2013 Fiscal Year Research-status Report
林業機械の走行が林床の植生発達と樹木の更新に与える影響の解明
Project/Area Number |
25450228
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
倉本 惠生 独立行政法人森林総合研究所, 北海道支所, 主任研究員 (00353673)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
飯田 滋生 独立行政法人森林総合研究所, 北海道支所, 研究グループ長 (10370272)
橋本 徹 独立行政法人森林総合研究所, 北海道支所, 主任研究員 (70353810)
佐藤 弘和 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 森林研究本部, 研究主任 (70522217)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 林業機械 / 林内走行 / 間伐 / 土壌圧密 / 林床植生 / 更新 / トドマツ |
Research Abstract |
間伐の推進策として、高い生産性を誇る車両系林業機械の活用が期待されている。海外では車両機械の走行が林床の植生の発達や樹木の更新へ悪影響を与えることが指摘されているが、国内での研究例が非常に少ない。本課題では、車両機械の導入に適した地形条件が多く、間伐による林床の植生発達が見込まれるトドマツ人工林において、間伐の際の車両機械の走行が林床の植生の発達と樹木の更新に与える影響を解明する。本研究を実施するためには、車両機械の走行前と走行後において林床植生と土壌状態が比較できる必要があり、その条件を満たすことのできる2つの試験地を用いる。 試験地1の平坦なトドマツ林で車両機械の走行回数を列ごとに変えた実験を設定し、走行回数と土壌圧密の関係分析と、土壌圧密と植生発達・更新の関係分析を組み合わせて、機械の走行回数が植生発達と更新に与える影響を明らかにする。試験地2の緩斜面のトドマツ林で機械が直接走行して土壌を圧密するか、木を引きずって表土が剥がされるかで土壌の状態が異なるかを明らかにする。 2つの試験地では他の研究課題において機械の走行前に林床植生と土壌状態(土壌硬度)が調査されているが、機械走行の影響比較の観点で行われたものでないため、これらのデータは別々に保管され整理されていない。そこで本年度は走行前データの集約と整理および電子化、試験地の測定点の復元を行った。さらに、試験地1では走行1年後の林床植生調査を、試験地2では走行5年後の土壌硬度測定を実施し、機械走行後の変化の傾向を予備的につかむこととした。この結果、機械走行後に機械の履帯わだち上で増加する種があることを見出した。また、機械走行後5年間で、土壌硬度が走行直後の状態から走行前の状態に近づいていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では機械の走行前後での林床植生と土壌状態の比較を行うことにより、車両機械の林内走行がトドマツ人工林の林床植生発達に与える影響の実証を目的とする。本年度計画では1)走行前に測定されたデータの調整と測定点の復元、2)走行前の土壌状態・植生調査結果の整理および土壌・植生の対応分析を行うこととしていた。さらに3)走行後の土壌、植生および樹木更新の調査を実施することとした。 1)については順調に進捗しており、2)については機械走行試験地(試験地1)の走行前の土壌・植生データの整理・電子化が実施され、植生・土壌それぞれについての傾向分析も進められ一部は学会において速報的に報告された。また間伐試験林(試験地2)の走行前土壌データは走行5年後の再測定(3))にあわせて整理された。試験地1では走行1年後の植生調査・土壌計測も計画通りに実施されている。データが当初予想以上に膨大であり、土壌・植生の対応分析については途中にあるものの、その他の点では計画は順調に進捗していることからおおむね順調と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
計画に沿って走行前データの整理・電子化をすすめ、これに走行後調査を付加して、解析のためのデータ基盤を整備する。前年度の予備解析結果をもとに、試験地1(走行試験地)では走行後の林床植生と土壌状態との対応関係の分析を進める。また、試験地2(間伐試験林)の走行5年後と走行直後の状態比較結果をもとに、試験地1でも走行2年後、3年後の土壌状態の把握を試みる。また、試験地2では機械が直接走行した部分と直接走行せずに木をけん引した場所があるのでこの違いに着目して、土壌状態と林床植生の分析をすすめる。 現場での調査においては、次年度は試験地2での林床植生調査に重点を置く。ここでは走行前後の土壌硬度測定点が林床植生調査点と一致していないことから、土壌硬度調査点にも林床植生調査を追加する。これによる調査量増加と、昨年度経費実績を考慮し、予算繰り越しによって植生調査委託額を十分に確保する。 また、計画に搭載されているササに与える機械走行の影響調査については、作業時の走行回数とササの破壊状態が既知である択伐天然林で再調査を実施する予定であるが、調査を支援する連携研究者の人事異動を考慮し、ササの状態調査を重点的に行うこととする。一方、人工林作業の際の機械走行調査が連携課題で実施されていることから、ササの調査地に追加することとする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
土壌分析器具は現有品の消耗が少ないために購入しなかった。また、現地検討旅費は別の会議にあわせて実施した。これらの使用額が当初予想より少なくなった一方で、植生調査委託費は当初の2倍の金額を要した。このため、予算を繰り越して次年度の植生調査委託費を倍増させる必要があると判断した。 また、本計画の重要な機材である土壌硬度計については、分担機関が走行以前に使用したものを購入して再測定に用いたほうがデータを比較するためには望ましいことが現地検討により判明した。さらにデータ図化ソフトウェアについては、土壌調査結果をより適切に解析できるものが次年度に発売されることが判明したので、植生図化に必要な分のみ当初計画品を購入し、分担機関が購入するものは次年度に購入することとした。このためには本年度額を繰り越して次年度額とあわせて購入する必要があると判断した。 繰り越し額と当年配布額を合わせ、植生調査委託額を昨年度の実績を考慮して当初計画の2 倍分以上確保する。また、データ量からみて分析にも相当の労力がかかるため、植生調査の委託量を増やすこと、分析補助・植生調査区設置補助のための補助人員の人件費を当初計画の1.5倍確保することとした。さらに前年度繰り越し額をあわせて、分担者機関において土壌硬度計部品を更新し、データ図化ソフトウェア等を購入する。
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Research Products
(4 results)