2013 Fiscal Year Research-status Report
農業用水路の水管理による移送を考慮したマツカサガイの生息に適した環境条件の解明
Project/Area Number |
25450361
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
角道 弘文 香川大学, 工学部, 准教授 (30253256)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 生物多様性 / 絶滅危惧種 / マツカサガイ / 農業用水路 |
Research Abstract |
魚類の産卵母貝であるとともに絶滅危惧種であるマツカサガイの生息に適した環境の創出は,農村地域の水辺における生物多様性確保にとって重要である.本研究では,水管理に伴って生じる流量変動によるマツカサガイの挙動を解明し,そのうえでマツカサガイの生息に適した環境条件を定量的に明らかにすることを目的とする. 初年度(平成25年度)は,香川県丸亀市(旧綾歌町)にある岡田地区の農業用水路を対象とし,①初夏から冬季にかけてマツカサガイの採集調査を行い,同種の出現分布を把握すること,②同水路の諸元や流速・水深を期別に測定することの2点を目標に行った.対象水路は平均勾配1/50,水路幅60~80cmであり,石積護岸または土水路の区間を多く含む.総延長286.7mに及ぶ区間(3区間)において総出現個体数は754個体であった.実際に出現が確認されたのは総延長の58.9%に対してであった.このことから,出現分布は水路内の細かな流れの変化や底質の粒度や硬度等に依存しているのものと考えられた. 流速・水深の計測は,潅漑期前の4月下旬から潅漑末期の8月中旬にかけて行った.流速は,井手浚い前には平均して0.35m/s程度であったが,井手浚いからユル抜きまでの間は平均して0.15m/s前後までとなった.その後,潅漑期では0.40m/sを超える場合があるなど,期別に大きく変動していることがわかった.水深についても同様に,井手浚い前には平均して7~14cm程度であったが,井手浚いからユル抜きまでの間は2~5cmまでとなった.その後,潅漑期では12cm前後を推移していた.これらのことを踏まえ,マツカサガイの移送実験(平成26年度実施)の前提とする流れ条件について検討した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度では流れに伴うマツカサガイの移送実験を水利実験室にて実施する.平成25年度の現地調査は,移送実験に供する実験用水路に必要な諸量を得るためであった.灌漑期間を含む4月下旬から8月中旬までの流速,水深データを取得することができ,流れ場の実現象を実験室内で再現するために必要な観測結果はある程度得られた.また,水路幅,水路勾配といった水路諸元等を計測しており,移送実験に必要な実験用水路を設計するための条件を揃えることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度では,流量変動によって生じる個体の移送現象を明らかにするため,開水路を用いた水理実験を行う。現地の水路勾配,水路壁面・底部の粗度を再現するとともに現場で確認される流れを発生させ,実態に即した移送現象を実スケールで解明する。 水路の改変としては,水路床の一部区間(流れ方向100cm)の上・下流端を高さ8cmの壁面で間仕切りする。間仕切り内部には,採種個体数の多かった水路区間の底質を模したものを充填する。実際の農業用水路で見られる水管理による流れの変化を再現するため,水路上流部にはスルースゲートを設置しゲートを開閉することで水位・流量を調整できるようにする。
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Research Products
(2 results)