2014 Fiscal Year Research-status Report
気候温暖化が積雪減少を介してブナとミズナラの成長に及ぼす影響の解明
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25450199
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
石田 清 弘前大学, 農学生命科学部, 准教授 (10343790)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
織部 雄一朗 独立行政法人森林総合研究所, その他部局等, 研究員 (40370853)
高田 克彦 秋田県立大学, 付置研究所, 教授 (50264099)
野堀 嘉裕 山形大学, 農学部, 教授 (80237867)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ブナ / ミズナラ / 開葉時期 / 道管形成時期 / 場所間変異 / 積算温量 / 積雪 / 降霜 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)多雪山地で優占するブナを対象に、開葉に要する積算温量の場所間変異の実態および積算温量と春期の環境要因(降霜頻度、消雪時期)との関係を解明するため、青森県・八甲田連峰の12地点における4年間の調査で得られた温度データと開葉日の関係を分析した。その結果、有効積算温量法で推定した各地点のブナの開葉に要する積算温量は207~344℃・日(起算日1/1、限界温度0℃)であり、大きな場所間変異があることが明らかとなった。さらに、各地点の積算温量は、降霜頻度(開葉が可能な時期に発生した降霜の頻度の年平均値)が多い地点、及び消雪期間(開葉が可能な時期に残雪が認められた期間の年平均値)が長い地点で大きくなる傾向があることを明らかにした。このことから、晩春の降霜(凍害)と積雪(低温による根の活動の抑制)がブナの開葉を遅らせる自然選択をもたらしている可能性があることを示した。また、積算温量については有意な年度間変異も認められ、消雪時期の遅い場所で年度間変異の程度が大きくなる傾向が認められることから、ブナの開葉に要する積算温量もしくはその値を決める限界温度は同一集団内においても完全には固定されておらず、環境要因によって可塑的に変化することを示した。(2)多雪山地に生育するミズナラを対象に、春期の積雪が道管形成と開葉の時期に及ぼす影響を明らかにするため、八甲田連峰において除雪実験(ミズナラ幹周囲の除雪)を行い、除雪が孔圏道管の形成と開葉の時期に及ぼす影響を分析した。その結果、除雪によって道管形成と開葉の時期が早まる傾向があることが明らかとなった。また、道管形成時期と開葉日の間の相関が低いことも明らかにし、開葉と道管形成はそれぞれ別の生理学的メカニズムによって制御されている可能性があることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、気候温暖化が積雪減少を介してブナとミズナラの成長に及ぼす影響の予測を行うための知見を得ることを目的としている。今年度は、ブナについては開葉時期に及ぼす積雪と降霜の影響を定量的に明らかにすることができた。また、ミズナラについても、積雪が道管形成と開葉時期に及ぼす影響を推定することができた。これらの研究成果が得られたことにより、当該研究は当初の計画どおりおおむね順調に進捗しているものと判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、気候温暖化が積雪減少を介してブナとミズナラの成長に及ぼす影響の予測を行うための知見を得ることを目的としている。今年度は、ブナについては、開葉時期に及ぼす積雪と降霜の影響を、集団レベルに加えて個体レベルの視点から分析する。ミズナラについては、積雪による根の冷却が道管形成と開葉に及ぼす影響を分析する。
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Causes of Carryover |
研究成果のうちの一部は、さらにデータを加えて分析した後、次年度に発表する必要が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
分析費および旅費として次年度に使用する予定である。
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Research Products
(4 results)