2013 Fiscal Year Research-status Report
プロテインC凝固制御系因子による腫瘍制御に関する分子病態学的研究
Project/Area Number |
25460396
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Suzuka University of Medical Science |
Principal Investigator |
鈴木 宏治 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 教授 (70077808)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | プロテインC / トロンボモジュリン / プロテインCインヒビター / 腫瘍細胞 / 増殖 / 転移 / ヘパリン |
Research Abstract |
本研究は、ヘパリンなどの抗凝固物質が抗腫瘍作用を示すことに着目し、生体諸臓器の機能維持に重要な抗凝固因子であるプロテインC(PC)制御系の因子が癌細胞の増殖と転移に及ぼす影響を解析し、腫瘍の新しい診断・治療・予防法の開発に向けた基盤的研究を行ものである。 このため、25年度は、先ず、ヘパリン類似の糖鎖化合物である1-3βグルカンやラムナン硫酸がヒト白血球における凝固関連因子である組織因子・トロンボモジュリン(TM)・PC受容体(EPCR)などの遺伝子発現に及ぼす影響を解析した。その結果、真菌壁由来の1-3βグルカンと海藻由来のラムナン硫酸は、それぞれ異なった様式で白血球を活性化して形態変化を誘導した。また、1-3βグルカンは白血球における凝固惹起因子の組織因子遺伝子の発現を高め、この組織因子は実際に凝固促進活性を有していた。一方、PC凝固制御系の重要な抑制因子であるヒトPCインヒビター(PCI)の腫瘍肝細胞における発現動態を解析したところ、感染時の細胞傷害物質であるlipopolysaccharide(LPS)は腫瘍肝細胞におけるPCI産生を高め、また感染時に血中に増加するINF-γ、IL-1β、IL-6などのサイトカインはPCI産生を抑制した。さらに、PCIの腫瘍細胞の増殖・転移に及ぼす影響を調べるため、ヒトPCI導入マウスと正常マウスにおける腫瘍細胞の増殖・転移を解析したところ、PCIは腫瘍細胞の増殖を抑制し、腫瘍細胞の転移を促進することを示す結果を得た。 以上の結果から、ヘパリンやその類似の糖鎖化合物は白血球の凝固活性化作用に影響を与え、また、PC凝固制御系因子は腫瘍の増殖と転異に影響を与える可能性があることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、申請の期間に、ヘパリンとその類似糖鎖化合物、種々のPC制御系因子とそれらに対する因子特異抗体、腫瘍細胞、ヒトPCI遺伝子導入マウスを用いて作製した担癌モデル動物などを用いて、ヘパリンと類似糖鎖化合物やPC制御系因子の腫瘍細胞などの増殖・転移に及ぼす影響とその分子機構を解析し、これらの研究成果に基づき、今後のPC 制御系因子を用いた腫瘍の新しい診断法・治療法・予防法の開発に向けた研究へと展開させようとするものである。 25年度の研究では、その基礎となる研究成果を概ね得ることが出来たので、引き続き次年度以降に計画した課題について研究を継続したい。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度以降は、1-3βグルカン、ラムナン硫酸、活性化PC(APC)や遺伝子組み換えTMの様々な腫瘍細胞の増殖や転移に及ぼす影響とその作用機構について、in vitro実験だけでなく、in vivo実験で解析する計画をしている。このために必要な研究試薬や遺伝子改変動物の購入を進めて、研究の推進を図りたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度の収入額は1,6000.000円で、支出額は1,528,509円であり、残額は71,491円であった。支出の内訳は学会出張旅費及び試薬等の物品費であった。残額が生じた理由は、年度末に無理に不要な物品を購入するのを避け、次年度に入ってから、必要な物品の購入にあてるため、残額分の使用を延期したことによる。 前年度に生じた残額の71,491円は、26年度に入ってからの研究に必要な物品を購入するために使用する。具体的に購入を計画している物品は、26年度から遺伝子改変マウスを新たに飼育するので、その購入費や飼料代に用いたい。
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