2015 Fiscal Year Research-status Report
過敏性肺炎の新たな治療標的としてのスフィンゴシン1-リン酸シグナル伝達系の解析
Project/Area Number |
25461182
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
土屋 公威 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 講師 (10579189)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 過敏性肺炎 / スフィンゴシン1-リン酸 / フィンゴリモド塩酸塩 |
Outline of Annual Research Achievements |
過敏性肺炎は、環境由来抗原(鳥抗原や真菌など)の吸入が持続することによって肺組織でⅢ型・Ⅳ型アレルギーが誘導されて発症する間質性肺炎である。リンパ球性炎症や線維化が生じる。過敏性肺炎の病態の一つであるⅣ型アレルギーではリンパ組織から肺へのリンパ球の流入が炎症反応を促進するため、本研究では、リンパ球流入の機序を明らかにすることが有効な治療法開発につながると考え、当教室で確立した過敏性肺炎マウスモデル(Int Arch Allergy Immunol 154:264,2011. PLoS One 10: e0137978,2015.)を用いて、リンパ球循環の過程に重要であるスフィンゴシン1-リン酸(S1P)シグナル伝達系の抑制による効果を解析する実験を行った。 結果は、鳩糞抽出物(PDE:pigeon dropping extracts)を吸入させた過敏性肺炎(鳥飼病)モデルマウスにおいては、コントロールマウスと比較して気管支肺胞洗浄液中の総細胞数、リンパ球、好中球の増多を認め、また、肺組織中のTh2系サイトカイン、IL-17Aの発現増加を認めた。S1P受容体の機能的アンタゴニストであるFTY720(フィンゴリモド塩酸塩)の投与によって気管支肺胞洗浄液中のリンパ球、好中球の増多が抑制され、また、S1P受容体陽性リンパ球、特にTh17の肺浸潤抑制を反映して気管支肺胞洗浄液細胞中のIL-17A mRNA発現がFTY720投与群で低下していた。一方、過敏性肺炎(鳥飼病)モデルマウスの肺組織においては、FTY720投与による肺線維化の改善効果は明らかでなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本学中央飼養保管施設の改修工事がH25年から26年にあったため、動物実験の開始が大幅に遅れたため。
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Strategy for Future Research Activity |
S1Pは、生成に関与するSphK1, SphK2と、脱リン酸化・分解に関与するS1Pフォスファターゼ, S1PLの両者のバランスによって保持されている。過敏性肺炎モデルマウスに対してFTY720を投与した我々の実験結果より、リンパ球上のS1P受容体であるS1P1をブロックするだけでは肺線維化までは抑制できないと考えられたため、今後はS1P受容体の制御だけではなくS1P産生の制御も治療標的として想定し、SphK阻害薬(N,N-Dimethylsphingosine)の投与を行う実験を予定する。
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Causes of Carryover |
本学中央飼養保管施設の改修工事がH25年から26年にあり動物実験が不可であったため、動物実験の開始が大幅に遅れたため、当初の予定より時間を要している。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
これまでに動物から採取したサンプル(肺組織、気管支肺胞洗浄液)の解析を行う。また、新たにSphK阻害薬をマウスに投与する実験を追加する予定。
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Research Products
(1 results)
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[Presentation] 慢性鳥関連過敏性肺炎における病理所見と臨床所見の相関2015
Author(s)
千葉佐保子, 土屋公威, 明石巧, 武村民子, 岡本師, 立石知也, 古澤春彦, 藤江俊秀, 玉岡明洋, 坂下博之, 角勇樹, 宮崎泰成, 稲瀬直彦
Organizer
第55回日本呼吸器学会学術講演会
Place of Presentation
東京国際フォーラム(東京都千代田区)
Year and Date
2015-04-17 – 2015-04-19