2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25400318
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
佐藤 公法 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (00401448)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 層状粘土鉱物 / ナノ空間サイト / ポジトロニウム / 特異吸着 |
Research Abstract |
土壌中のセシウム吸着メカニズムの解明に向けて,層状粘土鉱物において,これまで見出されていないセシウム特異吸着サイト(セシウムを特異的に強く吸着するサイト)を解明することが本研究の目的である。セシウム吸着サイトとして,これまで考えられてきた層表面(オングストロームスケールの層間)に加えて,新たな吸着サイト(空間サイト)に焦点を当てる。層間を含めた様々なオングストローム空間サイトの検出,およびそのサイズと量の評価はポジトロニウム寿命計測により行う。次に,陽電子寿命・運動量相関(AMOC計測)により,オルトポジトロニウムピックオフ消滅に起因する消滅ガンマ線光子の運動量分布を抽出し,ポジトロニウム寿命計測で得られた空間サイト近傍のセシウム元素分析を行う。ポジトロニウム寿命計測で得られた空間サイトに対して,AMOC計測でセシウムが検出されれば,本研究で見出された空間サイトがセシウム吸着に寄与することが実証されることになる。次に,セシウムを導入した試料を高濃度塩酸を用いた洗浄後,再びAMOC計測により空間サイト近傍のセシウム分析を推進する。洗浄後にも,空間サイト近傍に,セシウムが吸着していれば特異吸着と判断される。最終的に,ポジトロニウム寿命計測で得られた様々な空間の中で,セシウム特異吸着として機能するサイトを明らかにする。本研究では,層状粘土鉱物のナノシートエッジ端面が構成する空間サイトに着目し,そこで起こるセシウム特異吸着性を幾何学的な捕捉性や化学吸着の観点から考察する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は,粘土鉱物として合成無機層状化合物試料として,実際に土壌中に豊富に存在するスメクタイト粘土鉱物であるサポナイト合成無機層状化合物を調達・調整した。セシウム導入前の試料に対して,ポジトロニウム(Ps)寿命計測による空間サイトの検出,陽電子寿命-運動量相関(AMOC)計測による空間サイト近傍の元素分析を推進した。半径0.3 nm,0.9 nmの大小二種類の空隙を検出し,絶乾状態では0.9 nmスケールの空隙が,水和が進んだ状態では0.3 nmスケールの空隙が支配的であることを見出した。水和が進むにつれ,0.9 nmスケールの空隙が0.3 nmスケールの空隙に徐々に変化して緻密化していく自己集積化現象も見出した。湿式型レーザー回折式粒度分布測定による粒度分布の定量を試みたが,凝集のため,精度よく定量することはできなかった。以上より,当初予定していた層状粘土鉱物の調達・調整,セシウム導入前の試料に対しての空間サイトの調査は順調に進んだと言える。現在までの達成度はおおむね順調と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,サポナイト無機層状化合物へのセシウムの導入と,セシウム導入試料,さらには洗浄を行った試料中のオングストロームスケール空間サイトの調査を計画している。ここでは,放射性セシウムが土壌に流れ出た状況を想定し,塩化セシウム水溶液を用いて導入を試みる。セシウム導入後のサポナイトに対して,再びPs寿命計測とAMOC計測を推進し,空間近傍の元素分析を推進する。Ps寿命計測で得られた空間サイトにAMOC計測でセシウムが検出されれば,本研究で見出された空間サイトがセシウム吸着に寄与することが実証されたことになる。除染を想定し 溶液によって導入されたセシウムを除去する作業を試みる。ここでは,水素イオン指数(ph)が3以下の高濃度塩酸を用いて洗浄する。塩酸洗浄した粘土鉱物に対して,再びポジトロニウム寿命計測とAMOC計測を推進し,空間近傍の元素分析を試みる。高濃度塩酸で洗浄後にセシウムが検されれば,本研究で見出された空間サイトがセシウム特異吸着に寄与していることが実証される。このような一連のルーチンワークを推進し,ポジトロニウム寿命計測で得られた様々な空間の中で,セシウム特異吸着として機能するサイトを明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度,セシウム洗浄用等器具一式の導入を予定していたが,研究進展上そこまで至らなかった。 次年度予算として,上記機器を計上する。これに加えて,消耗品,旅費として使用する計画である。
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Research Products
(14 results)