2014 Fiscal Year Research-status Report
シトクロムbd型呼吸鎖末端酸化酵素の構造と環境応答の解明
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25440050
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
坂本 順司 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 教授 (80175364)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | シトクロム / 呼吸鎖 / アミノ酸生産菌 / 好熱性細菌 / グラム陽性菌 / 生体エネルギー変換 / 電子伝達系 / コリネバクテリアム |
Outline of Annual Research Achievements |
グラム陽性好熱菌Geobacillus denitrificans K1041株のシトクロムbd型メナキノール酸化酵素について、発現プラスミドの再構築、および高発現株の形質転換条件、形質転換後のコロニー選抜法、培養時のエアレーション条件などの改善により、発現量の増加を図った。引き続き海外の協力者と結晶構造解析を試みている。また、アミノ酸生産菌Corynebacterium glutamicumのbd型酸化酵素についても、膜表品からの可溶化条件の改善により、精製度を向上させることができた。また、この酵素の生理学的意義を探求する一環として、カタラーゼ活性を検出できた。この活性の温度、pH、塩濃度などに対する依存性も測定し、また、各種阻害剤に対する感受性も調べた。この発見は、シトクロムbdが菌の生体防御に役立っていることを示唆している。近縁種にジフテリア菌や結核菌、らい菌など病原菌も多いことから、感染症対策にも新たな示唆を得るきっかけになりうるものと期待される。さらに、このアミノ酸生産菌について、GFPを蛍光レポーターとして利用したモニタリング手法によって分岐した呼吸鎖のスイッチングを行う因子を探索する過程で、グルタミン酸生産を増強する因子に対する示唆も得られた。この因子は、培地の栄養成分に含まれており、熱に安定なリポタンパク質ではないかとの暫定的な証拠が得られている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アミノ酸生産菌で、GFPを利用した分岐呼吸鎖酵素の使い分けのモニタリング実験の方は、投稿論文が受理され、掲載に至った。これに関連した発展研究として見出された、グルタミン生産能増強因子についても、その性格付けが進んだ。 一方、好熱菌シトクロムbd型酸化酵素の結晶構造解析の方は、海外の協力者からモデル構築の段階に至ったとの連絡があり、精製試料を頻回送付した長期間の苦労がやっと具体的に実りかけていると見られる。
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Strategy for Future Research Activity |
アミノ酸生産菌でGFPを利用したモニタリング実験の方は、論文掲載で一応の区切りを迎えたので、これに関連した見出されたグルタミン生産能増強因子についても、その分子的実体を突き止める方向に進めたい。 一方、シトクロムbd型酸化酵素の結晶構造解析では、好熱菌の方で海外の協力者から終盤に向かっているとの朗報が届いていることから、アミノ酸生産菌の方でも、国内の研究協力を得るよう努めたい。両菌はともにグラム陽性菌とはいえ、好熱菌はファーミキューテス門(低GC菌)なのに対しアミノ酸生産菌はアクチノバクテリア門(高GC菌)と、系統学的には大きく離れている。それぞれ近縁の病原菌も異なるので、新規抗菌薬開発の標的分子としても、2つのbd型酵素の構造の違いを解明することにも高い意義があると考えられる。
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