2013 Fiscal Year Research-status Report
広帯域共鳴X線溶液散乱法の開発によるタンパク質・生体膜の機能構造の解明
Project/Area Number |
25440063
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
平井 光博 群馬大学, 理工学研究院, 教授 (00189820)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | タンパク質 / 折畳み / 共鳴X線散乱 / 吸収端 / 広角散乱 / 溶液 / 生体膜 / 複合体 |
Research Abstract |
本研究は,放射光源の特徴である波長可変性を最大限利用した共鳴(異常)X線散乱により,溶液中でのタンパク質・生体膜の全階層構造と特定の部位(それらに内包される重元素,硫黄,リンなどの軽元素)の距離相関の同時測定を目指した広帯域共鳴X線溶液散乱観測法の確立を目指して実施されている。生体反応の分子機構の解明には,溶液中の機能状態でのタンパク質や生体膜の構造情報を得ることが重要である。一方,放射光X線溶液散乱法は,様々な環境条件下に於ける“その場”観測が可能なため,多くの研究に利用されているが,分子外形などの低分解能の評価に用いられることが多く,局所構造の解析には殆ど用いられていない。また,X線共鳴散乱を利用すると,特定の元素の散乱能を大きく変化させることが可能である。 25年度は,モデルタンパク質としてS-S結合をHg置換したリゾチームを用いて,その熱変性過程におけるの共鳴散乱実験を,高輝度光科学研究センターSPring-8のBL40B2X線散乱装置を用いて2度実施した。各温度におけるX線散乱データを,Hg原子のL3吸収端近傍(硬X線領域)で入射X線のエネルギー(波長)をパラメータとして観測した。のべ1000データを取得し,解析した結果,昇温に伴う内部構造の変化を選択的に議論可能であることが判明した。結果の一部は現在投稿準備中である。また,高エネルギー加速器研究機構放射光科学研究施設BL11C装置を用いて,軟X線領域の共鳴X線散乱の予備的な実験を生体脂質膜を対象として,リン原子の吸収端を利用して実施し,この手法の有効性を確認,論文として公表できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は,本研究が目指す新たな構造解析手法の妥当性を検討するために,モデル系として,人工的に作成した重原子ラベルタンパク質を利用した。X線吸収端を利用した構造解析には,十分な統計精度のデータを得ることが重要であると同時に,X線によるダメージを回避することが必要である。そのためには,各露光時間の短縮と繰り返し測定と積算による統計の向上が必要であることは分かった。また,25年度に試作した試料セルの改良の必要があることが判明した。今年度,改良をし,測定を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究最終的な目的は,天然状態のタンパク質や生体膜,それらの複合体の内部構造を解析する新たな手法の開発である。本年度は,硬X線領域の利用に有効な高輝度光科学研究センターBL40B2X線散乱装置の他に,本年度から利用可能となる予定である高エネルギー加速器研究機構放射光科学研究施設BL15に設置された新たなX線散乱装置を用いて,軟X線領域の共鳴X線散乱実験を本格的に行う。従って,ターゲットしては,金属タンパク質に加え,タンパク質中のS-S結合および脂質膜のリン原子を対象とする。それらの位置情報を吸収端近傍の散乱データの差分から選択的に抽出することを試みる。
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Research Products
(9 results)