2014 Fiscal Year Research-status Report
アミロイド病モデルマウスを使ったヒトリゾチーム変異体の線維の形成機構と毒性の解析
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25450476
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
杉元 康志 鹿児島大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (10100736)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | リゾチーム / アミロイド病 / 変異体 / フォールディング / ERストレス / GRP78/BiP / UPR |
Outline of Annual Research Achievements |
アルツハイマー病を代表とアミロイド病は社会的に大きな問題である。その原因は異常タンパク質の細胞内外での蓄積とされ、神経系や多くの組織に多く見られ、発病のメカニズムの解明や治療の研究が進められている。生体の抗菌性タンパク質であるリゾチームにおいてもその遺伝的変異により全身に異常タンパク質の蓄積が起こり、全身性アミロイドーシスを発症することが知られているが、発症のメカニズムや治療法は不明である。本年度は発症のメカニズムに焦点を当て、変異体リゾチームの分泌異常による細胞内蓄積と小胞体(ER)ストレスについて研究を進めた。 遺伝的変異リゾチームのヒト細胞での発現系の構築を行い、分泌異常、細胞内局在、タンパク質の蓄積を観察した。また、これまで作製したリゾチーム変異体トランスジェニックマウスについて解析を行うと共に、pLIVEベクター導入システムを用いてマウス肝臓でリゾチームの発現を観察した。 リゾチーム変異体は分泌が悪く、細胞内のERに大量に蓄積していることが観察された。それに伴い、ERでのUPR機構がはたらき、IRE1-XBP1-GRP78/BiP経路が最も動いており、ERの分子シャペロンであるGRP78/BiPが動員されていた。当初、GRP78/BiPはIRE1と結合しているが、異常タンパク質の発生に伴い、解離し、異常タンパク質のフォールディングを行うが、リゾチームの場合、GRP78/BiPは異常リゾチームと結合したまま凝集体を作り、ERに蓄積して、ERストレスを引き起こすと結論した。これがヒトで見られる全身性アミロイドーシスの発症の原因と考えられ、今回、そのメカニズムの一端を明らかに出来た。たリゾチーム変異体トランスジェニックマウスについてリゾチームの発現は見られなかったが、pLIVEベクター導入マウスでは肝臓で変異体の発現を確認でき、今後、観察を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の主題であるこれまで不明であったヒトでの異常リゾチームの蓄積によるアミロイドーシス発症のメカニズムに関して、分泌異常、細胞ERでの蓄積が原因でることを細胞レベルで明らかに出来た。異常なリゾチームはわずか1個のアミノ酸の違いで小胞体内でのフォールディングがうまく行かず、URPシステムのIRE1がはたらき、分子シャペロンの動員が図られるがリゾチームと分子シャペロンGRP78/BiPが相互作用したまま凝集するという新たな知見を見出した。これによりERストレスが発生し、細胞にダメージを与えるという結論を得ることが出来た。 何故、変異体リゾチームはGRP78/BiPと結合したままなのか?GRP78/BiPにはリゾチームと結合する部位が見つことが出来た。N末端側28-36の疎水性領域を特定することが出来た。リゾチーム患者は長期間にわたり、全身にリゾチーム・GRP78/BiP凝集体がERに蓄積し、細胞が機能不全となり、病気が発症すると思われる。 マウスの実験も進んでいるが、作製したトランスジェニックマウスの発現があまり、うまく行かず、肝臓に特異的に発現するpLIVEシステムの導入により、肝臓で異常タンパク質の発現に成功したことから今後、個体レベルでの解析により、長年不明であったリゾチーム変異体の発症機構を解明することが出来る。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 27年度以降は異常リゾチームが何故、GRP78/BiPとの相互作用したまま、凝集するのか?その分子メカニズムを明らかにする。立体構造予想ソフトによる野生型と変異体のシミュレーションモデルの解析と特定アミノ酸変異体の作製によるGRP78/BiPとの相互作用の変化の検証 2. 変異体導入安定株細胞の作製とERストレスによる毒性の解析 3. リゾチーム変異体導入トランスジェニックマウスの組織解析と病状発症の観察
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Causes of Carryover |
26年度においてマウスの解析数が少なかったため、それに関係する試薬費を27年度に回し、その実験を行うことにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
マウスの解析およびサンプル調製費として使用する。
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Research Products
(4 results)