2014 Fiscal Year Research-status Report
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25400538
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
河野 光雄 中央大学, 総合政策学部, 名誉教授 (00038564)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | イオン対プラズマ / 分散関係式 / 後進波 / 統計力学運動論 / 流体力学理論 / イオンサイクロトロン波 |
Outline of Annual Research Achievements |
宇宙生成の動的発展プロセスを探るうえで重要な物質―反物質プラズマの研究はその寿命が短いので実験室では無理とされてきたが、イオン対プラズマの安定な生成に成功した東北大学で行われた波動実験が計測した特異な分散特性は、この10年間にわたって理論による解明の試みをことごとく退けてきた。これまでの理論研究は流体記述によるものであり、実験結果が示唆していた粒子運動論的特性である高次サイクロトロン共鳴を無視したものであった。2013年度は実験と同じ条件のもとでの境界値問題を解析的に解くことは煩雑を極めたが、イオンプラズマ波、イオンサイクロトロン波とその高調波、イオンの熱的搖動波の各分散特性を求め、実験とよく合う結果を示した。特に実験で特徴的であった3つの後進波のすべてを同定した(("Electrostatic Ion Cyclotron and Ion Plasma Waves in a Symmetric Pair-Ion Plasma Cylinder"(PRL 112, 105001(2014))。 ところで、プラズマ物理における統計力学的運動論と流体力学とは相補的であり、波動の分散特性は基底波に関する限り同じ結果を導くはずである。このことはこの10年にわたって検討されてきた流体理論の基礎方程式が不完全なことを示唆している。これまで議論されてきた流体力学方程式でも焦点のバックワード波の存在は磁場による対称性の破れから説明できることであるが分散関係式は実験結果を定量的に説明できない。2014年度はジャイロ粘性項もつ2成分流体力学方程式を用いることで有限ラーマー半径効果を考慮した分散関係式を導出したが、境界条件を満たす解の解析までにはいたらなかった。2015年度に解決を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
10年来未解決であった実験結果は統計力学的運動論によって整合的に説明されることを示し、物理的機構を明らかにできたが、プラズマにおける理論体系のもう一方の柱である流体力学的アプローチにおいても少なくともイオンサイクロトロン波の高調波を除けば、同様の結果が得られるはずだという期待からすれば、半分を達成し、統計力学的運動論に対応するジャイロ粘性項を持つ流体力学的アプローチによって分散関係式を導いた点において、全体の3分の2は達成したといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2014年度にジャイロ粘性項をもつ流体力学方程式から分散関係式を得た。ジャイロ粘性項は有限ラーマー半径効果を記述するものであり、統計力学的運動論には本来的に考慮されているものである。流体力学的アプローチによる実験の境界条件に見合う分散関係式は複雑で、近似的な解析解が得られそうも無いので、数値解を求めることになる。
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Causes of Carryover |
端数なので次年度に持ち越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
費目別使用内訳:①物品費:5,367円、②旅費:0円、③人件費・謝金:0円、④その他:0円
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