2014 Fiscal Year Research-status Report
抵抗性品種に加害性を示すツマグロヨコバイ"バイオタイプ”の適応機構の解明
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25450075
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Research Institution | National Institute of Agrobiological Sciences |
Principal Investigator |
服部 誠 独立行政法人農業生物資源研究所, 加害・耐虫機構研究ユニット, 研究専門員 (60370673)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 由記子 独立行政法人農業生物資源研究所, その他部局等, 研究員 (80414944)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | バイオタイプ / 抵抗性品種 / 唾液タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
目的:ツマグロヨコバイ抵抗性イネ品種は師管からの吸汁を阻害するが、抵抗性品種に適応した加害性バイオタイプでは師管吸汁が可能となっている。本課題の目的は、ツマグロヨコバイが吸汁に伴ってイネ組織に注入している唾液タンパク質に着目し、その遺伝子変異をバイオタイプ間での比較解析することにより抵抗性打破に関わる因子を特定することにある。
研究方法:(1) 各バイオタイプの唾液腺抽出物を二次元電気泳動で展開し、ゲル上でシフトが見られるタンパク質を探索・同定したのち、遺伝子配列変異を調べた。(2) これまで同定した9種の唾液タンパク質の遺伝子配列を比較することにより、各バイオタイプで特異的変異を探索した。さらに、バイオタイプ特異的と見られる変異について、加害性および非加害性バイオタイプを交配して得たF2分離集団を作出して、変異と加害性を連鎖解析した(進行途中)(3) 変異を比較する対象タンパク質の数を拡大するため、新たに採取したツマグロヨコバイ漿液性唾液をゲルフリーで直接HPLC-MS/MSにより解析・同定した。
研究成果の概要:(1) Grh3加害性バイオタイプでシフトが見られたタンパク質1つを同定し、遺伝子配列の変異を検出したが、加害性バイオタイプに特異的ではなかった。(2) Grh1,2,3,7加害性の各バイオタイプについて、既知の9種の唾液タンパク質を対象に遺伝子配列を比較したところ10箇所以上の変異が見つかり、そのうち下記が特異的変異の候補として得られた。1) Grh1加害性バイオタイプ:アミノ酸変異を伴う3塩基置換(AAC が GGT)または1塩基(C)欠失、2) Grh2加害性バイオタイプ:3塩基(反復配列)の挿入 (6反復 が 7反復)、3) Grh7加害性バイオタイプ:1塩基(A)欠失。(3) ツマグロヨコバイ唾液をHPLC-MS/MSで解析することにより、新たに63個のタンパク質を同定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3系統の加害性バイオタイプに関する変異を検出することができ、候補の絞り込みのための連鎖解析を進めるところまでに至った。また、変異と加害性とが連鎖してない場合に備え、新たに63種の唾液タンパク質を同定したことから、さらなる遺伝子配列の変異の探索が可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度、HPLC-MS/MSで新たに同定した63種の唾液タンパク質に対象を拡げ、バイオタイプ間変異のさらなる探索を進めるとともに、これまで検出した候補となる変異については、交配F2分離個体を用いて連鎖解析する(進行継続中)。さらに、連鎖が確認された遺伝子については、RNAi法でノックダウンして師管吸汁行動をモニターし、抵抗性品種に対する加害性の変化を調べることにより特異性を決定する。
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Causes of Carryover |
当初の計画では、実験助手を週1日雇用する予定であったが、本雇用条件での応募者が半年間見つからなかったために、その間の賃金および試薬費に相当する使用額が予定より減少した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年度繰り越し予算を上乗せすることで、今年度は実験助手を週2日雇用して研究を加速する。
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Research Products
(2 results)