2015 Fiscal Year Research-status Report
再生核理論を用いたソボレフ不等式の最良評価とその応用
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25400210
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
武村 一雄 日本大学, 理工学部, 准教授 (60367216)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
亀高 惟倫 大阪大学, その他部局等, 名誉教授 (00047218)
楳田 登美男 兵庫県立大学, その他の研究科, 教授 (20160319)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ソボレフ不等式 / 最良定数 / グリーン行列 / 再生核 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度も昨年度に引き続き,当初の研究計画通りに,これまでの研究で得られてたグリーン関数のデータを再生核理論の視点に基づいて再整理を行った。並行して,これまで扱われることのなかった有限グラフ上の離散版ソボレフ不等式の最良評価(最良定数,最良ベクトル計算)に取り組み,ある特別な場合の有限グラフに限って,2種類のソボレフ不等式の最良評価を得ることができた。本研究成果の具体的な内容としては,平成25年度に研究成果の一つとしてすでに報告済みである「5つのプラトン正多面体上の離散ソボレフ不等式」の続きとして,5種ある切頂正多面体のうちの切頂正4,6,8面体とC60フラーレン上に対して離散ソボレフ不等式を導出,それぞれのソボレフ不等式に対して最良評価を得ることができた。切頂正4,6,8面体およびC60フラーレンのいずれの多面体の場合においても,各頂点に適切な番号付けを行うことで,離散ラプラシアン行列を導入した。離散ラプラシアン行列のグリーン行列と擬グリーン行列は各々適切なベクトル空間に内積を導入することで再生行列となることが分かった。この過程は,連続版ソボレフ不等式の導出とほぼ同様であった。こうした事実に基づいて,内積から2種類の離散ソボレフ不等式を導出後,グリーン行列および擬グリーン行列の対角成分を調べることによりそれぞれのソボレフ不等式に対応した最良定数が得られた。その際,これまで蓄積してきたグリーン関数のデータと連続版ソボレフ不等式の最良評価の手法が重要な役割を果たした。本研究成果は,すでに関連の深いジャーナルに投稿・出版済みである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は研究計画3年目であったが,論文の投稿に若干の遅れが見られるものの,全体としてはおおむね当初の研究計画通りに進んでいる。昨年度に引き続きこれまで求めてきたグリーン関数のデータを再生核理論の立場から整理し直すことができたために,これらの蓄積されたデータをもとに離散版ソボレフ不等式の最良評価を成果として得ることができた。本年度得ることができた結果は,今後の連続・離散ソボレフ不等式の最良評価に対する統一的手法の解明につながると考えている。 本年度はC60フラーレンや切頂正4,6,8面体の延長線上にある頂点次数が一定となるd-有限正則グラフについての結果を再整理して論文としてまとめることができた。本結果については,現在関連の深い雑誌へ投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究成果の内,特にC60フラーレンについての研究成果からソボレフ不等式の最良定数は,対象となる有限グラフの固さを表しているのではないかということが分かってきた。これは,離散ソボレフ不等式が各頂点の定常状態からの変位の絶対値の2乗の最大値を,上からポテンシャルエネルギー(隣接する頂点の伸びの2乗の和)の定数倍で評価する不等式だからである。すなわち,最良定数が「小さい」ことは「たわみにくい」という事実を表している。研究最終年度は,頂点数60のグラフに対応するソボレフ不等式の最良定数を求めて,対応する最良定数の大きさの比較を行い,C60フラーレンの最良定数が最も小さいことを検証したい。さらに,無向グラフだけでなく有向グラフへの拡張を進めて,離散ソボレフ不等式の意味づけを行いたい。
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Causes of Carryover |
昨年度執筆したd-有限正則グラフ上の離散ソボレフ不等式の最良評価については,関連の深いジャーナルに投稿済みであり,現在査読中である。このため,当初予定されていた学会発表,論文の投稿料金の支払いの遅れが生じたため次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は論文の受理後,速やかに本論文の結果について,関連の深い学会で発表を行う予定である。
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