2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25460918
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
市田 成志 近畿大学, 薬学部, 講師 (00125121)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 慢性ストレス / がん / 自然免疫 / マクロファージ |
Outline of Annual Research Achievements |
近年,精神腫瘍学や精神神経免疫学などの発展により,がんとストレスとの関連性が注目されている。一般にストレスは,自律神経系,内分泌系を介して免疫系に影響を及ぼす。そこで、がん細胞の増殖および転移に慢性ストレス状態がいかなる影響を与えるかという疑問点を解決することを目的として研究を行った。 これまでの研究から自律神経失調症のモデル動物であり,多くの慢性ストレス症状を示すSARTストレスマウスは,B16BL6悪性黒色腫細胞を投与した肺がん転移モデルにおいて自然免疫に重要な役割を果たしている肺胞マクロファージ(Mφ)数とNK細胞数の減少に加えてMφの貪食能を低下させることでがん転移能及び腫瘍の増大(がん細胞の増殖)を促進させることを見いだした。そこで,このがんを悪化させる要因の1つである肺胞マクロファージの免疫機能低下と自律神経系の関係を検討した。その結果, SARTストレスマウスの低下した肺胞マクロファージの貪食能は,カルバコールでは回復せず,ノルアドレナリンやアドレナリンで回復したことから、主に交感神経系の関与が示唆された。そこで,自律神経系が関与していることから,迷走神経切除術および6-hydroxydopamine(6-OHDA)投与により化学的除神経を施したマウスを使用して貪食能を検討した。その結果,迷走神経切除術を施したマウスでは肺胞マクロファージの貪食能に変化が認められなかった。一方,6-hydroxydopamine(6-OHDA)投与により化学的除神経を施したマウスの肺胞マクロファージは有意な貪食能の低下が認められ,交感神経緊張低下状態の関与が示唆された。 つまり,肺がん転移モデルにおいて,慢性ストレス状態は交感神経緊張低下状態を介して肺胞マクロファージの免疫能が低下することにより,がん転移能及び腫瘍の増大を促進させることが示唆された。
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