2013 Fiscal Year Research-status Report
骨髄系細胞の分化と遺伝子発現におけるC/EBPαとGABPのクロストークの解明
Project/Area Number |
25461462
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
下川 敏文 日本大学, 医学部, 助教 (10339327)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 血球分化 / 好中球 / bZIP / ETS / タンパク質-タンパク質相互作用 |
Research Abstract |
本年度は,C/EBPα-GABP間相互作用により調節される骨髄系細胞特異的な遺伝子の探索するための実験系構築を目的として,C/EBPαとの会合および相乗的転写活性化能が低下する GABPα変異体(GAα-β3-QQL;Biochem J,2010)および野生型GABPにHAタグを連結し,さらにdestabilization domainタグを挿入した誘導型発現ベクターを構築した.それぞれ骨髄系細胞株U937に導入し,変異体と野生型が同レベルで高発現する安定発現細胞株を複数クローン取得できた(それぞれQQL株およびGABP株).C/EBPαが GABP との会合を介して結合する遺伝子領域の再免疫沈降法(re-ChIP法)による同定に向けて,これらのクローンの性状を詳細に解析中である.一方,C/EBPα側からの解析として,GABPとの会合に必要なC末端領域がCD15及びCD11bの発現誘導を指標としたK562株のC/EBPα依存性の好中球分化に必須であることを,更に他の分化マーカー(C/EBPε及びG-CSFレセプター)を用いて明らかにし,論文として発表した(BBA, 2013).また,GABPとの会合に必要なC/EBPαC末端の2つのアミノ酸ストレッチをいずれも3アミノ酸残基まで絞り込み,これらを欠失するC/EBPα変異体がGABPとの会合能に著しく低下をきたすことを明らかにした (BBA, 2013).この変異体の好中球分化における影響を解析するため,誘導型の発現ベクターを構築中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度前半は,C/EBPαC末端領域に関して,GABPα結合部位を絞り込み,GABPαとの物理的相互作用が欠損する変異体をデザインすること,また,それらの研究成果を含め,C末端領域が好中球分化において新規の機能ドメインとして働くことを裏付ける実験を完成させ論文化することを第一の目標として実験を進めた.若干論文化のため実験に時間を要したものの,これらは達成できたものと判断した. この間,C/EBPα-GABP間相互作用に関わるタンパク質修飾の探索に関し,GABPの会合領域およびその近傍(C/EBPαのC末端領域内)の修飾アミノ酸候補としてセリンを置換し検討したが,GABPとの相互作用に影響を及すものは同定されていない.この点は引き続き,さらに他の候補アミノ酸を検討する予定である. C/EBPα-GABPによる相乗的な転写活性化に関わる因子の探索に関しては,研究の進捗状況に合わせ、後述するように,変異体CEα-P346Aプローブを陰性コントロールとした酵母ツーハイブリッド法により,この部位に結合する新規因子を探索する計画に変更した. 一方,本年度後半は,C/EBPα-GABP間相互作用により調節される骨髄系細胞特異的な遺伝子の探索するための実験系構築を第一の目標として実験を進め,そのための有力なツールとなる上記QQL株およびGABP株を樹立できた. 以上の点から、相互作用に関わるタンパク質修飾の探索は引き続き継続予定であるものの,骨髄系細胞特異的な遺伝子発現および骨髄系細胞分化系におけるC/EBPα-GABP間相互作用の解析のツールとなるQQL株およびGABP株の樹立およびC/EBPα変異体のデザインは達成できたと判断し,またこの時点での研究成果の論文化もできたことから,おおむね順調に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
1.当初の計画では,C/EBPα-GABP間相互作用により調節される骨髄系細胞特異的な遺伝子の探索に関し,骨髄系細胞株のre-ChIP法によりC/EBPαとGABPが同時に結合する遺伝子領域の単離をQQL株およびGABP株の樹立と同時に行う予定だったが,効率化のため,樹立株を用いて行う計画に変更した.従ってまず,樹立したGABP株を抗HA抗体および抗C/EBPα抗体によりre-ChIP解析し,両転写因子が同時に結合する遺伝子領域を単離し,次いでQQL株では沈降しない領域を選別することにより,C/EBPαがGABPとの会合を介して結合する遺伝子領域を同定する. 2.C/EBPα-GABPによる相乗的な転写活性化に関わる因子の探索に関しては,研究の進捗状況に合わせ、後述するように若干計画を変更し,変異体CEα-P346Aプローブを陰性コントロールとした酵母ツーハイブリッド法により,この部位に結合する新規因子を同定する. 3.C/EBPα-GABP間相互作用に関わるタンパク質修飾の探索は,引き続き,GABPの会合領域およびその近傍(C/EBPαのC末端領域内)の修飾アミノ酸候補を置換し,GST-pull down法によりGABPとの相互作用に関与する修飾部位を探索する. 4.骨髄系細胞分化系にけるC/EBPα-GABP間相互作用の解析として,デザインしたGABPとの相互作用に関するC/EBPα変異体を誘導型にして骨髄系培養細胞K562に導入して,分化及び遺伝子発現への影響を検討する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究の進捗状況に合わせ、予算執行計画を少々変更したためである.申請時に計上したRNA分離キットおよびRNA定量キットは,GABP変異体の安定発現株の樹立に際して高発現クローンのスクリーニングに使用する予定だったが,導入ベクターにIRES-EGFPユニットを挿入してEGFPの蛍光を測定することによりスクリーニングを行ったため,不要となった.これが大きな理由である. 平成25年度の未使用額を含めた使用計画は次のとおりである.上記したように,C/EBPα-GABPによる相乗的な転写活性化に関わる因子の探索に関し,変異体CEα-P346Aプローブを陰性コントロールとした酵母ツーハイブリッド法により,この部位に結合する新規因子を探索する計画に変更した.このためのキット,cDNAライブラリー,酵母用培地の購入費を新たに計上し,平成25年度未使用額をこれに使用する予定である.一方,翌年度分として請求した助成金の使用計画は当初計画通りであるが,血球分化の専門分野の情報収集のため,新たに日本血液学会への参加・発表を予定しており,その交通費と宿泊費にも使用する予定である.
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