2014 Fiscal Year Research-status Report
アミン反応性同位体タグによる血清タンパク質ストレス損傷の定量
Project/Area Number |
25460684
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
石田 哲夫 琉球大学, 理学部, 教授 (10176191)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 血清タンパク質 / アミノ酸 / ダブシルクロリド / 安定同位体ラベル / 質量分析 / 液体クロマトグラフィー / 血清アルブミン / メタボロミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
タンパク質は、生合成された後、いろいろな物質によるさまざまな化学修飾を受ける。これらの修飾の多くはリン酸化など生理的なものであるが、病理的な修飾も起こり活性酸素や高血糖による修飾はその一例である。これらのタンパク質の化学修飾状態は時々刻々変動しているが、それを定量的・網羅的に測定することができれば、未知の化学修飾や有用なバイオマーカーを発見できる可能性が高い。 本研究では、質量が6ずつ異なる3種類のダブシルクロリド(トリプルタグ)をアミノ基選択的ラベル剤として利用し、タンパク質化学修飾の定量的プロファイリングを実現することを目指している。タンパク質を化学的に加水分解し、側鎖の修飾を受けたものを含めたすべてのアミノ酸を遊離させ、ダブシルクロリドでラベルして同定・定量する。 今年度は、定量精度の根幹となるラベル反応そのものの特徴を解明することに重点を置き、以下の成果を得た。 1、ダブシルクロリドを少量のトリフルオロ酢酸を添加したアセトン中に懸濁液として調製することで長期間(1か月以上)保存できる。2、グリシンとプロリンがダブシルクロリドと非常に速く反応してほぼ常に完全にラベルされるため、これらの安定同位体(13C2-グリシンなど)が内部標準として非常に有効であること。3、タンパク質を構成する20種類のアミノ酸のうちロイシンとイソロイシン以外のすべてをキャピラリーHPLC-ESI-MS(キャピラリーカラムで分離し、エレクトロスプレーイオン化して汎用のイオントラップ型質量分析装置で測定)で分離・定量でき(ロイシンとイソロイシンはまとめて定量)、溶媒の使用量も少量で済む。4、サンプルのダブルラベルと標準アミノ酸を加えたトリプルラベルを組み合わせることで、被修飾アミノ酸をダブレットピークとして簡単に検出できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ダブシルクロリドに限らず、アミノ基選択的ラベル試薬は水酸化物イオンによる加水分解を受ける。水酸化物イオンは、pH 9.0では約10μmol/Lもあり、しかも緩衝液中のラベル反応ではこの濃度は一定に保たれる。その結果、試薬が加水分解し続けるため、水酸化物イオンに比べて濃度が低いアミンや反応速度が遅いアミンを完全にラベルすることは難しい。 本年度は、測定の精度・正確さを左右するこの根本的な課題について、安定同位体トリプルタグであることを生かして定量的に取り組み、解決の方向を見出すことができた。また、大量に生じる試薬の加水分解産物であるメチルオレンジを選択的に除去する微量スケールの簡単な固相法が確立でき、再現性のあるスムーズなキャピラリーHPLC-ESI-MSが実施できるようになった。 また、本研究の分析方法を複数種の軟体動物におけるアミノ酸・アミンレベルの比較定量に応用して、その有効性を実証できた。 したがって、総合的に見て、本研究は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、実証実験を中心に進め、実用化に向けて解決すべき課題の抽出と解決を行う。具体的には、三種類の生体サンプルを取り扱う。 1、糖尿病モデルラットの個体別血清について、(1)血清アルブミンを精製し、そのアミノ酸の比較定量、(2)血清中の遊離型アミノ酸の比較定量、(3)血清アルブミン以外の血清タンパク質をひとまとめに加水分解して、そのアミノ酸の比較定量と被修飾アミノ酸の同定、以上を行う。 2、軟体動物(アフリカマイマイなど)における遊離型アミノ酸の各種条件による変動解析を行う。 3、サンゴ礁沿岸部の海水中の遊離型アミノ酸やアミン類の分析を行う。 これらの実験と並行して、研究成果を論文や学会で発表する。
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