2014 Fiscal Year Research-status Report
高病原性クリプトコックス症の感染病態、病原因子の解明と治療法に関する研究
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25461526
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
大野 秀明 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (20325640)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | クリプトコックス / 高病原性 / 感染病態 / 病原因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
・高病原性(変異型)クリプトコックス症の病理組織学的、免疫学的感染病態評価 昨年に引き続き9-10週齢のC57BL/6J(日本クレア)マウス(メス)を用いて感染病態評価を行った。菌株は同様に変異型Cryptococcus gattii株(JP01株:VGIIa型、JP02株:VGIIc型)、北米アウトブレイク株(R265:VGIIa型)、VGI型C. gattii株(5815W)、C. neoformans H99株とした。これらの菌株を経気管的に感染させ、14日後に肺の病理組織学的所見、肺でのサイトカインの発現等を検討した(共同研究成果を含む)。肺の病理ではH99株では炎症細胞浸潤や肉芽腫形成が良好に行われていたが、JP02株やR265株の高病原性のC. gattii株では肉眼的に肺容積の増大を認め、炎症細胞の集積、肉芽腫形成が極めて乏しい所見であった。さらに、単位面積あたりの多核巨細胞数ではH99株接種群において最も多くの多核巨細胞が確認でき、R265ならびにJP02株接種群では多核巨細胞が出現しない結果であった。また、多核巨細胞ごとに含まれる核数ではH99株接種群で最も多く、R265ならびにJP02株接種群が最小という結果が得られ、クリプトコックス属の病原性は肺での炎症反応の惹起性と反比例するといった結果が認められた。一方、肺でのIFN-g以外のサイトカイン発現では、TNF-a、IL-12、IL-6等の発現においても同様にH99よりもC. gattii株で少ない傾向が認められた。 ・変異型C. gattii株の病原因子解析 本年度はクリプトコックス属の病原因子と考えられる菌体外酵素の産生やウレアーゼ活性、倍加時間について検討した。ホスホリパーゼ活性、プロテアーゼ活性はいずれの菌株でも発現はなく、ウレアーゼ活性はすべての菌株で陽性であり、マウスに対する病原性と相関は認めなかった。一方、37℃での倍加時間では5815W株が最も遅かった(約6時間)が他は3-4時間であり、これも病原性とは相関が低いと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほぼ計画書での予定通りに進捗していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
1)高病原性のC. gattiiの肺における感染病態では、炎症反応の惹起や肉芽腫形成が極めて弱い、すなわち細胞性免疫能の誘導が弱いことが観察され、これにより局所における菌の封じ込めができないことが推測された。すなわち細胞性免疫能の誘導能の低さが病原性に関与していると考えられる。このような背景から、感染後どの段階で病態の差異が生じるのかを、C. neoformansと対比しながらマクロファージによる貪食能に焦点を当てて検討する。2)遺伝学的な情報をもとにC. gattiiの病原性について考察を行う。3)C. neoformans株、C. gattii株によるクリプトコックス感染症に対し、IFN-gなどのサイトカイン補充療法の効果について検討を行う。
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Causes of Carryover |
研究代表者が昨年度途中に研究機関を異動したため、新たな研究場所の確保や研究費の移動などの問題により一時的に研究活動のペースを遅くした。このため、予定していた研究用の消耗品等の購入の一部を平成27年度に持ち越しとせざるをえず、次年度使用額が生じる事となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額に関しては、予定していた試薬やキット等を本年度に購入するため、研究費助成金の使用計画に問題はないと考える。他は計画通りに執行する予定である。
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