2013 Fiscal Year Research-status Report
重症薬疹の治療効果予測のためのバイオマーカーの確立
Project/Area Number |
25461676
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
狩野 葉子 杏林大学, 医学部, 教授 (20142416)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | Stevens-Johnson症候群 / 中毒性表皮壊死症 / 薬剤性過敏症症候群 |
Research Abstract |
重症薬疹にはStevens-Johnson症候群(SJS)、中毒性表皮壊死症(TEN)、薬剤性過敏症症候群(DIHS)などが含まれ、この中でSJSとTENは主として皮膚と粘膜に障害を引き起こす疾患である。近年、その病態についてはT細胞、サイトカイン、グラニュライシンなど様々な視点から研究され、成果が報告されてきている。しかし、SJSやTENの治療に関してはステロイド大量投与、シクロスポリン、免疫グロブリン製剤(IVIG)、血漿交換療法、Tumor necrosis factor(TNF)-α阻害薬投与などが施行されてきているが、その有効性については、まだ一定した見解は得られていない。本年度の研究では、プレドニゾロン大量内服療法(PT)とメチルプレドニゾロンパルス療法(MPT)で治療を行ったSJS症例とTEN症例のバイオマーカーの変動をretrospectiveに解析し、比較検討した。MPTはメチルプレドニゾロン1000mgを3日間連続して施行する方法を用いた。対象は当科にてSJS又はTENと診断されて入院加療した症例で、PTあるいはMPTを施行された患者である。PT施行した3症例の内訳はSJSは2名、TENが1名である。MPTを施行した9症例の内訳は、SJSが3名、SJS/TENオーバーラップが2名、TENが4名である。いずれも保存血清を用いて検査を施行した。バイオマーカーとしてはInterferon(IFN)-γ、TNF-α、Interleukin(IL)-6 、IL-10を治療前後において採取した検体を解析した。PTではIFN-γとIL-10が治療前に比較して治療後に有意に減少し、その後さらにIFN-γのみが有意に減少した。また、治療開始後測定した4つのサイトカイン全てが減少するという傾向を示した。一方、MPTでは4日目(MPT直後)にIFN-γとIL-6が治療前に比較して有意に減少していた。IL-10はPTでは治療後に有意に減少していたのに対して、MPTでは直後にに明らかな変動はなく、20日前後に増加傾向が認められた。PTとMPTでは治療後のバイオマーカーの変動に明らかな相違が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
重症薬疹の中で、本年度はSJS症例とTEN症例を取り上げて、PTやMPTを中心に、当初の計画に準じて解析を進めてきている。しかし、SJSとTEN症例への血漿交換療法後については解析が進んでいない。これは血漿交換療法後の検体の採取時期が様々であり、一定の統一した時期の評価が困難なこと起因している。また、バイオマーカーの解析に関してはPTとMPT前後のIFN-γ、TNF-α、IL-6 、IL-10 、M-CSF、IL-17などのマーカーを測定してきているが、本年度はIFN-γ、TNF-α、IL-6 、IL-10を中心に治療前、治療後、回復期の経時的な解析を施行したのみであり、他のマーカーについての治療前後の解析は達成していない。また、臨床的にMPTが無効な時にどのような変動の特徴があるのかなどの検討が未施行である。さらに、SJSとTEN症例の治療においては様々な合併症が発症するが、バイオマーカーの変動とこの合併症発現の関係については現在、検証と解析を進行中である。なお、薬剤性過敏症症候群については症例検索数を増加するため、検体収集に努めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はSJS症例とTEN症例への血漿交換療法後について、臨床的な解析を施行し、その後、バイオマーカーの変動の解析を行い、治療効果を予測できるような所見を検索する必要がある。PTとMPTでは多くのバイオマーカーの中から代表的なバイオマーカーのIFN-γ、TNF-α、IL-6 、IL-10を選択して経時的な解析を施行したのみであるので、今後は、PTとMPTのM-CSF、IL-17などの異なるマーカーの解析も追加して検討するとともに血漿交換療法前後のこれらのマーカーも含めた変動も追加して検証を進め、治療法による相違を比較検討していく必要がある。さらに、臨床的な合併症や続発症の視点からも検討を加え、バイオマーカーの評価を用いてより適切な治療法が選択できるように推進していく。また、SJSやTENと全く異なる重症薬疹で、ある特定の薬剤により発症し、ヘルペスウイルスが経過に関与する薬剤性過敏症症候群(DIHS)の検証は行っていない。今後、DIHSの保存的治療法と全身性ステロイド治療法の臨床経過を比較するとともに、様々なバイオマーカーを選択してその変動、治療間の相違について解析を進める。
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