2014 Fiscal Year Research-status Report
有機半導体薄膜の導電性基板界面の構造調整による電子物性制御
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25410093
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐藤 直樹 京都大学, 化学研究所, 教授 (10170771)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
MURDEY Richard 京都大学, 化学研究所, 助教 (20447931)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 有機エレクトロニクス / 有機半導体薄膜 / 電極界面 / 整流特性 / ブロッキング電極 / トラップ状態 / 電荷注入障壁 / 光電荷担体発生 |
Outline of Annual Research Achievements |
有機エレクトロニクス素子構築に不可欠な有機半導体薄膜の導電性基板との界面について、個々の素子に依らない基本的な重要問題に取り組むため、1) 導電性基板の選択に伴う構造的・電子構造的要因の解明、2) 基板上に形成する有機半導体薄膜の成長過程の把握、3) 基板界面や成長に伴う薄膜の構造挙動と電荷担体の発生・消滅の相関解明、4) 電荷担体輸送の膜構造依存性の精査、5) 外場印加や光照射などによる界面環境と電荷挙動の追跡、を系統的に行い、得られる結果を総括して、導電性基板との界面をもつ有機半導体薄膜の電子物性を制御する根本要因を明らかにすることが本研究の目的である。 有機半導体薄膜の電気伝導性が成長過程で「その場」測定できる超高真空装置により鉛フタロシアニン薄膜の二端子素子について初年度の上記1,3,5) を中心に行った研究で、高いバイアス電圧印加による整流作用を見出し、それがブロッキング電極の界面で素子電流が受ける電荷注入制限によること、そうした素子の電子物性制御には薄膜中のトラップ状態の把握と制御が不可欠であることが判ったため、これを受けて二年目は装置・実験方法を改良・最適化しつつ、電荷注入に対するエネルギー障壁、すなわち電極のフェルミ準位と有機半導体の移動度端とのエネルギー差を捉えつつ素子挙動の詳細な解明を行った。 併せて、当初の計画どおり薄膜形成に伴う構造挙動が関わる2,4) に沿った知見の獲得についても、膜構造制御を念頭に置き導電性基板の表面修飾やα-セキシチオフェン薄膜の適用などにより系統的な実験を進めた。その一つの成果として、有機半導体の5) に係る懸案事項である光電荷担体発生の機構解明に関して、内因性光伝導と外因性光伝導との間の識別について本質的な意味を与えうる実験事実を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、有機半導体薄膜の導電性基板との界面に関する基本的な重要問題に取り組むため、「研究実績の概要」にも記した五つの観点・サブテーマ設定に基づく研究展開を図っている。 二年目は、幅広い応用を念頭に置いた場合に最も基本的であり多角的視点からの精査が必要不可欠なことから当初より注目している有機半導体薄膜二端子素子について、初年度の研究実施状況と得られた成果、特にそこで見出した特徴的な電気伝導挙動に焦点を合わせ、電荷注入に対するエネルギー障壁すなわち電極のフェルミ準位と有機半導体の移動度端とのエネルギー差を捉えつつ素子挙動の詳細な解明に注力し、電極界面近傍の有機半導体薄膜中のトラップ状態が果たす役割の重要性について理解を深めた。 併せて、当初の計画に沿った薄膜形成時の構造挙動が関わる2,4) に係る研究についても、「概要」に記載のように有機半導体の懸案事項である光電荷担体発生の機構解明にとって十分に有用な成果を得た。 また、初年度に着手した既存装置の改良を踏まえた実験装置の機能拡張も進めることができたため、導電性基板材料と有機半導体分子の選択・最適化を通じた膜構造制御のダイナミックレンジ拡張が可能になりつつあり、それが上記の懸案事項への対処にも寄与した次第である。 以上により、本研究の目的を達成するための実施状況として、これまでに得られた成果は最終年度の研究遂行にとって十分な環境を整えたと考えられるため、現在までの達成度としては少なくとも上記のような判断が妥当と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
有機エレクトロニクスの将来に及ぶ発展に資するため、有機半導体薄膜の導電性電極基板との界面に係る基本的な未解決問題について、電荷担体(キャリヤ)に注視してその生成や輸送の様態の精確な把握を通じた解明を念頭に置いて、本研究では、超高真空中で導電性基板上に有機半導体薄膜を調製しつつその電導性や光伝導性を「その場」観測する実験方法を駆使して臨んでいる。 最終年度は、これまでの二年間に有機半導体薄膜素子の特に電極界面に注目して得られた種々の知見を体系的に整理して、電荷担体の視点に立った有機半導体薄膜の構造-電子物性相関を明確化するとともに、それに基づいて界面の調整とその近傍の薄膜構造制御により系の電子物性を支配する要因を抽出することを目指す。特に、薄膜中のトラップ状態が素子挙動に本質的な影響を及ぼしていることが確認できたため、実験方法の最適化もさらに進めつつ、電荷担体に視点を置いて有機半導体薄膜/電極界面の動的状況も含めた構造-電子物性相関の把握に努める。 有機エレクトロニクスには光電変換機能にも大きな期待が寄せられている状況を踏まえれば、光電荷担体発生の機構解明にとって十分に有用な知見を得た二年目の成果は大きな意味をもつと考えられ、その関連での研究展開も併せて図りたいと考えている。すなわち、「有機半導体薄膜の導電性基板界面の構造調整による電子物性制御」を課題とする本研究は、個々のデバイスに依らない基本的な重要問題の解決に向けたものだが、上述の有機半導体薄膜/電極界面の構造-電子物性相関の把握が適切に進めば、それに基づき特定の有機半導体薄膜素子について動作挙動が制御できる例を具体的に示すことも可能と考えている。
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Research Products
(15 results)