2014 Fiscal Year Research-status Report
分子分類を利用した腸管寄生原虫の網羅的検出法の開発
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25460514
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
所 正治 金沢大学, 医学系, 講師 (30338024)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 腸管寄生原虫 / 分子分類 / 種内多型 / DNAバーゴーディング |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに収集した各原虫の遺伝子レベルでの種内・種間多型について詳細解析を達成した。最終前年度である今年は、これまでのデータ報告に注力した。 1)トリコモナス類: 腸トリコモナス(ヒト及び動物由来株)、ハイポトリコモナス(齧歯類由来株)を培養分離株として維持することに成功した。また、トリトリコモナス、テトラトリコモナスなどその他の動物由来種についても、遺伝子レベルでの詳細解析を実施し、ヒトと動物に分布するトリコモナス類の多型解析として国際誌に発表することができた(Kamaruddin et al. 2014)。 2) 本研究において確立した寄生虫の分子分類を応用し、腸管寄生原虫以外の原虫についても遺伝子型解析を実施した。 a. 日本国内に分布するトリパノソーマ属の分子同定:従来から、国内各地で捕獲された野鼠由来のトリパノソーマ属について分子同定による種決定をおこない、基本的に国内のヤチネズミには、Trypanosoma grosiという、極めて宿主特異性の高いトリパノソーマが分布することを報告した(Nakamoto et al. 2014)。 b. 角膜炎の原因となる自由生活アメーバの分子分類:昨年度、詳細なアカントアメーバ属について詳細な分子分類の提案を行ったが(RAHMAN et al. 2013)、この分類手法を応用し臨床分離株の分類を実施し、アカントアメーバ角膜炎の角膜神経炎に関する報告をすることができた(Yamazaki et al. 2014)。 寄生虫の分子分類は、特に本研究であつかってきたマイナー原虫では未だ発展途上だが、その有用性は明らかである。さらに適応可能な原虫の幅を拡げ、原虫分類におけるDNAバーコーディング構想の実現を目的に、今後も研究を推進していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
分子分類に基づく網羅的な寄生原虫検出を実現するという本研究の目的は、順調に達成されている。その理由は以下の通り。 1)これまで詳細な解析事例のなかった腸トリコモナス、トリパノソーマ、アカントアメーバについて分子分類に基づく同定を実施することができた。 2)腸トリコモナスでは、リボゾーマルRNAコーディング領域のDNA配列と関連するITS領域による、また、アカントアメーバでは、核及びミトコンドリアの異なる特性を持つ18Sおよび16SリボゾーマルRNA遺伝子を用いた新たな分子分類の基準を提示することができた。 3)これまでにほとんど種内多型を調べられていない複数の腸管寄生原虫(メニール鞭毛虫、レトルタモナス、エンテロモナス、大腸アメーバ、ハルトマンアメーバ)の解析についても、サンプルのPCRスクリーニングが完了し、PCR増幅産物を得ることができた。これらの増幅産物については部分シークエンスが既に読まれ、同定を確認済みであり、引き続き全長シークエンスの決定が予定されている。 4)上記サンプルが確保できたことで、次年度(最終年度)には、上記腸管寄生原虫についても一定の知見が得られる見込みがついている。 5)本研究からはすでに4報の英文論文が出版され、次年度にさらに論文の出版が予定されている。
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Strategy for Future Research Activity |
1)引き続きスクリーニングPCRを実施し、各腸管寄生原虫の検出トライアルと、陽性サンプルのシークエンス解析を進める。 2)これまでに出版された論文に加え、さらに現在までに確定したデータをベースに論文著述を継続する。 3)次年度は本研究計画の最終年度となるため、研究総括をおこない、引き続き進めていく新たな研究計画について検討を開始する必要がある。そこで、以下の方策を進める。 ・新規研究計画のベースとなりうる探索的な予備データは、本研究で実施しているスクリーニングPCRのプロダクトシークエンスでも十分に得られる見込みがある。そこで、短鎖のDNA増幅産物についても積極的にDNAシークエンスを進め、本研究で得られた各原虫の遺伝子多型のすべてについて、少なくとも概要を把握できるようデータを確保する。 ・本研究における研究上の問題点の洗い出しを開始し、新たな研究計画における改善につなげられるよう考慮する。 ・スクリーニングPCRのターゲット原虫について、次年度中に追加できるその他の原虫が無いかどうかを再度確認し、本研究で確立した手法の網羅性について最終的な確認をおこなう。
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Remarks |
上記ホームページ内の研究ページに「網羅的検出アプローチによってみえてくるもの」として、分子分類の研究の概要が示されている。 http://www.parasitology.jp/research.html
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