2014 Fiscal Year Research-status Report
神経発生期に存在する細胞外電位勾配:軸索ガイダンスにおける役割とイオン機序の解明
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25460298
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Research Institution | International University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
山下 勝幸 国際医療福祉大学, 保健医療学部, 教授 (20183121)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 軸索ガイダンス / 神経上皮細胞 / 網膜神経節細胞 / イオンチャネル / 細胞外電位勾配 / 電場 / 培養 / 電気向性 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は発生初期鶏胚の網膜において、中枢神経の幹細胞である神経上皮細胞のイオン輸送により網膜の領域間に細胞外電位勾配が生じることを発見した。さらに、この電位勾配により網膜神経節細胞の軸索が将来の視神経乳頭へ誘導されることを明らかにした。細胞外電位勾配はイオン流を起こし、軸索の細胞膜表面でのイオン環境が非対称になると考えられる。本研究は、このようなイオン環境の非対称性により軸索の伸長方向が制御される分子メカニズムの解明を目的とする。 平成26年度では、軸索の伸長方向に対する細胞外電場の効果を定量的に評価するために、一定の細胞外電位勾配を設定できる培養システムを開発した。培養液に直流電流を供給し、網膜切片をはさむ培養液の2点間の電位差を常時記録した。この電位差が予め設定した電位勾配となるようにフィードバック回路を用いて通電電流量を制御した。このフィードバック回路の帰還抵抗を変えることにより電位勾配の値を、0.0005 mV/mm から 10.0 mV/mm まで変化させることができた。この培養システムにおいて鶏胚の網膜切片を24時間培養し、電場の方向、及び、強度と、網膜神経節細胞の軸索の伸長方向との関係を解析した。網膜神経節細胞の軸索、及び、細胞体の染色には、生細胞の染色に利用される蛍光色素(calcein-AM)を使用し、共焦点蛍光顕微鏡を用いて軸索の走行を撮影した。網膜切片から伸長する軸索は、人工的に設定した電場中では細胞外電位勾配に沿って陰極方向へ向かうことが明らかになった。このような電気的効果は、電場の強度が 0.001 mV/mm で生じ、2.0 mV/mm の強度で十分な効果が観察された。これらの結果から、網膜組織中に存在する電位勾配(15 mV/mm)は、網膜神経節細胞の軸索を正確に誘導するのに充分な強度であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度では、一定の細胞外電位勾配を設定できる培養システムの開発に成功し、網膜神経節細胞の軸索伸長方向に対する電場の効果を定量的に評価できる実験系を確立することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度では、まず、平成26年度に得られた成果を論文として投稿するとともに、国際学会において発表する。次に、軸索内細胞骨格分子(チューブリン)の非対称性について解析し、軸索が方向転換する部位でのチューブリンの軸索内分布を明らかにする。さらに、軸索伸長の足場となる基底膜分子(ラミニン、コラーゲン)とその受容体(インテグリン)との結合に対する細胞外イオンの影響を解析する。
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Causes of Carryover |
年度末の学会旅費、及び、学会参加費に不足が生じる可能性があったため、前倒し支払い請求(直接経費200千円、間接経費60千円)を行った。しかし、これらの学会費用は、所属機関からの経費で支払うことができたので、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
国際学会での成果発表を予定しており、学会旅費、及び、学会参加費として使用する。
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