2013 Fiscal Year Research-status Report
有明海底泥の巻き上げに伴う懸濁層における栄養塩動態のモデル化
Project/Area Number |
25450258
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
郡山 益実 佐賀大学, 全学教育機構, 准教授 (30380794)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 有明海 / 底泥 / 巻き上げ / 栄養塩 / 吸脱着 |
Research Abstract |
本研究では、有明海奥部の底泥の巻き上げに伴う懸濁層における栄養塩動態を現地調査より把握すると同時に、室内実験より懸濁層における底泥への栄養塩の吸脱着特性について明らかにし、そのモデル化を行うことを目的としている。 初年度となる平成25年度は、対象海域における底泥の巻き上げとそれに伴う栄養塩変動の関係を現場レベルで明らかにするため、現地調査を重点的に行うと同時に、現場海域における底泥内の吸着態NH4の変動要因について検討した。現地調査は、夏季に小潮と大潮時における1潮汐間の集中観測と、現場海底付近の流速、塩分及び濁度の連続観測(係留観測)を実施した。1潮汐間の集中観測は、有明海奥部西岸域の六角川・嘉瀬川河口域から沖合に4点(S1~S4)の観測点を設置し、測線に沿って1潮汐間を5~6往復し、採水、水質及び流速の測定を行った。また、係留観測はS1とS3の2地点の海底に係留機器を設置し、各点の塩分及び濁度のデータを8月下旬~10月下旬の期間連続観測した。これらの観測の結果、小潮時と大潮時における流速と濁度の時空間的変化が把握され、対象海域における海底近傍の巻き上げ限界流速が明らかにされた。また、海底近傍の流速と濁度のデータ解析により、有明海奥部西岸域における底泥の巻き上げは、平均水深が5m以下の河口浅海域を中心に大潮時の上げ潮・下げ潮流速最盛期に発生することが明らかにされた。栄養塩濃度に関しては、濁度の増加に伴い濃度も増加する変動傾向が見られた。現在、集中観測や係留観測で得られた濁度及び塩分の時空間的変動と栄養塩変動の解析を進めており、今後、1潮汐間の栄養塩濃度の変動要因を明らかにする予定である。一方、現場レベルでの底泥内吸着態NH4の変動要因については、2010年~2011年に対象海域で実施した現地データを用いて解析し、吸着態NH4の季節変化とその影響因子明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
夏季の集中観測及び係留観測を通じて、有明海奥部西岸域における底泥の巻き上げ発生海域が明らかにされ、巻き上げ時の栄養塩濃度の変動状況が把握された。また、現場海域における底泥吸着態NH4の季節変化とその影響因子が明らかにされ、今後のNH4の吸脱着実験に関する重要な知見が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の現地観測データの解析を進め、巻き上げと栄養塩変動との関連性を定量的に評価する。解析を進める中で、補足的な現地データ収集の必要性がある場合、追加調査を夏季に実施する。また、それと同時に、平成26年度は、有明海における水質環境の潮汐・季節的周期変動を考慮した、NH4とPO4の吸脱着実験を繰り返し行い、それぞれの吸脱着特性について実験的に明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の学会発表はすべて九州(宮崎市と福岡市)であったため、当初計画に予定していた旅費の予算額より執行額が少なかった。 平成26年度は、NH4とPO4の吸脱着実験を重点的に行うため、実験の水質分析に必要な吸光光度計を購入し、その分析に必要な試薬やフィルターなどの消耗品を購入する予定である。
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