研究した。詳しくは次のとおりである。 形状および位置が未知の、有限の大きさの物体を考える。その外部で、任意に与えた方向に向けられたダイポールアンテナの数学的モデルである空間的に局在した源泉項によって初期時刻に電磁波を発生させ、物体から散乱された電磁波を源泉項の台と同じ場所で有限時間観測する。こうして得られた観測データから物体の位置あるいは形状についての情報を抽出する問題を考えた。ただし波の支配方程式は定数係数のMaxwell方程式系、物体表面上の境界条件は、今回はLeontovichの条件とし、主に次の二つの公式を得た。一つは、源泉項の台の中心と物体との最短距離の情報を陽に抽出する公式で、源泉項の方向についての影響を避けるため、二つの線形独立な方向に向けられた源泉によって生成された二組の波から作られる指示関数を用いている。もう一つは、物体表面上のLeontovich境界条件にあらわれる係数の定性的な情報を指示関数から抽出 する公式である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
波動現象等を記述する基本的かつ重要な方程式に対する逆問題を囲い込み法を用いて研究するとともに、囲い込み法それ自身の可能性を追求するという目的に合致した結果が、Maxwell方程式系に対して、より複雑な境界条件の場合に対して得られた。この解析を通してMaxwell方程式系に対する感覚がさらに磨かれたように思える。また、複雑な背景媒質に対しても、波動方程式に対してではあるが、囲い込み法が展開できたことは驚きである。もちろんこれは、偏微分方程式(系)に対する新たな考察すべきさまざまな問題を提起していることは言うまでもない。 ただし動く物体に対しては引き続き考察を要する。
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Strategy for Future Research Activity |
波動現象等を記述する時間に依存した基本的かつ重要な方程式(系)に対する逆問題について、囲い込み法は、さらにさまざまな形で展開できるはずである。 この信念のもと引き続きただひたすら考究する。
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