2014 Fiscal Year Research-status Report
フラストレーションによって誘起された4fホール系の圧力下量子臨界現象
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25400375
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
梅尾 和則 広島大学, 自然科学研究支援開発センター, 准教授 (10223596)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 磁気フラストレーション / 4fホール系 / 高圧力 / 非フェルミ液体的挙動 / 比熱 / 磁化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,Yb化合物の磁気フラストレーションを圧力によって制御し,その際に出現する量子臨界点(QCP)での超伝導や非フェルミ液体的挙動を探索し,それらに対する磁気フラストレーションの影響を明確にすることを目的とする。試料として取上げた擬カゴメ格子系YbAgGeは常圧下で二段の磁気転移をTM1=0.8 KとTM2=0.65 Kで示す。最近,我々は第二のQCPがPC2=16 GPa付近にあることを見出した。そこで,その第二QCPでの圧力誘起超伝導や特異な臨界現象出現の可能性を探る。 平成26年度では,比熱と電気抵抗測定の上限圧力を20 GPaまで引き上げるため,装置を改良した。比熱測定では,アンビル先端直径をこれまでの3㎜から2.4㎜に小さくし,アンビル先端に施した窪みの形状を改良した。現在,試料部とアンビルとの熱的絶縁のためのダイヤモンドパウダーの最適化等を行い,20 GPaまでの比熱測定に向けて改良中である。電気抵抗測定では,高圧下で安定して電気抵抗測定が可能なアンビルトップ中央に穴を開けたアンビルのテストを行い,10 GPaまでの圧力下でトラブルなく電気抵抗測定に成功した。 関連するYb化合物の研究として,平成26年度はTN=4.2Kで反強磁性転移する三角格子系YbCuGeの磁気フラストレーション効果の影響を探るため,1.5 GPaまでの静水圧下および,0.1 GPaまでの一軸圧力下磁化測定を行った。その結果,静水圧下および三角格子が歪まない六方晶のc軸方向に加圧した場合では,TNは全く変化しなかったが,三角格子が変形するa軸方向に0.07 GPaまで加圧した場合,TNは4.4 Kまで上昇した。この結果は常圧下で既に磁気フラストレーションによってTNが抑制されていることを強く示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高圧下における電気抵抗,磁化,比熱測定法の改良により,当初予定していた20 GPaまでの測定に目途が立ち, YbAgGeの第二QCPであるPC2=16 GPaでの圧力誘起超伝導や特異な臨界現象出現の可能性を探る準備がほぼ整った。 また,関連するYb化合物の研究として,三角格子反強磁性体YbCuGeの一軸圧力下磁化測定を行い,磁気フラストレーションによって転移温度が抑制されていることを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も高圧下における電気抵抗,磁化,比熱測定法を改良し,20 GPaまでのそれらの測定法を確立する。それらの方法を用いて YbAgGeの第二QCPであるPC2=16 GPaでの圧力誘起超伝導や特異な臨界現象出現の可能性を探る。 PC2=16 GPa付近での超伝導探索のために,まず,電気抵抗を最高圧力20 GPa,最低温度0.1 K,最大磁場6 Tまで測定する。電気抵抗測定には交流4端子法を用いる。加圧には,これまで大橋政司氏(現金沢大)らの開発した溝付きブリッジマンアンビルを用いていたが,10 GPa以上でアンビルが割れてしまう事故が多発してそれ以上加圧できなかった。さらにアンビル材を焼結ダイヤモンド製に変更することで20GPaを発生できたが,その直後アンビルが割れてしまった。アンビルを破壊せずに安定して20 GPaの圧力を発生するために,北川氏(現高知大)が開発したアンビルトップに穴の開いたアンビルを用いる。比熱測定の上限圧力を20 GPaまで拡大するために,アンビル先端の小型化,ダイヤモンドパウダーの最適化等を行う。磁化測定の最大圧力を20GPaまで拡張するために,アンビル材をジルコニアをベースにした高強度セラミック材に変更する。圧力セルの冷却には断熱消磁冷凍機を用いる。以上の測定から,PC2=16 GPa付近での超伝導出現の有無と,抵抗や比熱に非フェルミ液体的挙動が出現するかどうかを調べる。圧力下の物性測定については,梅尾が大学院生を指導,教育しながら行う。 また,関連するYb化合物として,防衛大の加藤氏が育成したジグザグ格子重い電子系YbIrGe, YbRhGeの研究も開始する。
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Causes of Carryover |
物品購入費および旅費の経費の端数が生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は上記使用額を含めて,端数が生じないように計画的に使用する。
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Research Products
(7 results)