2015 Fiscal Year Research-status Report
水蒸気凝縮法を用いた個別ナノ粒子質量分析法の開発と大気ナノ粒子測定への応用
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25410140
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
古谷 浩志 大阪大学, 科学機器リノベーション・工作支援センター, 准教授 (40536512)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 大気ナノ粒子 / PM2.5 / 単一微粒子質量分析計 / 化学組成 / 混合状態 / 中国北京市 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初、日本において実大気中の大気ナノ粒子の観測を行う予定であったが、PM2.5大気汚染が大きな社会問題となっている中国において、最もPM2.5大気汚染が厳しい冬季に北京市おいて大気エアロゾル観測を清華大学と共同で行う貴重な機会が得られたため(当初予定:平成27年1-2月)、本研究に用いるレーザーイオン化単一微粒子質量分析計(ATOFMS)、水蒸気凝縮粒子カウンターと静電サイズ分級器(WCPCとDMA:サイズ分布測定のため)を中国に持ち込み、北京市において大気ナノ粒子も含む大気エアロゾル観測を行うことにした。しかし、中国側の輸入許可取得が遅れ、機材の現地到着が3月末となり当初の目的である冬季観測ができなくなった。北京市での大気エアロゾル観測は非常に貴重な機会であるため、代わりに平成28年2月まで清華大学の協力のもと大気観測を継続することとし、水蒸気凝縮法を用いた粒径範囲50-200 nmの大気ナノ粒子の観測は、補助事業期間の延長を申請し平成28年度に行うことにした。中国北京市における大気観測では、冬季だけでなく夏季や秋季における高濃度PM2.5イベント時の大気エアロゾルの観測を行うことができ、大気ナノ粒子を含む粒径範囲100-1500 nmの大気エアロゾルの粒径別個別化学組成や粒径範囲15-600 nmの大気ナノ粒子の粒径分布を長期に亘り観測することができた。秋季高濃度PM2.5イベント時の個別エアロゾル化学組成のデータ解析からは、高濃度PM2.5イベント発生時には、有機物質と混合した大気エアロゾルの割合が大きく増えることが明らかとなり、有機物質の重要性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初、中国北京市での冬季高濃度PM2.5汚染発生時の大気ナノ粒子を含む大気エアロゾル観測を平成27年1-2月の予定で行い、その後は観測機材を日本に戻し、平成27年度に水蒸気凝縮法を用いた粒径範囲50-200 nmの大気ナノ粒子の観測を行う予定であったが、中国側の輸入許可取得が遅れ、観測機材の現地到着が3月末となり冬季観測ができなくなった。しかし、北京市での大気エアロゾル観測は非常に貴重な機会であるため、観測機材を平成28年2月まで清華大学に残し、同大学の協力のもと北京市での大気観測を継続することにした。そのため、水蒸気凝縮法を用いた粒径範囲50-200 nmの大気ナノ粒子の観測は、観測機材が戻る平成28年度に行わざるを得ず、補助事業期間の延長を申請した。北京市における大気観測は順調に進み、大きな社会問題となっているPM2.5大気汚染における、貴重な大気ナノ粒子を含むPM2.5の化学組成情報と大気ナノ粒子の粒径分布を各季節毎に、ほぼ1年にわたって観測することができ、貴重な大気エアロゾル観測データを取得できた。北京市でのPM2.5観測のため、水蒸気凝縮法を用いた粒径範囲50-200 nmの大気ナノ粒子の観測については予定よりも進捗が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
北京市での大気エアロゾル観測のために中国に輸送したレーザーイオン化単一微粒子質量分析計(ATOFMS)や水蒸気凝縮粒子カウンター・静電サイズ分級器は平成28年4月に日本に返送される予定であり、補助事業期間の1年間(平成28年度)の延長申請も承認されたため、水蒸気凝縮法を用いた大気ナノ粒子の観測を、日本において平成28年度に行う。また平成27年度に行った中国北京市での大気ナノ粒子を含む大気エアロゾル観測のデータ解析も引き続き行い、中国における高濃度PM2.5大気汚染時の大気ナノ粒子・大気エアロゾルのサイズ別化学組成や化学混合状態について明らかにし、高濃度PM2.5イベント発生のメカニズムについての考察も進める。また中国北京市と日本(大阪府)でのナノ粒子・大気エアロゾル組成の相違についても考察を進める。
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Causes of Carryover |
当初の予定を変更し、平成27年度に中国北京市において大気ナノ粒子を含む大気エアロゾル観測を行い、また事業補助期間を平成28年度に延長したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
残りの予算は、平成28年度に行う予定の、水蒸気凝縮法を用いた大気ナノ粒子観測の準備費用、ならびに学会発表や論文投稿費などに充てる。
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