2014 Fiscal Year Research-status Report
医療福祉施設における震災時の初動体制に関する基礎的研究
Project/Area Number |
25420658
|
Research Institution | Aichi Institute of Technology |
Principal Investigator |
建部 謙治 愛知工業大学, 工学部, 教授 (10131137)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田村 和夫 千葉工業大学, 工学部, 教授 (50416822)
鈴木 森晶 愛知工業大学, 工学部, 教授 (90273276)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 防災計画 / 医療福祉施設 / 初動体制 / 緊急地震速報 / 地震動 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究は、病院の「地震時の初動体制」、「緊急地震速報の利活用」と、高齢者福祉施設の「防災体制」及び、高齢者の「地震動による影響」いう4 つのテーマを持ち、それぞれの「課題の検討」、「その分析」、「応用研究」を行った。 1、東日本大震災における病院の被害状況、災害対応と諸課題については、文献、ヒアリング、アンケートなどにより調査・分析した。アンケート調査は、東北地方の岩手・宮城・福島の3県の202施設を始めとして、東北地方以外の全国約3,500の病院を対象にして662施設から回答を得て、防災計画・防災訓練・初動体制について把握した。 2、病院での緊急地震速報の利用状況については、アンケートにより全国の約3,800の病院を対象に調査を実施し、665施設から回答を得た。その結果、高度利用の緊急地震速報(予報)の導入率が極めて低いことや、導入上の問題点を明らかにした。 3、高齢者福祉施設については、全国の約1,100の特別養護老人ホームを対象にアンケート調査を実施した。これと並行して、施設でのヒアリング調査、津波避難訓練の調査、要支援者の搬送方法についての実験等を実施した。 4、地震動体験実験は、本学の耐震実験センターにて、阪神大震災の観測波に基づいて高層住宅の10階を想定した地震波を入力し、被験者による地震動体験を行った。平成25年度の被験者は若年者20名、高齢者20名を、平成26年度は高齢者60名を対象に実験を行い、生理的変化として血圧、脈拍、唾液アミラーゼなどの生理変化を測定、心理的には、POMS、エゴグラムの心理テストを、意識調査としては地震動に対する官能検査を実施した。26年度の薄暗闇の状況での実験は昼間を想定したものより恐怖感を高めることになり、また明確な性差が確認された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
病院に対するアンケート調査は、被災地の東北地方と被災していない地方の施設を比較出来るように全国調査を実施し、被害状況・準備状況調査、及び緊急地震速報利用調査ともほぼ終了した。今年後はより詳細な分析を行う。病院へのヒアリング調査はこれまで愛知県下で4施設と、海外でも行ったが今年度も継続して実施していく。 高齢者福祉施設は、特別養護老人ホームや認知症グループホームなどを研究対象としている。アンケート調査は、災害時の初動体制に関するもので、東日本大震災で被災した地方と、南海トラフ大地震の到来が予測されている太平洋沿岸の主たる地域の調査を行った。今後はさらに全国に広げ、残りの地方の調査を予定している。 また、地震動体験実験については、若年者についての実験はほぼ終了した。今後は高齢者を対象とし、災害発生時間帯を薄暗闇時にしたり、椅子坐から背臥位姿勢にするなどの実験条件を変化させて考察を行う。 要支援者の緊急搬送方法の検討も、自治体や福祉施設関係者と協働して取り組んでいるが、さらに詳細なデータを収集し、新たな搬送方法を提案したい。
|
Strategy for Future Research Activity |
3年目は、これまでにできなかった調査・追加実験を実施する。 1、フィールド調査は、「現況の安全対策」と「安全対策のあるべき論」の2 点について、病院や高齢者福祉施設の運営者とともに職員に対しても、災害に対する意識や知識、行動の判断基準等を調査、職員や入所者に対する防災教育や防災訓練の向上方法を検討する。 2、高齢者福祉施設については、津波での逃げ遅れの教訓を踏まえて、要支援者に対する緊急搬送方法について、福祉、医療、防災、消防等の関係者と連携して、新たな搬送方法について考察を行う。 3、地震動体験実験は、高齢者に絞って、主に性差による特性を明らかにする。そのため、実験環境を恐怖感が増幅される薄暗闇とし、これまで行ってきた椅子坐姿勢から、背臥位姿勢の状況での実験を行い、地震動体験姿勢による違いについても検討する。また、性格による地震動に対する反応や行動パターンの違いを明らかにして、初動体制立案の知見を得る。
|
Causes of Carryover |
アンケート発送地域を切りの良いところで終えたため、発送料の端数の35,484円が残った。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度はアンケート発送を他地域に広げるが、その際、端数の35,484円を使用する。
|