2013 Fiscal Year Research-status Report
逆転および分断化tRNA遺伝子の成立におけるイントロンスプライシング機構の役割
Project/Area Number |
25440003
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
相馬 亜希子 千葉大学, 園芸学研究科, 助教 (70350329)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 逆転tRNA遺伝子 / C. merolae / RNA purocessing / タンデムtRNA遺伝子 |
Research Abstract |
本研究では、極限環境微生物である始原紅藻C. merolaeの逆転tRNA遺伝子(circularly permuted tRNA gene)が、遺伝子重複により生じたタンデムtRNA遺伝子から成立したとする仮説の検証を実験的に解析した。仮説の基礎となった知見の一部は海外の学術雑誌および学会で発表した。これまでに、人工的に構築したタンデムtRNA遺伝子をC. merolae細胞内に導入し、その発現と成熟過程を生化学的に調べた。その結果、導入したタンデムtRNA遺伝子からは、逆転tRNA遺伝子から転写された場合と同様の環状RNA中間体を経由して機能的な配列と構造を有した成熟体tRNAが形成されることが明らかとなった。さらに興味深いことに、タンデムtRNA遺伝子からは環状RNA中間体を経由しない通常のプロセシング経路からの成熟体tRNAも形成された。以上の結果から、予想された逆転tRNA遺伝子の成立モデルが細胞内でも再現可能であること、2つの経路(環状RNA中間体を経由する場合としない場合)で成熟体tRNAが形成可能であることが示された。特に、「2つの経路(環状RNA中間体を経由する場合としない場合)で成熟体tRNAが形成可能である」という発見は、tRNA遺伝子構造のダイナミックな転換期に、細胞にとって必須のタンパク質合成を担う機能性tRNA分子の確実な供給を保障することを示唆するものであり、「タンデムtRNA遺伝子からの逆転tRNA遺伝子成立モデル」の可能性を支持する実験的証拠の一つであると言える。一方で、本研究結果はモデルの過程の一部を証明したに過ぎず、今後は他のステップの検証を目的とした実験や推察も必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
遺伝子重複により生じたタンデムtRNA遺伝子から成立したとする仮説の検証については比較的計画通りに進んでいる。データ収集を更に進めることで、提唱したモデルの妥当性の解析を進めていく必要がある。 逆転または分断化tRNA遺伝子の成立には、その前駆体tRNAのプロセシングサイトを形成する特有のRNAモチーフと、一般的なtRNAイントロンスプライシング装置によるプロセシング機構の存在と共進化が重要な役割を果たしたと予想される。本研究では、スプライシング酵素による詳細な酵素反応メカニズムや基質認識機構の生化学的解析、および構造解析を目的として、リコンビナントタンパク質の調製を試みた。本研究費の採択によって、真核細胞を用いたリコンビナントタンパク質の受託合成の利用が可能となった。複数のサブユニットからなるスプライシング酵素のリコンビナントタンパク質の調製を試みた結果、残念ながら可溶性画分が十分に得られず、その酵素溶液を用いたin vitroプロセシングアッセイを行った結果、期待される切断活性は全く検出されなかった。この結果は、未同定のサブユニットの存在を示唆するのかもしれない。未知のサブユニットタンパク質との共発現により可溶化可能な活性型の酵素タンパク質が得られるのかもしれない。今後はサブユニット構成についての再検討を試みる。 3年目に実施予定であった人工的な逆転または分断化tRNA遺伝子の構築が一部完成した。今後はシゾン細胞内での発現と解析を進めていく予定である。シゾン細胞を用いた解析には一定の時間がかかることが予想されるため、効率的に実験を進められるような年次計画を立てる必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに、遺伝子重複により生じたタンデムtRNA遺伝子から成立したとする仮説の検証実験において、一定の成果が得られた。さらに実験データを収集し、その結果をもとに論文の執筆を進めていく。学会参加などにより専門家の意見をもらうことで、仮説の妥当性を十分に検討する必要がある。 初年度の解析から、tRNAスプライシング酵素のサブユニット構成の再検討の必要性が示唆された。シゾンのスプライシング酵素が、既知のものとはまったく異なる新規の構造および基質特異性を示す酵素である可能性を含め、解析を進める必要がある。次年度はシゾン細胞内での複合体の同定を通して、未知のサブユニットの探索を行う。実験遂行には一定の時間が必要であると予想されるため、効率的かつ地道な解析を計画的に進めたい。対応策の一つとして、実験補助員の利用を予定している。 一方で、人工的な逆転または分断化tRNA遺伝子の構築の一部が予定よりも早く完了した。今後はこれらをシゾン細胞に導入し、その発現解析を行う。この実験に必要な解析技術はすでに確立しているため、スムーズな遂行が期待される。後者の解析結果は速やかに学術論文にまとめ、発表したい。また、より効率的な研究遂行のため、専門家が集まる学術会議などには積極的に参加し、議論や有用な意見を求めたい。 本研究課題で扱う遺伝子群についての解析は、特に国外の研究グループにも注目されつつあり、速やかな研究遂行が必要である。得られた研究結果は学術論文として投稿を行う予定である。
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[Journal Article] Identification of highly-disrupted tRNAs in nuclear genome of the red alga, Cyanidioschyzon merolae 10D.2013
Author(s)
Akiko Soma, Junichi Sugahara, Akinori Onodera, Nozomu Yachie, Akio Kanai, Satoru Watanabe, Hirofumi Yoshikawa, Mio Ohnuma, Haruko Kuroiwa, Tsuneyoshi Kuroiwa, and Yasuhiko Sekine
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Journal Title
Scientific Reports
Volume: 3
Pages: 2321-2329.
DOI
Peer Reviewed
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