2013 Fiscal Year Research-status Report
遺伝的価値のある犬の凍結生殖子バンク設立を目的とした犬胚の凍結保存法の確立
Project/Area Number |
25450453
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Nippon Veterinary and Life Science University |
Principal Investigator |
堀 達也 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 准教授 (80277665)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
牛島 仁 日本獣医生命科学大学, 応用生命科学部, 教授 (10549562)
小林 正典 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 助教 (80600428)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 犬 / 胚 / 凍結保存 / Cryotop法 |
Research Abstract |
遺伝的価値のある犬の生殖子を凍結保存し管理する凍結生殖子バンクの設立は、必要不可欠なものと考える。しかし、犬において卵子または胚を凍結保存する技術はまだ確立されていない。我々は以前、牛で一般に行われている胚の緩慢凍結法を参考にして、犬凍結胚の作成を行った。しかし、凍結融解後の胚の生存率が低く、レシピエントの雌犬の子宮内に移植したが受胎はみられなかった。 この緩慢凍結法に対して、近年注目されている胚の凍結方法の1つであるガラス化法の1 つであるCryotop法が知られている。この方法は、毒性の影響が問題となっている高濃度の凍結保護物質を添加したガラス化保存液を少量(1μl 以下)とともに胚を液体窒素に投入する冷却法であり、卵子に対する毒性が少なく、融解後に高い生存性が得られることが知られている。そこで、このCryotop法を用いて、ドナー犬の胚の凍結保存を行い、凍結融解胚をレシピエント犬に子宮内移植することで産子が得られるかどうかを検討した。 その結果、6頭のレシピエント犬の卵管および子宮から39個の胚が回収され、変性胚を除いた28個の胚を凍結保存した。これらの凍結融解胚をそれぞれ4頭のレシピエント犬に移植(5~9個/頭)したところ、1頭のみが妊娠し、1頭(雌)の正常な子犬が生まれた(妊娠率25%)。以上のことから、Cryotop法による犬胚の凍結技術は、緩慢凍結法に比較して非常に有用であると考えられた。しかし、受胎率や産子数が低いため、更なる凍結方法の改良または効率の良い胚の移植方法の改良が必要であると考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
犬の凍結胚の胚移植による産子が初めて得られたため、研究は大きく進展したものと考えられた。しかし、受胎率や産子数が低いため、受胎率を高くするような凍結方法の改良または効率の良い胚の移植方法の改良が必要であると考えられた。今年度の実験として、さらにレシピエントの頭数を増やして検討する必要があると考えられた。
|
Strategy for Future Research Activity |
凍結胚を作成する場合、卵黄に含まれる脂質含量が多いと、凍結保存による成功率が低くなることが知られている。しかし、脂肪含量が多い胚から細胞質内脂肪顆粒を除去することにより、胚の耐凍性が高まることが報告されている。犬と同様に卵黄中の脂質含量の多い動物であると考えられている豚胚においても、遠心分離によって脂質を除去することで、凍結融解後の生存率を上昇させ、胚移植後の受胎率を上げることができることが知られている。そこで、この脂肪除去が犬胚のCryotop法を使用した凍結保存方法に応用できるかどうかを検討する。 また、犬は単発情動物であり、発情周期は6~12 ヵ月と長いことが知られている。そのため、1 年に1 回または2回しか胚を回収することができない。また犬はどんなに多くても1 度に排卵する卵子の数は8~10 個前後である。この卵子の数だけでは、実験をすすめるために時間がかかる。そのため、他の哺乳動物で応用されているようなGnRH、FSHまたはPMSG のようなホルモン剤を使用することによって排卵数を多くすること(過排卵誘起)ができないかを検討する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究を進めるのに必要な顕微鏡(倒立顕微鏡、実体顕微鏡および蛍光顕微鏡)は既に整っていますが、効率よく胚の操作および胚の検査を行うためにもう1台新しい実体顕微鏡が必要と考え、購入を進めていました。しかし、購入期限内に顕微鏡の機種が決まらなかったため、次年度での購入とするために、次年度使用額が生じました。 今年度の予算にて、昨年度購入できなかった実体顕微鏡の購入を計画しています。また、平成25年度の研究成果を発表する方法として学会誌への投稿を考えているため、英文校閲および投稿料として使用します。
|