2014 Fiscal Year Research-status Report
RHIC-PHENIXにおける重クォーク測定のための前置検出器トリガー回路の開発
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25400312
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
中川 格 独立行政法人理化学研究所, 仁科加速器研究センター, 専任研究員 (60505668)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今津 義充 独立行政法人理化学研究所, その他部局等, 研究員 (20593677) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | トリガー回路 / シリコン検出器 / 電子回路 / 原子核実験 / 検出器 / FPGA / クォークグルーオンプラズマ |
Outline of Annual Research Achievements |
当初はオンライントラッキング機能を持った追加回路を2年かけて開発し既存のFVTX検出器読み出しにトリガー機能を取り付ける計画であったが、予算の事情から停滞していたPHENIX実験の高度化計画が昨年急展開し、想定外に前倒しされる事が決まった。これにより現行PHENIX測定器群は2016年を持って解体されることになり、当初の計画通り開発が進んだとしても解体前最後の実験には間に合わなくなり計画の見直しを余儀なくされた。追加回路はFVTX後方の飛跡検出器との洗練されたオンライントラックマッチングをするためには必須だが、トラックマッチングを要求せず、かつ粗いオンライントラッキングのみであれば、既存読み出し回路のFPGA予備能力を使ってFVTXにトリガー機能を持たせる事ができる。 そこで、近年急速に注目を浴び始めた高エネルギー重イオン同士衝突以外の衝突系での集団的運動現象の検証に着目した。従来クォークグルーオンプラズマ(QGP)現象は重イオン同士のみで観測されると考えられていたが、近年LHCやRHICで金-重水素、鉛-陽子等の小さな衝突形でもQGPのような集団的運動を示唆する観測結果が得られてきている。さらにCMS実験では陽子-陽子でも観測されたとの報告がなされた。この結果は未だ他の実験で追試されていない。この現象を観測するためには、PHENIXに粒子多重度を選択的にトリガーする機能が必要である。この粒子多重度トリガーは上述のFVTXの粗いオンライントラッキングで対応でき、オンライントラックマッチングも必要としない。昨年6月にはこの方針転換を固め、粒子多重度トリガーのFPGAプログラム開発に着手した。8月にはプログラムの雛形を完成させ、秋にはテストベンチで詳細なデバッグ作業を行った。12月には実機にインストール、2月の実験開始時にコミッショニングを行い、3月から現在に至るまで物理データを取得中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新たなトリガー電子回路開発を回避したためFVTXトリガーの実用化は一年早まり、当初プロトタイプテストの予定であった今年の実験(Run15)で、すでに物理データを取得中である。トリガーのパフォーマンスはデザイン通りの棄却能力、トリガー効率で稼働している事が確認できている。この意味では当初の計画以上に進展していると言えるが、観測を目指した物理が変わったので敢えて概ね順調に進展している、とした。現在は取得したデータのクォリティーチェックを進めている。また既存のトリガーに比べてどれだけ感度が優れているかの定量的評価も行い、その優越性も証明した。
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Strategy for Future Research Activity |
実験期間中はトリガーの稼働に細心の注意を払い、より高いクォリティーのデータ取得に勤める。同時にトリガーFPGAプログラムへのデバッギング機能追加等の高度化も稼働と同時に進行させ、より高い完成度を目指して行く。実験終了後は物理解析を進める。一方で実用化を急ぐため、現行では極力追加ハードウェアを回避したため、現行のトリガーデザインには、実際の粒子多重度に対する感度にまだ改善の余地がある。翌年の実験Run16ではFVTXトリガーが必要となる実験が走るか未定であるが、もし走る見通しとなればハードウェアの開発も視野に入れた上で感度向上への高度化に取り組む。
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Causes of Carryover |
新たな回路開発を回避したため、プロトタイプ制作費の執行がなかった。一方で一年目に理研内にトリガー開発のためのFVTX読み出し回路設置に時間がかかった経験を踏まえ、FVTX検出器の専門家の手厚いアドバイスが得られるロスアラモス、及びブルックヘブンに長期滞在する旅費により多くの資金を使用した。これが功を奏してトリガー開発は劇的に進行し、現在物理データが取得できている。この実用化が早く実現できたのは、ハードウェアの開発/追加を極力排除する戦略を取ったからである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年の実験でFVTXトリガーが使用される場合は、粒子多重度に対する立ち上がりの感度等パフォーマンス向上に使用する。今年度は実用化を急いだため、ハードウェアの追加を極力避けたが、ハードウェアの追加によってまだ性能を向上させる余地が残されている。また、物理データの収集が計画よりも一年早まったため、秋頃を目処にプレリミナリーな結果を出し、共同研究者の国際会議での発表費用に充てる予定。
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