2013 Fiscal Year Research-status Report
現世および考古遺跡における高潮・越波堆積物の認定と津波堆積物との比較
Project/Area Number |
25400494
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka Museum of Natural History |
Principal Investigator |
中条 武司 大阪市立自然史博物館, その他部局等, 学芸員 (80321917)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 越波堆積物 / 台風 / 考古遺跡 |
Research Abstract |
本研究は、現世および考古遺跡発掘現場において台風を起源とする高潮及び越波堆積物についてその堆積相を記載・解釈し、海岸低地での高潮および越波の侵食・堆積過程を明らかにすることを目的としている。 現世では三重県松阪市松名瀬海岸における台風堆積物を検討し、2004年と2013年に形成された越波堆積物による微地形と堆積物の概略について調査を行った。越波堆積物は、河口沿岸部に延びる砂嘴をチャネル状~シート状に侵食し、その後背に広がる泥質潮汐低地にいたると扇状に広がる地形(以下、ファン)を形成している。ファンの比高はほぼ砂嘴と泥質潮汐低地の比高差と同じであるが、その形成時期によって比高が異なる。2013年に形成されたファンは、2004年に形成されたファンを20~40cm下刻し、砂嘴後背へと広がっている。そのため、2004年に形成されたものよりその比高は低く、2004年のものより陸側に前進するような形状を持っている。ファン前面(陸側)の泥質潮汐低地には、薄く扇状に広がる地形が認められることから、ファンを形成した砂質物がさらに広がり、泥質潮汐低地に広く分散したことが示唆される。これらの成果は、日本堆積学会2014年山口大会において「伊勢湾南西部櫛田川河口におけるウォッシュオーバー・ファンとその形態」として報告した。 考古遺跡発掘現場においては、西大阪平野において沿岸域の堆積物を挟在する遺跡が、大阪市西成区の一箇所のみしか見いだせず、十分な検討ができなかった。しかし、この現場においても台風の作用による沿岸堆積作用は顕著であり、これまでの研究成果と併せると、西大阪平野の形成過程において台風による堆積作用は無視できないものであることが明らかとなってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
三重県松名瀬海岸における越波堆積物については、2004年の台風による越波堆積物が存在していることが申請者によるこれまでの研究でわかっていたが、2013年9月の台風18号により、それをさらに更新する越波堆積物が形成された。このことにより、侵食・堆積過程の詳細な検討が可能となり、現在はその微地形の検討および堆積物について粒度分析を実施し、その一部について学会発表を行うなど、現世の越波・高潮堆積物の研究については予定通りに進行している。 一方、西大阪平野における考古遺跡発掘は数が少なく、その中でも沿岸域の堆積物を挟在する遺跡はさらに少なくなる傾向にある。2013年度では検討対象となる遺跡は一箇所のみであったため、考古遺跡からの検討については予定よりやや遅れる結果となった。しかし、申請者のこれまでの研究結果を補完する結果となっており、台風による堆積物が西大阪平野の形成に重要であることが確かめられた。
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Strategy for Future Research Activity |
三重県松名瀬海岸における越波堆積物については、2013年度はその微地形および粒度分析について実施したが、2014年度はトレンチ調査を実施し、越波堆積物の形成過程について詳細に検討する予定である。越波堆積物は、侵食過程と堆積過程が同時もしくは時間をあけずに進行することが予想されると共に、台風通過後の静穏時の作用が越波堆積物(とみなされる堆積体)に影響を与えていると考えられる。トレンチ調査はこの点を十分に解明することができると期待される。また、粒度分析についてもさらに試料数を増やし、静穏時の堆積物と越波および高潮堆積物との識別について検討していく予定である。 西大阪平野における考古遺跡については、発掘現場での情報を収集し、検討数を増やしていく予定である。さらにこれまでに検討した遺跡での試料から年代測定などを実施し、平野の変遷と台風などのイベントの関わりから、平野形成へのイベントの関与について検討を進めていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
西大阪平野の遺跡が予定していた発掘が実施されなかったため、その分の年代測定・微化石測定などの分析の委託業務を実施しなかった。また、野外調査を秋以降のみで実施したために、旅費の使用も予定より少なかった。 新規の遺跡からの試料が得られれば、その試料を用いて分析する予定であるが、得られない場合は前年度に実施した遺跡調査の試料を保存しているため、その試料を用いて分析を実施する予定である。また、物品費についても当初計画より増額となるが、使用していく計画である。
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Research Products
(1 results)