2014 Fiscal Year Research-status Report
眼疾患患者の眼房水中の微環境を推察するための診断法の開発
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25460238
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Research Institution | Kyushu University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
高村 徳人 九州保健福祉大学, 薬学部, 教授 (20369169)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
緒方 賢次 九州保健福祉大学, 薬学部, 講師 (90509580)
徳永 仁 九州保健福祉大学, 薬学部, 准教授 (60369171)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 眼房水中アルブミン / タンパク結合 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、眼疾患患者の眼房水中の微環境を推察するための診断法の開発を目指している。そのため、疑似眼房水と患者プール眼房水を用いてサイトⅠおよびⅡへの影響を調べた。 1) 眼疾患患者の眼房水にはアルブミン以外のグロブリン等のタンパク質の増減の報告がなされていることより、アルブミン、グロブリンやα1-酸性糖タンパク質の濃度比率を変えた種々の疑似眼房水を用いて、サイトⅠおよびⅡへの影響を調べた。その結果、アルブミン濃度の大小による影響が大きく、他のタンパク質の影響はほとんどないことが判明した。したがって、アルブミンに対するタンパク-タンパク相互作用はほとんどないことが分かった。さらに、それらの疑似眼房水において、各種脂肪酸による結合阻害の影響を調べてみるとサイトⅡの方がサイトⅠより著しく大きいことが分かった。脂肪酸以外のアスコルビン酸、グルコース、乳酸によるサイトⅠおよびⅡへの結合阻害の影響はなかったが、アスコルビン酸によりサイトⅠおよびⅡの結合能が少し上昇した。これは、アスコルビン酸によりアルブミンの構造が変化させられたことによるものと考えられた。以上より、本診断法はアルブミン濃度および脂肪酸濃度に着目し開発すべきであるという結論に至った。 2) 疑似眼房水および患者プール眼房水に対するサイトⅠおよびⅡプローブ結合に対する阻害薬物の検討を行ってみると、疑似眼房水中のサイトプローブ結合は阻害できたが、患者プール眼房水中のサイトプローブ結合はあまり阻害できなかった。その理由は、サイトプローブの患者プール眼房水中アルブミンへの結合が疑似眼房水中アルブミンへの結合より著しく低いことが原因であった。以上より本診断法に用いるサイトプローブは結合定数の高いものを選択すべきである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
疑似眼房水中アルブミンに対する眼房水中診断法の精度の検討の達成度は以下の通りである。 1) 疑似眼房水中アルブミンへの各結合サイトにおける結合能の変動の検討。眼疾患患者の眼房水にはグロブリン等のアルブミン以外のタンパク質が増加する場合があるとの報告がなされていることより、アルブミン、グロブリンやα1-酸性糖タンパク質の濃度比率を変えた種々の眼房水を調製し、サイトⅠおよびⅡの結合能を調べた結果、他のグロブリンやα1-酸性糖タンパク質濃度の影響は受けなかった。さらにその疑似眼房水に各種脂肪酸を添加した結果、サイトⅠの結合能は増加し、一方サイトⅡの結合能は減少した。本検討はおおむね行った。 2) 1)より得られたデータを多角度から分析・評価し、眼房水中診断法の構築を試みる。疑似眼房水中の各結合サイトプローブの遊離形濃度の大小の差異のデータと種々のタンパク質および脂肪酸などの濃度を多角度的に比較した結果、アルブミン濃度および各種脂肪酸濃度によりサイトⅠおよびⅡの結合能が左右されることが分かった。本検討はおおむね行った。 3) 疑似眼房水および患者プール眼房水に対する結合阻害薬物の検討。各結合サイトプローブを一定量添加した疑似眼房水および患者プール眼房水に結合阻害薬物濃度を変えて結合能の変化を調べた結果、疑似眼房水の各結合サイトプローブは同じ結合サイトの結合阻害物質で結合阻害できたが、患者プール眼房水の各結合サイトプローブは、結合能の著しく強いサイトプローブしか阻害できなかった。本検討はすべて行った。 したがって、平成26年度に引き続き平成27年度も順調に研究を遂行したい。
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Strategy for Future Research Activity |
眼房水中診断法の検証については以下の手順で進める予定である。 1) 各々の眼疾患患者に対する眼房水中診断法の妥当性の検証。実験方法:各々の眼疾患患者の眼房水を採取し、そのサンプルより一定量分取し、それに各結合サイトプローブを添加し限外濾過法にて遊離濃度を測定し結合能を算出する。それらの眼房水中アルブミンやFFA などを多項目生化学自動分析装置にて測定し、結合サイトへの影響を調べる。その結果より、眼房水中診断法の妥当性を検証する。 2) タンパク結合性の高い点眼薬物の投与設計確立のための結合阻害の検討。実験方法:臨床に使用できる薬物や物質を結合阻害剤として用い、限外濾過法にて遊離濃度を測定し結合能を算出する。 上記の結果より診断法が確立し、さらに、臨床で使用できる薬物や内因性物質を見いだせれば、阻害に影響する内因性物質の変動を加味した点眼薬の効果的な投与法が確立できると考えられる。
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Causes of Carryover |
研究に使用する臨床検査測定装置ビオリスの試薬の使用期限が短いため、今年度に購入した場合、研究期間中に期限切れになる可能性が高くなるため、その試薬の購入を来年度に繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
試薬使用期限内に来年度実験計画通りに遂行する。
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Research Products
(5 results)