2015 Fiscal Year Annual Research Report
異なるタイプの動脈瘤(紡錘瘤・嚢状瘤・解離性動脈瘤)発症機序の解明
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25461142
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
磯田 菊生 順天堂大学, 医学部, 准教授 (00532475)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 動脈瘤 / 炎症 / サイトカイン / アンジオテンシンII |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度までに、IL-1Ra欠損マウスの大腿動脈瘤の形成過程を詳細に観察し、炎症性動脈瘤はまず外膜側の炎症から始まり、その後内膜肥厚や動脈瘤形成を来すことが分かった。この炎症性動脈瘤形成には炎症惹起能力が高いIL-1Ra欠損炎症細胞が大きく寄与していることを明きらかにした。この外膜炎症抑制には糖尿病治療薬であるDPP-4阻害薬が有効であることも明らかにした。 上記に平行して行っていたアンジオテンシン(AngII)負荷によるIL-1Ra欠損マウスの腹部大動脈瘤形成モデルは再現性の高いことが、平成27年度の研究で明らかになった。そこで野生型マウス(WT)とIL-1Ra欠損マウス(IL-1Ra-/-)に対し、AngIIを28日間投与し比較した。投与7日目の腹部大動脈におけるIL-6, TNF-α及び MMP-9のmRNAの発現は、WT群に対しIL-1Ra-/-群で有意に高かった。また、AngII投与14日後の収縮期血圧及び腹部大動脈径はIL-1Ra-/-群で有意に高値を示していた。しかし、IL-1Ra-/-では大半が、AngII投与中に大動脈瘤破裂により死亡した。そこで、投与期間を14日間と縮小し、投与開始28日後に解析を行った。興味深いことに両群に血圧に有意な差を認めないものの、腹部大動脈径はIL-1Ra-/-群で有意に拡大していた。腹部大動脈の病理像では、IL-1Ra-/-群において動脈径拡大部位に多数の炎症性細胞浸潤・弾性板の断裂を認めたが、WT 群では認めなかった。これらの結果より、IL-1RaがAngIIによって誘導された炎症を増悪させ、動脈瘤形成を促進する作用を持つことが明らかになった。AngII投与中止後に、血圧が正常化したにもかかわらず、この作用は継続することも示された。以上の成果を2015年のヨーロッパ心臓病学会に発表した。
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