2013 Fiscal Year Research-status Report
レチノイン酸産生能を有する腸型樹状細胞の機能制御に基づく粘膜免疫強化法の研究
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25450190
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokushima Bunri University |
Principal Investigator |
中妻 彩 徳島文理大学, 薬学部, 助教 (30446075)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ビタミンA / レチノイン酸 / 粘膜免疫 / 樹状細胞 / T細胞 / 免疫寛容 / アレルギー / 炎症 |
Research Abstract |
レチナール脱水素酵素2(RALDH2)を発現する腸の樹状細胞(DC)は、ビタミンAからレチノイン酸を産生し、小腸指向性リンパ球やFoxp3+誘導型制御性T細胞(iTreg)の誘導を促進することで、経口免疫寛容の成立に寄与していると考えられる。我々は、ビタミンA欠乏マウスでは、DCによる炎症性T細胞の誘導が亢進しており、経口免疫寛容が破綻することを見出した。そこで、ビタミンA欠乏による炎症誘導の分子メカニズムを解明し、さらにはアレルギー発症への関与を検証するため、本年度はまず、Flt-3Lで骨髄から分化誘導したDC(BM-DC)を用いて、免疫寛容誘導に寄与するRALDH2+腸型DCの分化誘導法の確立を目指した。また、ビタミンA欠乏マウスを用いて、腸のDC分化を制御する腸上皮細胞の機能発現とビタミンAの役割を検証した。 (1)GM-CSFとレチノイン酸受容体アゴニストAm80で誘導されたRALDH+ DCは、腸のRALDH+ DCとは異なり、integrin αE(CD103)の陽性率は低かった。そこで、反応時間を24時間から48、72時間と長くしたところ、RALDH+CD103+ DCの割合が増加した。TGF-βをさらに添加することによって、CD103+ DCの割合は顕著に増加したが、RALDH酵素活性は逆に減弱する傾向にあった。 (2)GM-CSF+Am80+/-TGF-βで誘導されたRALDH+CD103+ DCは、CD86の発現が低く、未成熟なままであったが、E-cadherinによって、DCの活性化は促進され、RALDH酵素活性やCD86発現が増強されることを見出した。このDCは、炎症性サイトカインの産生能が低く、Toll様受容体シグナルで活性化したDCと比較して、CCR9+小腸指向性iTregの誘導能は高く、炎症性T細胞の誘導能は低かった。 (3)ビタミンA欠乏マウスの近位結腸上皮細胞でTNF-αが有意に高発現していることを見出した。TNF-αでDCを処理すると、炎症性サイトカイン産生が誘導され、IL-13高産生炎症性T細胞を強く誘導したが、TNF-α+レチノイン酸処理群ではその誘導能は低かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画で予定していた、腸上皮細胞株を利用した新規アッセイ系の構築は、平成25年度中に着手することはできなかった。しかし、平成26年度以降に予定していた、腸型DCによるT細胞の機能分化誘導能の検証は達成しており、本研究の達成目標全体を通して、順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)平成25年度では、腸上皮細胞が発現する代表的な接着分子の一つであるE-cadherinが、GM-CSF+Am80+/-TGF-βで誘導されたRALDH+CD103+ DCの活性化を促進し、小腸指向性iTreg誘導能を賦与する可能性が示された。一方、近位結腸上皮細胞では、ビタミンA欠乏によってTNF-α発現が有意に亢進することを見出し、TNF-αによってBM-DCは、IL-13高産生炎症性T細胞を強く誘導するという結果を得た。平成26年度は、腸上皮細胞株を入手し、レチノイン酸シグナルによるこれらの発現制御メカニズムを検証する。また、DCの機能分化を制御する腸組織環境因子の探索を引き続き行い、ビタミンA欠乏マウスや腸上皮細胞株を用いて、それら発現におけるレチノイン酸シグナルの影響を検証する。 (2)腸上皮細胞による腸型DCの分化誘導への影響を検証するため、腸上皮細胞株との共培養を試みる。この時、(1)で解析を進めた因子に対する阻害剤や中和抗体などを添加し、その影響を解析する。また、レチノイン酸アゴニストやアンタゴニストを添加し、レチノイン酸シグナルの影響も解析する。得られたDCをナイーブT細胞と共培養し、T細胞の機能分化誘導能を検証する。T細胞の分化マーカーやケモカイン受容体発現、またはサイトカイン産生について解析する。 (3)E-cadherinがDC上のどの分子と結合し、活性化シグナルを誘発するのかを検証する。GM-CSF+Am80+/-TGF-βで誘導したRALDH+ DCは、E-cadherinと結合することが知られているCD103を高発現している。そこで、CD103に対するブロッキング抗体を用いて、RALDH酵素活性やCD86などの成熟マーカー発現への影響を検証する。また、E-cadherinはCD103以外にもintegrin α2β1(CD49b/CD29)と結合することが報告されているため、それらの抗体も入手して検証する。E-cadherinによるDCの活性化シグナル経路を見出すため、阻害剤を用いて検証し、腸型DCの機能発現メカニズムの解明を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成26年度は、平成25年度に得られた結果を元に、ブロッキング抗体や阻害剤を用いた実験を行うため、試薬の新規購入が増えることを予想して、次年度に物品費を回した。 細胞調製に必要なMACSビーズ(1本約10万円)とMACSカラム(1セット約6万円)や、マウスの購入費および飼育費、細胞培養に必要な試薬や、プラスチック器具が必須である。また、サンプルの解析に必要なELISA、フローサイトメトリー、免疫染色で用いる抗体や、real-time PCRに用いる酵素類は、1本3~7万円相当である。さらに、本研究にはビタミンA欠乏マウスと、コントロール飼料摂取マウスが必要不可欠であり、特注飼料の調製にそれぞれ年間36万円は必要である。そして、平成25年度に得られた結果を元に、ブロッキング抗体や阻害剤などの新規購入や、腸上皮細胞株の購入も計画している。従って、本研究を通じて物品費が大きくかかるため、平成26年度の物品費と合わせて、平成25年度の未使用額約50万円はすべて物品費に充てる。また、研究成果を発表するための学会参加にかかる費用として旅費に8万円、論文投稿料としてその他の費目に5万円を充てる。
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