2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25440099
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Okazaki Research Facilities, National Institutes of Natural Sciences |
Principal Investigator |
椎名 伸之 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設), 岡崎統合バイオサイエンスセンター, 准教授 (30332175)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | RNA granule / 翻訳制御 / NF110 / NF45 / PKR |
Research Abstract |
RNA granuleは、mRNAの輸送、安定性、翻訳等を制御する高次複合体である。我々はこれまでに、線維芽培養細胞にNF110を発現させると、RNG105局在性RNA granuleの形成が促進されることを見出した。今年度は、培養細胞においてNF110をshRNAでノックダウンした結果、RNG105局在性RNA granuleの形成が抑制されることを見出した。また、RNA granuleはリン酸化酵素PKRの活性化によって形成が促進されることが知られている。そこでPKRとNF110の関連性について解析をおこなった。まず、poly(I:C)の細胞導入によってPKRを活性化した際に、NF110のRNA granule集積が増加することを見出した。次にNF110のPKRリン酸化サイトThr188およびThr315をリン酸化不能のAlaに置換したTA変異体、およびリン酸化を擬したAspに置換したTD変異体を作成し、細胞に導入した。その結果、TD変異体が著しくRNA granuleの形成を促進するのに対し、TA変異体はその効果がないことを明らかにした。さらに、NF110と結合するNF45の、NF110に対する効果を調べた。その結果、NF45がNF110によるRNA granule形成を阻害することを明らかにした。また、ピューロマイシン抗体染色により細胞内の全翻訳活性を測定した結果、NF110の発現によって翻訳活性は低下し、NF45の共発現によって翻訳低下はキャンセルされることを見出した。NF45のNF110に対する以上の阻害効果は、TD変異体に対しては効果が薄く、野生型に対しては高い阻害効果を示した。以上の結果から、NF110はRNA granule形成およびそれに伴う翻訳抑制の機能をもち、それはPKRによるリン酸化とNF45の結合によってそれぞれ正、負に制御されるというモデルが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
shRNAを用いたノックダウンにより、NF110がRNA granule形成を促進することを明らかにした点、また、NF110のRNA granule形成促進活性がPKRによるリン酸化によって正に制御され、逆にNF45の結合によって負に制御されることを明らかにした点から、本研究は当初の研究計画の通り順調に進展している。なお、当初の研究計画では、翻訳活性の解析はショ糖密度勾配遠心を用いたポリソーム分画法を用いておこなうとしたが、NF110のトランスフェクション効率が低く、且つ安定発現株が得られなかったことから、この方法を用いることができなかった。そこで代替方法として、ピューロマイシン抗体染色による翻訳活性の検出法という最新の方法を導入した。これにより、培養細胞個々の翻訳活性を蛍光顕微鏡下で定量することができ、低効率のトランスフェクションでも一細胞レベルで翻訳活性を解析することができるようになった点は、特筆に値する。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究により、PKRによるリン酸化およびNF45の結合がNF110のRNA granule形成を正、負に制御することを明らかにしたが、そのメカニズムは未だ明らかになっていない。今後、NF110の細胞内局在や複合体形成がどのように制御されるかを明らかにすることにより、その分子メカニズの解明に挑む。また、RNA granuleの形成・解体制御は、翻訳調節以外にも細胞死の調節に関わり、神経細胞ではシナプス調節を介した長期記憶や神経変性疾患にも関与する。NF110やNF45を線維芽細胞や神経細胞に発現し、RNA granuleの形成を促進あるいは抑制した際に、これらの細胞にどのような影響を及ぼすかについても解析を進めていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は線維芽培養細胞を用いた実験に限ったため、実験動物(マウス)に関わる施設使用料等を計上しなかったため。また、細胞培養に用いる血清等の大部分を既存のものを使用したため。 遺伝子組み換え実験や細胞培養等に用いる試薬、プラスチック器具等の購入に主に用いる他、細胞培養に用いる血清の新たなロットチェックと購入に使用する。また、神経初代培養細胞を用いた実験に伴うマウスの飼育および系統維持に関わる施設使用料も新たに必要となり、このために使用する予定である。
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Research Products
(2 results)