2013 Fiscal Year Research-status Report
概日時計の基本特性「入力・発振・出力」を分子レベルで解き明かす
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25440041
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉種 光 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (70569920)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | サーカディアンリズム / 体内時計 / CLOCK / BMAL1 / ChIP-Seq / RNA-Seq / バイオインフォマティクス / 転写制御 |
Research Abstract |
CLOCK-BMAL1複合体は時計シスエレメントE-boxに結合して転写リズムを生み出すことにより、時計発振の中心的な役割を担っている。申請者はこれまで、この複合体に着目した研究を展開してCLOCKのリズミックなリン酸化がDNA結合能を低下させるという転写抑制モデルを報告した (MCB, 2009)。さらに、このCLOCK-BMAL1複合体のリン酸化責任キナーゼとしてJNKが概日時計の重要な鍵分子であることを見出した (EMBO Rep, 2012)。本研究では、自作CLOCK抗体を駆使したChIP-Seq解析を行い、CLOCKが結合している約8,000のゲノム領域を網羅的に決定するとともに、RNA-Seq解析により全転写産物の発現プロファイルを正確に記述した。さらにBmal1欠損マウスにおいて、CLOCKのDNA結合は一日を通して低いレベルで維持され、リズミックな転写産物はそのリズム性を失うことを明らかにした。以上の解析により、E-boxの機能的な破綻がCLOCK標的遺伝子のダイナミックな転写産物リズムに与える影響を浮き彫りにし、サーカディアンリズムにおけるE-boxの重要性を示すことができた。本研究ではさらに、新しいバイオインフォマティクス技術MOCCSを開発し、CLOCK-ChIP-SeqのデータをもとにCLOCKが認識するDNAモチーフを網羅的に抽出した。これをもとにルシフェラーゼレポーター解析を行った結果、CLOCKは典型的なE-box配列(CACGTG)に加えて非典型的な配列(CACGNG、CACGTT、CATG[T/C]G)を認識していることが判明した。以上の成果は、英語原著論文としてMol. Cell. Biol.誌に掲載された (Yoshitane et al., 2014)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまで自作CLOCK抗体を用いたChIP-Seq解析を行い、CLOCKがリズミックに結合するゲノム領域を網羅的に同定し、RNA-Seq解析によりリズミックな転写産物の発現プロファイルを明らかにしてきた。本年度には交付申請に記したように、Bmal1欠損がCLOCKの結合リズムや転写産物リズムに大きな影響を与えることを示すことができた。これに加えて、新しいバイオインフォマティクス技術MOCCSを開発し、CLOCKが認識するDNAモチーフを決定することに成功した。この手法は、CLOCKに限らず、ChIP-SeqのデータセットをもとにDNA結合タンパク質が認識するDNA配列を決定することができるため、概日時計の分野に限らず広い研究領域に対して強いインパクトを与えるものと期待される。以上の研究成果は、英語原著論文として国際雑誌に公開した。以上を総合的に考え、当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
E-boxとは異なる時刻に転写産物のピークを作り出す時計シスエレメントとしてD-boxが知られており、bZIP型の転写因子であるDBP(活性化分子)とE4BP4(抑制分子)により転写活性が制御されている。例えば、E-boxとD-boxを1つずつ持つ遺伝子は、サインカーブの足し合わせで説明される時刻に転写産物のピークを迎える。しかし、これまでE-boxを介した転写調節に対する研究が華々しく展開されたのに対して、D-boxの転写調節や生理的意義に関しては、多くの点が不明なままである。 申請者はD-boxを介した転写の生理的意義に迫るために、E4BP4-KOマウスの生理学的な解析を推進してきた。見出したいくつかのフェノタイプはD-boxからの出力異常が原因であると推察され、具体的な疾病発症の分子メカニズムの解明を目指す。そこで本研究では、E4BP4-KOマウスのRNA-Seq解析を行い、実際に転写レベルが大きく変化している因子をリストアップする。これと並行して、機能的なD-boxをゲノムワイドに探索する。具体的には、DBPまたはE4BP4の自作抗体を用いて定量的なChIP-Seq解析を行い、実際に生体内で機能しているD-boxを網羅的に決定したい。さらには、これまで申請者が解析を進めてきたE-boxのChIP-Seqデータとの比較解析により、これら2つのシスエレメントの相互連関を明らかにし、ゲノムワイドなサーカディアンリズムの誘起原理を解き明かす。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度に計画していた実験が想定よりも順調に進み、条件検討の繰り返しや、失敗によるやり直しなどがかなり少なく、計上していた経費に余裕が生じた。 当初の計画に追加して、KOマウスだけではなくKO細胞においてもRNA-Seqを行い、D-boxからの出力経路を正確に記述する。これにより、個体レベルでの間接的なターゲットを差し引いて、直接的なターゲットを浮き彫りにできると期待している。
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Research Products
(15 results)
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[Journal Article] CLOCK-controlled polyphonic regulations of circadian rhythms through canonical and non-canonical E-boxes.2014
Author(s)
Yoshitane, H., Ozaki, H., Terajima, H., Du, N.H., Suzuki, Y., Fujimori, T., Kosaka, N., Shimba, S., Sugano, S., Takagi, T., Iwasaki, W., and Fukada, Y.
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Journal Title
Molecular and Cellular Biology
Volume: 34(10)
Pages: 1776-1787
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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