2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25460918
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
市田 成志 近畿大学, 薬学部, 教授 (00125121)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 慢性ストレス / がん / 転移 |
Research Abstract |
最近のがんの研究では,精神腫瘍学や精神神経免疫学などにより,がんとストレスや自律神経系との関連性について注目されている。一般にストレス状態で認められる自律神経系のアンバランスや免疫機能の低下は,がんの進行や転移能の影響を及ぼす付加的要因になり得る可能性が報告されている。そこで、がん細胞の増殖、特に転移能は、慢性ストレス状態ではいかなる影響を受けるのかという疑問点を解決する実験を試みた。 基礎実験として慢性ストレス状態にあるSARTストレス動物を使用し、がん転移能と腫瘍の成長について検討した。SARTストレスは室温24℃・庫内温度4℃の動物飼育チャンバーに,マウスを毎日9時から16時までの間は1時間ごとに両ケージ間に移し替え,16時から翌朝9時までは4℃のチャンバー内で飼育する環境温度ストレスに7日間曝した。肺がん転移モデルとして、B16BL6悪性黒色腫細胞(10^5 cell)を尾静脈内投与し,3日,8日,14日後の肺における転移結節数を測定した。SARTストレス負荷前にがん細胞を投与した場合,肺におけるがん転移結節数の有意な増加と腫瘍体積の有意な増大が認められた。また,SARTストレス負荷後にがん細胞を投与した場合,肺におけるがん転移結節数の有意な増加が認められたが,腫瘍体積については増大傾向が観察できたもののほとんど変化が認められなかった。以上の結果から,慢性ストレス状態が一つの要因となりがん転移能や腫瘍の増大(がん細胞の増殖促進)を誘発し,がんの進行を早め,がんを悪化させることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で示したとおり,H25年度交付申請書に記載した研究目的は,「SARTストレスマウス及び正常マウスに対する悪性黒色腫細胞の注射によって生じた肺転移結節数の測定」を検討することであった。 また,学会発表を3演題実施する成果も得ており,H25年度の目的はおおむね順調に進展していると考えている。これらの成果については論文執筆中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度,慢性ストレス状態では肺における転移結節数の増加や腫瘍の増大(がん細胞の増殖促進)が認められた。慢性ストレスによってがんの進行が促進することが示唆されたことから,H26年度はH25年度交付申請書に記載した予定通り,SARTストレスマウスの肺における免疫機能変化について下記項目を検討する。 1)肺における免疫機能に重要な役割を果たす肺胞マクロファージとNK細胞の数量を組織免疫染色法にて計測する。 2)肺胞マクロファージの貪食能の評価を蛍光ビーズ法で実施する。 3)肺の免疫に重要なサイトカイン濃度を測定する。 これらの研究について,得られた結果をとりまとめ,研究成果の発表並びに論文投稿を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度交付された直接経費はおおむね消耗品費で使用していると考えている。最終月に購入予定であった試薬が輸入品であり,納品が今年度中に間に合わないため,2553円の差引額が発生した。 平成26年度は,実験動物(マウス)と実験動物の飼育用関連費用として約40万円,細胞培養関連費用として約30万円,試薬として約40万円を使用する。 平成26年度の研究費は,交付額(110万円)とH25年度の差引額(約0.2万円)の併せて約110万円であり,H26年度に使用を予定している研究費の使用計画の合計は約110万円である。
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Research Products
(3 results)