2014 Fiscal Year Research-status Report
直列配置された流水型ダム群による効率的な洪水制御手法の開発
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25420526
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
押川 英夫 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80311851)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小松 利光 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 特命教授 (50091343)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 流水型ダム / 洪水制御 / 河道内遊水池 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,ダムが非常用洪水吐きを通して溢れることを許容する新しい治水の概念(以後,カスケード方式)に基づき,直列に配置された複数のダムを効率的に利用することで洪水制御能力が顕著に強化される機構を数値シミュレーションにより明らかにすると共に,流水型ダム群を対象にした数値解析結果に基づいてその効果の定量評価(経験式の導出)を行った.従来のダムによる治水の考え方は,直列に配置されている場合であっても個々のダムで計画高水流量を定め,それぞれのダムが溢れないように洪水処理を行うものである(以後,従来型). 本研究において,従来型の流水型ダム群とカスケード方式に基づき配置された同じスケールの流水型ダム群を比較した結果,従来型の洪水制御では洪水のハイドログラフを横に切るイメージで洪水のピークカットを行う際に,一旦カットした洪水のピークの後半部分を再びカットする2度手間な洪水処理を行っていることが分かった.一方,カスケード方式では,ハイドログラフを縦に切るような洪水制御を行って貯水容量の使用の2度手間を避けることで,線形的に効率良く洪水のピークカットを行っていることが分かった. カスケード方式の線形性を利用すれば,ダム(貯水型でも可)が設置された流域の温暖化適応策(超過洪水対策)等を考える場合,今後の気候変化に伴って増加が見込まれる洪水量に相当する貯水容量を河川の途中(通常は上流側)に新規ダムとして確保すれば良いことになる.したがって,カスケード方式は,治水効果を評価する上で経済的に有利(従来手法に較べて治水効果が高い)というだけでなく,評価そのものが著しく容易になるという原理的メリットも併せて有していることになる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,従来の巨大ダムに頼る治水策を転換して,複数の小規模な流水型ダム(河道内遊水池)を組み合わせ,特に上流側のダムでは非常用洪水吐きからの越流を許容することで,より効率的な新しい治水技術を確立することを目的としている. 本年度は,当初から計画していた通り,数値シミュレーションに基づいて,従来型と比較した場合の越流型の洪水制御能力強化機構を明らかにした.したがって,本研究は概ね順調に進捗しているものと考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
申請者らのこれまでの研究は,一様な直線河道を対象とした理想化された状況下において,越流型の有する洪水制御能力を定量的に検討・評価したものである.しかしながら,実際の河川には蛇行や支川があるとともに,河道断面や河床材料も一様ではないことなどから,これまでの越流型の定量的な評価が実際の流域にどの程度当てはまるかについて十分に明らかになっているとは言い難い.しかしながら,本研究が対象とするような自然相手の防災に関する公共事業の実用化と普及を目指すためには,実河川でどの程度の効果があるのかについてもある程度の定量的評価が必要である.そこで,ダム群を利用したカスケード型(およびハイブリッド型)の洪水制御能力について,ケーススタディとして具体的な対象流域における効果を数値シミュレーションにより検討する.
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Causes of Carryover |
当初計画していた海外出張(インドネシアの現地調査)が、現地の研究協力者の都合により実施不可能となった。また関連して、調査結果のデータ整理等の際に学生アルバイトを雇用する予定であったが不要となったために剰余金が生じたこと等から、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
物品費、旅費、謝金、その他の各項目で使用する。項目毎の主な使途については、物品費は主に消耗品、旅費は調査旅費と学会参加費、謝金は研究協力者の学生へのアルバイト代、その他では論文投稿料等として使用予定である。
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