2014 Fiscal Year Research-status Report
多重プロモーターと選択的スプライシングによるエストロゲン受容体発現調節機構の解明
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25460319
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
石井 寛高 日本医科大学, 医学部, 講師 (20445810)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | エストロゲン受容体 / 多重プロモーター / 選択的スプライシング / 遺伝子発現制御 / エストロゲン / 生殖生理学 / 生殖機能形態学 / 神経内分泌学 |
Outline of Annual Research Achievements |
エストロゲン受容体遺伝子の発現は、複数のプロモーターを含む多重プロモーターシステムにより制御されている。さらに、遺伝子の5’-領域に多数の非翻訳中間エクソンを持ち、多重プロモーター使用による生じる異なるリーダーエクソンと非翻訳中間エクソンとの選択的スプライシングにより、エストロゲン受容体遺伝子から多様な5’-非翻訳領域を持つスプライス変異体が産生される。 ヒトと齧歯類では精巣におけるエストロゲン受容体の発現パターンが異なることが知られており、2種類のエストロゲン受容体遺伝子、エストロゲン受容体α型(estrogen receptor α, ERα)・β型(estrogen receptor β, ERβ)遺伝子の発現双方に種差が存在する。 精巣における多重プロモーター使用パターンを解析したところ、ヒトERα遺伝子に関してはC, F, Tプロモーターが、ヒトERβ遺伝子に関してはE1, 0K, 0Nプロモーターが顕著に使用されていた。ヒトと齧歯類のエストロゲン受容体遺伝子の比較解析からTプロモーターおよび0Kプロモーターはヒト特異的プロモーターであることが判明した。さらに、非中間エクソンの使用により、異なる5’-非翻訳領域を含む多数のERα Tプロモーター特異的変異体、ERβ 0Kプロモーター特異的変異体が産生されることを見出した。 これら、異なる5’-非翻訳領域がエストロゲン受容体の発現調節に及ぼす影響を解析するため、転写後調節を評価するルシフェラーゼレポーターベクターを作成し、エストロゲン受容体の5’-非翻訳領域変異体の転写後調節機構への関与を解析した。その結果、エストロゲン受容体の5’-非翻訳領域は転写後調節のうち、翻訳効率調節に関与しており、特にERα Tプロモーター特異的変異体、ERβ 0Kプロモーター特異的変異体が著しく翻訳効率を低減させることが明らかとなった。さらに、中間非翻訳エクソンの挿入はさらなる翻訳効率低減を引き起こすことも明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は一部の実験計画の遅れや実験の前倒しがあった。特にヒトERβ遺伝子においては多数の非翻訳中間エクソンが存在することが判明し、それらが選択的に挿入されることにより多数の5’-非翻訳領域変異体が産生されていたため、ヒトERβ遺伝子5’-非翻訳領域変異体のクローニングと同定に時間が割かれ、5’-非翻訳領域の生理学的意義を解析するレポーターシステムの立ち上げが遅れていた。 本年度は、ヒトERα・ERβ遺伝子の5’-非翻訳領域をルシフェラーゼレポーターベクターに組み込み、転写後調節を評価する実験系を組み立てることにより、5’-非翻訳領域が転写後調節に及ぼす影響を評価・解析することができた。この解析から、エストロゲン受容体の5'-非翻訳領域は転写後調節のうち翻訳効率の低減に関与すること、さらに、非翻訳中間エクソンの挿入により著しい翻訳効率の低減が引き起こされることも見出した。 さらに、ヒト及び齧歯類のERα・ERβ遺伝子の発現と多重プロモーターの使用パターンを幅広い臓器で調べたところ、男性生殖器において著しい種差が存在し、それが多重プロモーターシステムのプロモーター使用の違いに起因することを解明している。 エストロゲン受容体の多重プロモーターを組み込んだレポーターベクターは現在作成中であり、平成27年度に解析を行う予定である。 以上より、平成26年度の本研究は、研究実施計画通りほぼ順調に推移している。
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Strategy for Future Research Activity |
エストロゲン受容体の5’-非翻訳領域が転写後調節、特に翻訳効率の低減を行っていることが明らかとなった。平成27年度は5’-非翻訳領域の欠損変異体・点変異体を作成し、どの領域が転写後調節に関与するか同定を行う。 現在作成中のエストロゲン受容体の多重プロモーターを組み込んだレポーターベクターを用いてそれぞれのプロモーター活性に必要なシスエレメントの解析を行うとともに時期特異的・組織特異的な発現調節に必要なシス・トランスエレメントの同定を行う。 また、平成27年度は本研究の最終年度であるため研究のまとめを行う。
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Causes of Carryover |
年度末に他の研究助成金を得ることができ、一部の研究遂行に必要な消耗物品・実験試薬を共有で使用することができたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額10,827円に関しては物品費に組み入れ、研究に必要な試薬の購入に当てる。
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