2013 Fiscal Year Research-status Report
遷移金属化合物表面における特異なスピン・電荷・軌道状態の分光研究
Project/Area Number |
25400356
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
溝川 貴司 東京大学, 新領域創成科学研究科, 准教授 (90251397)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 遷移金属化合物 / X線吸収分光 / 軌道秩序 / 酸素ホール / 角度分解光電子分光 / スピン軌道相互作用 / 相分離 / リチウムイオン電池 |
Research Abstract |
今年度は、リチウムイオン電池の正極材料として広く利用されているコバルト酸リチウムの電子構造をX線吸収分光によって研究し、脱リチウムによってコバルトの形式価数が変化する際に酸素2p軌道にホールが生成することを発見し、この酸素ホールがリチウムイオンの移動を助ける働きを持つことを示した。この結果を報告する論文はPhysical Review Letters誌に掲載され、リチウムイオン電池の発展に貢献する成果として注目を集めている。また、光合成で中心的な役割を果たすマンガンクラスターとの関連が指摘されているホランダイト型マンガン酸化物の電子状態をX線吸収分光によって研究し、その構造相転移の機構において酸素ホールが重要な役割を果たすことを指摘した。一方、三角格子を持つ超伝導体として注目されているイリジウムテルライドをX線吸収分光および光電子分光によって研究し、イリジウムの二量体の形成と軌道秩序が重要な役割を果たしていることを解明した。また、その超伝導状態においてイリジウムおよびテルルの巨大なスピン軌道相互作用が本質的な役割を果たすことを指摘した。これらの成果に関する一連の論文は、Journal of Physical Society of Japan誌、Physical Review B誌に相次いで発表されて、固体物理学の分野で注目を集めている。さらに、国内外で盛んに研究されている鉄系超伝導についても、X線吸収分光と光電子分光による研究を推進し、反強磁性状態と超伝導状態との相分離と鉄3d軌道の秩序との関連について成果を挙げることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
国内のPhoton Factory、カナダのCanadian light source、イタリアのElettra、スイスのSwiss light sourceなど国内外の多数の放射光施設において予想以上のビームタイムを獲得することができ、当初の研究計画以上に研究が進展した。今年度中に出版された当課題に関連する原著論文は10編を超えており、現在準備中の論文も多数あるため、来年度中にはさらに多数の重要な原著論文を発表することが期待できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
2次電池の電極材料や光触媒の材料などエネルギー問題の解決に貢献できる遷移金属酸化物を放射光分光でさらに解明していくと同時に、特異な超伝導体など凝縮系物理学の分野で注目されている興味深い物質群について幅広く研究を展開する方針である。
|
Research Products
(18 results)
-
[Journal Article] Te 5p orbitals bring three-dimensional electronic structure to two-dimensional Ir0.95Pt0.05Te22014
Author(s)
D. Ootsuki, T. Toriyama, S. Pyon, K. Kudo, M. Nohara, K. Horiba, M. Kobayashi, K. Ono, H. Kumigashira, T. Noda, T. Sugimoto, A. Fujimori, N. L. Saini, T. Konishi, Y. Ohta, and T. Mizokawa
-
Journal Title
Physical Review B
Volume: 89
Pages: 104506-1--4
DOI
Peer Reviewed
-
[Journal Article] Important Roles of Te 5p and Ir 5d Spin-Orbit Interactions on the Multi-band Electronic Structure of Triangular Lattice Superconductor Ir1-xPtxTe22014
Author(s)
D. Ootsuki, T. Toriyama, M. Kobayashi, S. Pyon, K. Kudo, M. Nohara, T. Sugimoto, T. Yoshida, M. Horio, A. Fujimori, M. Arita, H. Anzai, H. Namatame, M. Taniguchi, N. L. Saini, T. Konishi, Y. Ohta, and T. Mizokawa
-
Journal Title
Journal of Physical Society of Japan
Volume: 83
Pages: 033704-1--4
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
-
-
-
[Journal Article] Electronic Structure Reconstruction by Orbital Symmetry Breaking in IrTe22013
Author(s)
D. Ootsuki, S. Pyon, K. Kudo, M. Nohara, M. Horio, T. Yoshida, A. Fujimori, M. Arita, H. Anzai, H. Namatame, M. Taniguchi, N. L. Saini, and T. Mizokawa
-
Journal Title
Journal of Physical Society of Japan
Volume: 82
Pages: 093704-1--4
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-