2013 Fiscal Year Research-status Report
個別がん患者ゼノグラフトによる前臨床化学療法シミュレーションシステムの基礎研究
Project/Area Number |
25430098
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Central Institute for Experimental Animals |
Principal Investigator |
川井 健司 公益財団法人実験動物中央研究所, その他部局等, 研究員 (30414064)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 雅登 東海大学, 医学部, 教授 (00164335)
宮城 洋平 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所), その他部局等, その他 (00254194)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 疾患モデル / 個別化医療 / NOG |
Research Abstract |
神奈川県立がんセンターより提供された各種がん手術検体(原発・転移)を速やかにNOGマウス皮下に移植した。移植後4週の時点で生着確認を行い、生着が確認された腫瘍ゼノグラフトについては、継代移植を実施した。3代以上継代移植することができた腫瘍ゼノグラフトを個別がん患者ゼノグラフト(individual Cancer Xenograft, iCX)として実験に使用した。本年度約30株のiCXの樹立に成功した。これらのiCXは、病理組織学的に外科手術検体のがん細胞・組織と比べても形態学的変化が少ないことを確認している(第71回日本癌学会学術総会発表、於横浜)。これらのiCXのうち、大腸癌肝転移例の4例についてCollagen gel Droplet embedded culture-Drug Sensitivity Test(CD-DST)による in vitro 抗がん剤感受性を実施し、その結果を臨床材料で得られた結果と比較解析したところ、iCXでの結果と良好な相関関係があることを見いだした。また、臨床材料(大腸癌肝転移巣)を用いたCD-DSTの一般的に50%程度と言われるが、iCXを用いた場合、成功率はほぼ100%であった。1例ではあるが、臨床の場で実際の治療に使われ腫瘍縮小効果が確認できた薬剤は、CD-DSTでも「高感受性」と評価されるなど、個別化医療への応用が期待される(第51回日本癌治療学会学術集会、於京都)。現在、大腸癌肝転移症例約10例についても結果を蓄積しており、より良好な結果を得ている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度計画はおおむね順調に経過している。 CD-DSTは結果を比較検討するために症例が豊富である大腸癌肝転移例から実施し、現在10例ほど結果を得ることができた。しかし、臨床材料を用いたCD-DSTの成功率が低いため、結果の比較検討にはより多くの症例が必要であり、今後も症例を追加していく予定である。 さらに、CD-DSTを実施予定の膵癌や肺癌症例についても多くのiCXが樹立できた。来年度実施予定のIn vivo NOG マウス抗がん剤感受性試験に対しての予備実験にも着手することができ、食道癌と歯肉癌iCXにおいてin vivo 抗がん剤感受性試験を実施を開始する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
臨床応用するためには可及的速やかに、より多くのiCXを樹立し、抗がん剤感受性試験を実施し、その結果を臨床での治療実績データと比較検討することが重要である。我々がこれまでの行ってきたゼノグラフト樹立データより、効果的・効率的な樹立方法を更に改良を進める。また、本年度着手できなかった網羅的ゲノム解析を用いた継代ごとのiCXの遺伝子発現の変化を検討し、どの時点における感受性試験の実施が適切かを検討する予定である。同時に、抗がん剤治療が重要な位置を占めている乳癌、肉腫、脳腫瘍などについても比較検討を実施するために、多種多様ながん腫の収集を進めていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
個別がん患者ゼノグラフト; iCX樹立は、患者から得られたがん組織片をNOGマウスで3代以上継代移植され、初めて樹立される。この過程におけるiCXの遺伝子発現変化の有無を詳細に解析する目的で、網羅的遺伝子発現解析の実施を計画していたが、継代に予想以上の時間を費やしたため、継代数の異なる複数のiCX由来RNA材料が揃わず、網羅的遺伝子発現解析の本年度中の実施を見送った。網羅的遺伝子発現解析費用が比較的高額になることに加え、RNA材料の抽出試薬等の購入も予定数を下回ったため、使用予定額との差が生じた。 初年度、3代以上継代移植し樹立に至った腫瘍ゼノグラフトでは網羅的遺伝子発現解析用のRNA材料収集が予想以上に難航し、網羅的遺伝子発現解析の実施が見送られた。2年度目には高品質RNAを各継代のiCXより調製し、網羅的遺伝子発現解析を実施する。他の計画は予定通りに進行していることから、当初計画通り、平成26年度に予定した物品を購入し実験を進める。神奈川県立がんセンターから提供される各種がん手術検体についても計画通り、NOGマウス皮下に移植してiCX株の樹立を継続する。
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