2013 Fiscal Year Research-status Report
都市環境に侵入するイノシシのリスク分析とリスク回避手法の検討
Project/Area Number |
25450478
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
横山 真弓 兵庫県立大学, 自然・環境科学研究所, 准教授 (50344388)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
淺野 玄 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (30377692)
佐藤 宏 山口大学, 獣医学部, 教授 (90211945)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 痕跡調査 / ビデオ画像 / 捕獲個体 / 寄生虫 / 捕獲計画 |
Research Abstract |
都市環境におけるイノシシの出没の状況把握と出没リスク予測を行うため、六甲山系および隣接する市街地において、ルート調査地を8ルート設定し、痕跡調査を行った。また、出没行動のパターンを季節や時間別に明らかにするため、定点ビデオカメラを8台設置し夜間の動物の行動を追跡した。ビデオ画像では、6か月間でのべ1667頭の動物が撮影されそのうち、イノシシは1116頭、67%が撮影された。イノシシが集中して利用する地域があり、また10月月から11月に活動が活発化していることも明らかとなった 市街地における被害通報情報と捕獲地点について行政的に蓄積されているデータをデジタル化し、これまでの対策の現状と課題について、論文として取りまとめた(辻・横山、2014a)現状では通報件数が増加傾向にあり、通報エリアも拡大傾向にある。また特定の加害個体を捕獲できたときには、被害が沈静化する傾向が見られた。また、餌付け場所から150m以内の被害が8割を超えているため、餌付け行為による誘引が被害を引き起こす現状が明らかとなった。また、加害個体の解剖分析も行い、辻・横山(2014b)にまとめた。分析した7頭中6頭において、人工物が検出され、人為的食物に誘引、執着した個体と推定された 捕獲個体については、山側での捕獲個体と合わせて、寄生虫の肉眼的検索も行い、佐藤ほか(2014)にまとめた。線虫22種と条虫1種、吸虫1種が確認された。これらの中には、兵庫県産イノシシで初記録となった4種確認された。豚腸結節虫はまれで、有歯豚胃虫が阪神間に集中していることなどが明らかとなった。ロタウイルスについては、血清サンプルの収集を終えた。現在分析方法の検討を行っており、H26年に分析に供する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
市街地と隣接した地域での調査地域の設定は、土地所有者との調整や不特定多数の登山者の往来などがあるため、時間を要する作業と考えられたが、市街地に隣接する土地所有者の協力を得ることができた。このため、ビデオカメラの設置が環境を変えて8地点で可能となり、大量のデータ蓄積に成功した。また、痕跡調査ルートの設定についても登山者の会や地域住民、神戸市からの協力を得ることができ、調査を軌道に乗せることができた。さらに行政的に蓄積されているデータをデジタル化し、これまでのイノシシ問題の経緯を始めて、時系列的にデータに基づき、論文化することができた。 捕獲個体についても、対策者からの協力関係が構築され、捕殺後速やかに連絡が取れ、処分される前に計測や血液、内臓サンプルが得られた。そのため、出没個体の分析結果を論文としてまとめることができた。また、寄生虫に関しても肉眼検索の部分について、論文化が可能となった。市街地に出没を抑制する方法としての捕獲についても、計画的に実施できるめどが立ってきており、土地所有者や行政関係者との調整会議も進められているため、捕獲操作実験などができる体制が整いつつある。以上のように本研究全体に必要となるデータ収集体制、データ蓄積など時間を要するものについて、整備されただけでなく、1次解析とそのとりまとめも完了したため、当初の予定より早く研究が進行していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
H26度は、これまで実施してきた調査、ルート調査、カメラトラップ調査、被害調査、捕獲個体収集を継続しデータ蓄積に努めるとともに、植生図や地形情報、登山客の流入状況等のデータをGIS上にマッピングし、すべてのデータを用いた空間解析により、地理情報システム上での出没予測を行う。 また、市街地においてはしばしば愛護派と被害者との間の軋轢が発生し、捕獲が困難となり、十分な捕獲が進んでいないため、被害が深刻化することがあり、適切な情報提供と計画的な捕獲が必要となる。これらを速やかに行うためのモデル実験として、市街地に隣接した山塊(土地所有者が明確である山塊で人の流入制限ができる場所)において、捕獲実験及び捕獲前後の被害量変化調査を行い、市街地に隣接した山塊で捕獲圧をかける操作実験を行い、市街地における捕獲体制を検討する。さらに、捕獲個体から得られた血清、内臓からロタウイルス等人獣共通感染症のリスクの高い疾病について、分析を行う。 近年イノシシをはじめとした大型獣の都市環境への侵入問題が著しく、本庁さ地においてもニホンジカやアライグマなども同時に生息しているため、これらの動物種の土地利用や被害状況に関する干渉作用なども確認された。H26年度はこれらの影響も把握しながらリスク回避手法について総合的に検討する。被害が深刻化している市街地に隣接した山塊(土地所有者が明確である山塊で人の流入制限ができる場所)において、捕獲実験及び捕獲前後の被害量変化調査を行い、市街地に隣接した山塊で捕獲圧をかける操作実験を行い、出没回避方法としての体系的な捕獲方法を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は調査地の調整や野外調査、捕獲個体回収とそのれらの解析を中心に行ったため、GISを用いた解析などに必要な航空写真や地理情報に関するデータ収集・購入などを次年度に集中させることとしたため、本年度の購入を見送った(できるだけ解析直前の情報を購入したいため)。 衛星画像 188000円 行政データ収集旅費 (丹波市ー神戸市6000円×2回)12000円
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