2014 Fiscal Year Research-status Report
滑膜肉腫起源細胞の同定・腫瘍幹細胞モデルの樹立と新規治療標的の探索
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25460471
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
木村 太一 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), その他 (90435959)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷野 美智枝 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (90360908)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 腫瘍幹細胞 / スフィア形成法 / 滑膜肉腫 / SWI/SNF複合体 / 質量分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
Ink4a/Arf KOマウス及びInk4a/Arf KO/SS18-SSX1 TGマウス(以下KO/TG)から 不死化骨髄間葉系初代培養細胞の樹立を行ったが、KO/TG由来細胞で増殖能、コロニー形成能の有意な亢進を認めなかった。KO/TG由来細胞のSS18-SSX1の発現量を調べた結果、悪性形質転換を来すのに十分な発現誘導がかかっていないことが考えられた。以上の結果から悪性形質転換の有無がヒトとマウス由来の細胞起源、種差に起因する可能性を考慮して、ヒト滑膜肉腫細胞株の幹細胞培養系を用いて腫瘍幹細胞の性状解析を行う方針とした。 ヒト滑膜肉腫細胞株FUJIを幹細胞培養し、スフィア形成群で非形成群に比べ幹細胞性遺伝子の発現が充分に亢進する詳細な条件設定を行った。同条件ではSS18-SSX2の発現亢進も見られ、種々の腫瘍においてその機能欠失が腫瘍の発生や悪性度に関与し、幹細胞性の維持にも関与することが知られているSW/SNF複合体の構成サブユニットの発現亢進も見られる事が判明した。そのため我々は免疫沈降法と質量分析計を用いて、スフィア形成群と非形成群におけるSWI/SNF複合体構成サブユニットの変動及びスフィア形成群特異的なSS18-SSX結合分子の同定を試みた。 スフィアを形成した細胞群と、陰性対照として通常培養条件下で培養した群をサンプルとして、アフィニティ精製を行い、質量分析計による結合分子の同定を行った。約100の分子が同定されたため、分子量やシークエンスカバレージの高さ, 各種データベースのアノテーションを参考に絞り込みを行い、幹細胞性の制御・維持に関わる可能性が考えられる26の候補分子を抽出した。予想に反して同定された100の分子及び絞り込みを行った26の候補分子の中にSWI/SNF複合体の構成サブユニットは含まれていなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の理由から、マウス幹細胞モデルの樹立を一旦保留とし、ヒト滑膜肉腫細胞株FUJIを用いた幹細胞培養系を用いて解析を行う事とした。FUJIを用いることでマウス幹細胞モデルの樹立で必要であった悪性形質転換能の評価は不要となり、また以前の研究から幹細胞培養系によるNOD/SCIDマウスでの造腫瘍能の亢進など一連の幹細胞性の評価は完了しているため解析時間の短縮が可能となった。 さらに幹細胞培養系におけるスフィア形成群と非形成群のcDNAマイクロアレイを用いた網羅的な遺伝子発現比較解析は、以前の研究で既に行い、CXCR4などスフィア形成群で発現が亢進し滑膜肉腫幹細胞を濃縮し得る細胞表面マーカーの探索が終了していることから今回の検討では免疫沈降法と質量分析計を用いて、スフィア形成群と非形成群におけるSWI/SNF複合体構成サブユニットの変動及びスフィア形成群特異的なSS18-SSX結合分子の同定を試みた。その結果、スフィア形成群で特異的にSS18-SSXに結合し幹細胞性の制御・維持に関わる可能性が考えられる26の候補分子を抽出した。 平成27年度は当初の計画通り後述する方策を施行し、候補分子の解析を行う事で本研究課題の目的である滑膜肉腫幹細胞の性状解明とそれに伴う新規治療法の創出を目指す。上記の通り概ね研究計画の達成度は当初の予定通りと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在は候補分子のうち幹細胞制御との関連が高いと考える分子の免疫沈降法による結合確認を行っており、今後はSS18-SSXとの結合が報告されている分子群が本実験系で同定されるかどうかの検証実験や、 BRG1、BAF47特異抗体によるアフィニティ精製による結果との比較、またアフィニティ精製の条件をさらに厳密にすることで候補分子のさらなる絞り込みを行うと同時に、クロマチン免疫沈降法と次世代シークエンサーを用いた滑膜肉腫幹細胞特異的にSYT-SSXにより転写調節をうける遺伝子群の同定を予定している。 上記実験系で同定された候補分子に対するsiRNA を作製し、コロニー形成アッセイによる増殖抑制効果、幹細胞培養条件でのスフィア形成能の低下、及びRT-PCR 法を用いたNanog、Oct3/4 等の幹細胞性遺伝子の発現低下等を指標として幹細胞性の喪失の有無を検討する。幹細胞性の喪失が見られた遺伝子はレンチウィルスベクターを用いた候補遺伝子特異的なshRNA 安定発現株を作成し、NOD/SCIDマウスに皮下移植し、in vivoでの幹細胞性の喪失、治療効果について検討する。先行してin vitro の検討で候補遺伝子を絞り込むことにより解析時間の短縮を狙う。 次に滑膜肉腫症例を用いて候補遺伝子の免疫染色を行い陽性率と長期予後の比較検討による新規予後マーカーの探索、滑膜肉腫で特異的に陽性像が得られる診断マーカーの探索を行う。探索の精度向上、ハイスループット化を狙って軟部腫瘍のtissue array の作製を外部業者に委託し解析に使用する予定である。 さらに候補遺伝子を機能によって分類し、既存の薬剤を用いた腫瘍抑制効果の検証、分化誘導による治療の可能性、新規分子に関しては中和抗体の作製、特異的な低分子化合物のスクリーニング、評価を行う。
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Causes of Carryover |
平成27年3月に購入した物品が平成27年4月に支払われたため未使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年3月に購入した物品は平成27年4月に支払いが完了する予定。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] Rapid immunohistochemistry based on alternating current electric field for intraoperative diagnosis of brain tumors.2015
Author(s)
Tanino M, Sasajima T, Nanjo H, Akesaka S, Kagaya M, Kimura T, Ishida Y, Oda M, Takahashi M, Sugawara T, Yoshioka T, Nishihara H, Akagami Y, Goto A, Minamiya Y, Tanaka S, R-IHC Study Group.
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Journal Title
Brain Tumor Pathology
Volume: 32
Pages: 20-21
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Hydrogen sulfide augments survival signals in warm ischemia and reperfusion of the mouse liver.2015
Author(s)
Shimada, S., Fukai, M., Wakayama, K., Ishikawa, T., Kobayashi, N., Kimura, T., Yamashita, K., Kamiyama, T., Shimamura, T., Taketomi, A., Todo, S.
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Journal Title
Surgery Today
Volume: 45
Pages: 892-903
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] microRNA 31 functions as an endometrial cancer oncogene by suppressing Hippo tumor suppressor pathway.2014
Author(s)
Mitamura T, Watari H, Wang L, Kanno H, Kitagawa M, Hassan MK, Kimura T, Tanino M, Nishihara H, Tanaka S, Sakuragi N.
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Journal Title
Molecular Cancer
Volume: 13
Pages: 97
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Immunohistochemical evaluation of O(6) -methylguanine DNA methyltransferase (MGMT) expression in 117 cases of glioblastoma.2014
Author(s)
Miyazaki M, Nishihara H, Terasaka S, Kobayashi H, Yamaguchi S, Ito T, Kamoshima Y, Fujimoto S, Kaneko S, Katoh M, Ishii N, Mohri H, Tanino M, Kimura T, Tanaka S.
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Journal Title
Neuropathology
Volume: 34
Pages: 268-276
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Epiregulin enhances tumorigenicity by activating the ERK/MAPK pathway in glioblastoma.2014
Author(s)
Kohsaka S, Hinohara K, Wang L, Nishimura T, Urushido M, Yachi K, Tsuda M, Tanino M, Kimura T, Nishihara H, Gotoh N, Tanaka S.
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Journal Title
Neuro Oncology
Volume: 16
Pages: 960-970
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] SS18-SSX-regulated miR-17 promotes tumor growth of synovial sarcoma by inhibiting p21WAF1/CIP1.2014
Author(s)
Minami, Y., Kohsaka, S., Tsuda, M., Yachi, K., Hatori, N., Tanino, M., Kimura, T., Nishihara, H., Minami, A., Iwasaki, N., Tanaka, S.
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Journal Title
Cancer science
Volume: 105
Pages: 1152-1159
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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