2014 Fiscal Year Research-status Report
モモにおけるオーキシン生合成機構の解明と軟化制御への応用
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25450054
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
立木 美保 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 果樹研究所栽培・流通利用研究領域, 主任研究員 (10355381)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | モモ / 軟化 / オーキシン |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに、一般的なモモでは軟化初期にオーキシンの生合成量の増加が始まり、増加したオーキシンによってエチレンの生成が誘導され、エチレンによって誘導されたポリガラクチュロナーゼなどの細胞壁修飾酵素の作用によってモモの軟化が起こることを明らかにした。 硬肉モモとよばれるモモは一般的なモモとは異なり、成熟果実におけるオーキシン生成が起こらないため、エチレンの生成が起こらず軟化しない。硬肉モモはエチレンを外的に処理をすることによって、果肉硬度は低下するものの、粉質化が起こり肉質が悪いため商品価値は低いと考えられてきた。モモの軟化にはオーキシンが関与していることが明らかになったことから、モモの肉質にも影響を及ぼしている可能性が考えられた。そこで、本年度はモモの肉質に及ぼすオーキシンの影響を明らかにするために、硬肉モモにオーキシン処理またはエチレン処理を行い、肉質の違いや貯蔵中の変化、細胞壁修飾酵素遺伝子発現について解析した。 モモ軟化時の肉質に影響を与えると推測された細胞壁修飾酵素のアイソザイムを3種類単離して遺伝子発現変動について調べた。1および2の発現様式は、一般的なモモと硬肉モモの果実生育過程において違いは認められなかった。一方、3は溶質モモの果実成熟後期(軟化期)に発現量が増加したが、硬肉モモでは増加しなかった。しかし、硬肉モモにオーキシン処理をすると発現量が増加した。これらの結果からオーキシンは果実軟化時のメルティングと呼ばれる肉質に関与していると考えられ、それには細胞壁修飾酵素が直接関与していることが推測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
モモの硬さにオーキシンが関与していることは既に明らかにしていたが、肉質にも直接影響を及ぼしていることを明らかしたことから、おおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
肉質に関わる遺伝子の一端は明らかになったが、網羅的解析はできていない。従って、今後、これまでに確認した以外の細胞壁修飾酵素についても発現変化を明らかにする。
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Causes of Carryover |
平成25年度に予定していたRNAseq解析を行わずして軟化に関わるオーキシン生合成の一端を明らかにすることができたために、平成26年度は予定よりも予算が多くなっていた。平成26年度はモモの肉質との関係を明らかにするために、遺伝子単離、シークエンス解析等の高額な試薬を購入したが、マイクロアレイの網羅的解析やモモ肉質変化の生化学的な解析に至らなかったため残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成26年度に行えなかったマイクロアレイによる細胞壁修飾酵素の網羅的解析、モモ肉質変化の生化学的な解析に用いる予定。
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