2015 Fiscal Year Research-status Report
ヒトiPS細胞を用いた脂肪萎縮症・肥満症の新規治療法の開発
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25461347
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
野口 倫生 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00432394)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 脂肪萎縮症 / 疾患特異的iPS細胞 / 多能性幹細胞 / 脂肪細胞分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
脂肪萎縮症患者からの疾患特異的iPS細胞作製と脂肪細胞分化誘導 先天性脂肪萎縮症患者5例と後天性脂肪萎縮症患者2例と部分性脂肪萎縮症患者1例から疾患特異的iPS細胞(脂肪萎縮症iPS細胞)の樹立を行い、続いて脂肪萎縮症iPS細胞の脂肪細胞分化誘導を行った。BSCL2遺伝子異常を有する脂肪萎縮症iPS細胞は脂肪細胞分化誘導により健常者由来のiPS細胞と比較し著明な脂肪蓄積の低下を認め、脂肪細胞関連遺伝子の発現低下を認めた。さらにBSCL2遺伝子異常を有する脂肪萎縮症iPS細胞にBSCL2遺伝子を過剰発現させると脂肪蓄積の低下が回復した。また脂肪滴関連分子のADRPとBSCL2遺伝子がコードするSeipinの結合がSeipin遺伝子異常において阻害されていることがメカニズムの一つである可能性が示唆される。BSCL2遺伝子異常を有する脂肪萎縮症iPS細胞は脂肪萎縮症の病態を再現し、病態解明の有用なツールとなりうることが明らかとなった(Metabolism 2016)。また後天性全身性脂肪萎縮症患者由来iPS細胞は脂肪細胞分化により脂肪の蓄積に関して健常者由来のiPS細胞と比較し有意な差を認めなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞系譜特異的な脂肪細胞分化誘導法の開発 ヒトiPS細胞由来間葉系前駆細胞 (Methods Mol Biol. 2011)を誘導し、CD29, CD34, CD73, CD90, CD105, CD140a, CD166 などの表面マーカーの解析を行った。これらの細胞は軟骨細胞分化能は有するものの脂肪細胞分化能に関しては効率が非常に低いという結果が得られた。次にヒトiPS細胞由来間葉系前駆細胞に遺伝子導入を試みて脂肪細胞様細胞が得られることを確認した。しかし病態の治療法として考えた場合に遺伝子導入を介さない誘導法を最優先にする方針とした。 脂肪萎縮症患者からの疾患特異的iPS細胞作製と脂肪細胞分化誘導 先天性脂肪萎縮症患者5例と後天性脂肪萎縮症患者2例と部分性脂肪萎縮症患者1例から疾患特異的iPS細胞の樹立を行った。BSCL2遺伝子異常を有する脂肪萎縮症iPS細胞は脂肪細胞分化誘導により健常者由来のiPS細胞と比較し著明な脂肪蓄積の低下を認め、脂肪細胞関連遺伝子の発現低下を認めた。さらにBSCL2遺伝子異常を有する脂肪萎縮症iPS細胞にBSCL2遺伝子を過剰発現させると脂肪蓄積の低下が回復した。BSCL2遺伝子異常を有する脂肪萎縮症iPS細胞は脂肪萎縮症の病態を再現し、病態解明の有用なツールとなりうることが明らかとなった(Metabolism 2016)。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞系譜特異的な脂肪細胞分化誘導法の開発 げっ歯類の脂肪細胞の前駆細胞の少なくとも一部は血管壁細胞(平滑筋細胞)由来であることが報告されている(Science 2008)。また、申請者らの研究室においてヒトiPS・ES細胞は血管構成細胞への分化能を有していることを示した(ATVB 2007, 2009)。これらの知見をもとにヒトiPS細胞由来血管前駆細胞から脂肪細胞が分化誘導可能かについて検証する。 脂肪萎縮症患者からの疾患特異的iPS細胞作製と脂肪細胞分化誘導 既に樹立している先天性全身性脂肪萎縮症、後天性全身性脂肪萎縮症及び部分性脂肪萎縮症の脂肪萎縮症iPS細胞を用いて脂肪細胞分化誘導を行い、病態が再現されうるかについて詳細に解析する。現在BSCL2遺伝子異常を有する脂肪萎縮症と後天性全身性脂肪萎縮症の疾患特異的iPS細胞について解析を行った。順次、他の先天性脂肪萎縮症と部分性脂肪萎縮症についての解析を行う予定である。
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Causes of Carryover |
申請者の所属等の変更に伴い、研究計画の遂行に必要なヒトES細胞の使用に関して新たな施設で使用するための使用計画の追加・変更申請を行う必要があり、京都大学大学院医学研究科・医学部及び医学部附属病院「医の倫理委員会」に申請を行い、承認されるのに時間を要した。さらに細胞系譜特異的な分化誘導法の開発に時間を要しているため研究計画を一部変更した。ヒトiPS・ES細胞由来間葉系前駆細胞は脂肪細胞能が認められなかった。ヒトiPS・ES細胞から血管前駆細胞から脂肪細胞への分化誘導が可能かについて検証を開始している。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2014年1月にヒトES細胞の研究計画の追加変更申請に関して倫理委員会の承認を得て、ヒトES細胞の研究を遂行している。ヒトiPS・ES細胞からの脂肪細胞分化誘導に関しては細胞系譜特異的な分化誘導法の開発を目指して、ヒトiPS・ES細胞由来血管前駆細胞からの分化誘導を計画している。脂肪萎縮症患者からの疾患特異的iPS細胞作製と脂肪細胞分化誘導については引き続き脂肪萎縮症の病態を再現しうるかについての検証を継続する。
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] Impaired adipogenic capacity in induced pluripotent stem cells from lipodystrophic patients with BSCL2 mutations2016
Author(s)
1.E. Mori, J. Fujikura, M. Noguchi, K. Nakao, M. Matsubara, M. Sone, D. Taura, T. Kusakabe, K. Ebihara, T. Tanaka, K. Hosoda, K. Takahashi, I. Asaka, N. Inagaki, K. Nakao
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Journal Title
Metablism
Volume: 65
Pages: 543-556
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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