2013 Fiscal Year Research-status Report
神経発生期に存在する細胞外電位勾配:軸索ガイダンスにおける役割とイオン機序の解明
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25460298
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | International University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
山下 勝幸 国際医療福祉大学, 保健医療学部, 教授 (20183121)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 軸索ガイダンス / 神経上皮細胞 / 網膜神経節細胞 / イオンチャネル / 細胞外電位勾配 / 鶏胚 / 培養 / Galvanotropism (電気向性) |
Research Abstract |
中枢神経系の発生過程で最も初期に分化するニューロンは伝導路の起始細胞である。これらの軸索は、あるベクトルに従って同時多発的に軸索伸長を開始する。この方向性を決定するメカニズムは現段階では不明である。 本研究では、軸索のガイダンスキューとして細胞外電位勾配に着目する。本研究代表者は、発生初期胚の網膜において、網膜の領域間に細胞外電位勾配が存在することを発見した。その電位勾配の方向は、最初に分化するニューロン(網膜神経節細胞)の軸索伸長方向と一致し、さらに、この細胞外電位勾配の起源となるイオンチャネルを阻害すると、軸索の走行が擾乱を受けることを報告した (Yamashita, M. Electric axon guidance in embryonic retina: Galvanotropism revisited. Biochem. Biophys. Res. Commun. 431: 280-283, 2013)。本研究の目的は、細胞外電位勾配により軸索の伸長方向が制御される分子メカニズムの解明である。 平成25年度では定電場培養システムの開発をおこなった。電場の効果を定量的に評価するためには、培養液中での細胞外電位勾配の値を一定にする必要がある。実際の胚発生過程における網膜組織中には、15 mV/mmの電位勾配が存在する (Yamashita, 2013)。そこで、電場の強度を、0.1 mV/mmから20 mV/mmの範囲内で設定できる培養システムの開発を目指した。そのためには、培養液中の2点に電極を置き、その電極間電位を常にモニターし、フィードバック回路により通電電流量を変化させる必要がある。これまでに、培養チェンバー、培養器、及び、通電電流供給用フィードバック回路の試作を実施した。それらの成果を第91回日本生理学会大会(平成26年3月、鹿児島)において発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では、まず網膜器官培養系における遺伝子導入システムの開発を目指した。それと並行して、定電場培養システムの開発をおこなった。次項(今後の方策)に記載したように、網膜器官培養系では遺伝子導入の効率が極めて低いことが判明し、今後の方策を早めに検討することができた。一方、定電場培養システムの開発は目標通りに達成できたので、研究期間の初年度としては、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画では、網膜器官培養系における遺伝子導入システムの開発を目指した。平成26年2月までの所属機関である奈良県立医科大学において、P1実験室の認定を受けた後、組換えDNA実験の承認を得て、組換えバキュロウイルスを利用した遺伝子導入キットを購入し、鶏胚網膜の切片を実験対象としてGFP遺伝子の導入を試みた。しかし、網膜組織は内境界膜、及び、外境界膜に被われており、組換えバキュロウイルスが網膜細胞に感染する効率が低く、遺伝子導入の効率は極めて低いことが判明した。今後、遺伝子導入する場合は、網膜神経節細胞を単離培養して組換えバキュロウイルスを感染させるか、或は、卵殻内の鶏胚を対象としてエレクトロポレーション法によって遺伝子導入をおこなう必要がある。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究代表者は、平成26年3月1日付けをもって、奈良県立医科大学から現所属機関である国際医療福祉大学へ異動した。新しい実験室の設営にあたって、顕微鏡を設置する除振台を新規に購入する必要があり、また、培養と蛍光観察用のクリーンルーム暗室を設置する必要があるため、次年度での使用を計画した。 顕微鏡を設置するための除振台、及び、培養と蛍光観察のためのクリーンルーム暗室を設備備品として購入する。
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Research Products
(4 results)