2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25400318
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
佐藤 公法 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (00401448)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 層状粘土鉱物 / ナノ空間 / ポジトロニウム / 特異吸着 |
Outline of Annual Research Achievements |
土壌中のセシウム吸着メカニズムの解明に向けて,層状粘土鉱物において,これまで見出されていないセシウム特異吸着サイト(セシウムを特異的に強く吸着するサイト)を解明することが本研究の目的である。セシウム吸着サイトとして,これまで考えられてきた層表面(オングストロームスケールの層間)に加えて,新たな吸着サイト(空間サイト)に焦点を当てる。層間を含めた様々なオングストローム空間サイトの検出,およびそのサイズと量の評価はポジトロニウム寿命計測により行う。次に,陽電子寿命・運動量相関(AMOC計測)により,オルトポジトロニウムピックオフ消滅に起因する消滅ガンマ線光子の運動量分布を抽出し,ポジトロニウム寿命計測で得られた空間サイト近傍のセシウム元素分析を行う。ポジトロニウム寿命計測で得られた空間サイトに対して,AMOC計測でセシウムが検出されれば,本研究で見出された空間サイトがセシウム吸着に寄与することが実証されることになる。次に,セシウムを導入した試料を高濃度塩酸を用いた洗浄後,再びAMOC計測により空間サイト近傍のセシウム分析を推進する。洗浄後にも,空間サイト近傍に,セシウムが吸着していれば特異吸着と判断される。最終的に,ポジトロニウム寿命計測で得られた様々な空間の中で,セシウム特異吸着として機能するサイトを明らかにする。本研究では,層状粘土鉱物のナノシートエッジ端面が構成する空間サイトに着目し,そこで起こるセシウム特異吸着性を幾何学的な捕捉性や化学吸着の観点から考察する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は,予定通りサポナイト無機層状化合物に1Mの塩化セシウム水溶液を用いてイオン交換によりセシウムを導入した。セシウム導入後のサポナイトに対して,ポジトロニウム(Ps)寿命計測と陽電子寿命-運動量相関(AMOC)計測を推進し,ナノ空間のサイズ定量,空間近傍の元素分析を行った。Ps寿命計測により,セシウム導入前試料と同様に半径0.3 nm,0.9 nmの大小二種類のナノ空間が検出された。また,水和とともに緻密化していく自己集積化減少も確認された。セシウム導入により,自己集積化する時間スケールが10日間から20日間に増加した。ナトリウムと比較してセシウムが水和しにくいため,自己集積化が抑制されていることが推測できる。セシウム導入試料について,AMOC計測により得られた運動量パラメータが,高運動量領域で有意な増加が確認された。このことは,Ps寿命計測により検出されたナノ空間にセシウムが吸着していることが示唆している。以上より,当初予定していたサポナイト無機層状粘土鉱物中のナノ空間に対するセシウム吸着の調査は順調に進んだと言える。現在までの達成度はおおむね順調と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
セシウム導入前後のスメクタイト鉱物試料について,ポジトロニウム(Ps)寿命計測と陽電子寿命-運動量相関(AMOC)計測を組み合わせたナノ空間解析は,ナノ空間サイトに対するセシウム吸着を分析するために,本研究課題で確立されたルーチンワークであり,最終年度である平成27年度も引き続き継続して推進する。ヘクトライトやスティーブンサイトなど,サポナイトと類似なスメクタイト鉱物についてもナノ空間計測を推進する。とりわけ最終年度は,特異的に強いセシウム吸着サイト(特異吸着サイト)に着目する。セシウム導入後の試料について,水素イオン指数(ph)が3以下の高濃度塩酸を用いて洗浄する。塩酸洗浄した試料に対して再びポジトロニウム寿命計測とAMOC計測を推進し,空間近傍の元素分析を試みる。高濃度塩酸で洗浄後にセシウムが検されれば,本研究で見出された空間サイトがセシウム特異吸着に寄与していることが実証される。このような一連のルーチンワークを推進し,ポジトロニウム寿命計測で得られた様々な空間の中で,セシウム特異吸着として機能するサイトを明らかにする。
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Research Products
(12 results)