2014 Fiscal Year Research-status Report
IL-22によるヒト表皮角化細胞の分化の制御についての検討
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25461697
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
藤山 幹子 愛媛大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60263935)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | IL-22 / 表皮角化細胞 / 分化 / アトピー性皮膚炎 / 乾癬 |
Outline of Annual Research Achievements |
慢性炎症性皮膚疾患におけるTh17サイトカインの働きが注目されているが、IL-22は、アトピー性皮膚炎と尋常性乾癬でみられる異なった表皮の分化異常のどちらにも重要な役割を果たすと考えられている。同じサイトカインが、このような結果の相違を引き起こす理由のひとつに、IL-22に対する表皮角化細胞の反応性の相違が想定され、IL-22レセプターの発現量の違い、他のサイトカインの影響下での細胞内シグナルの変化の2つを考えている。IL-22レセプターは、IL-22R1とIL-10R2の複合体であり、IL-10R2は多くの細胞種に普遍的に発現しているが、IL-22R1の発現は上皮系細胞に限られている。また、表皮角化細胞のIL-22R1の発現は、乾癬では増強しており、創傷の皮膚、インターフェロンαで刺激した皮膚にも発現が亢進する。これまでに、IL-22により表皮角化細胞の分化に伴って発現してくるフィラグリンのmRNAの発現が抑制されること、また、フィラグリンの発現抑制にはIL-22R1の発現量は大きく影響を与えないことを明らかにしてきた。 平成26年度では、フィラグリンの発現を制御する細胞内シグナルを検討した。表皮角化細胞の分化においては種々のシグナルが関与するが、以前、われわれのグループにおいて、一部の分化マーカーの発現とPI3Kの活性化状態に関連があることを報告している。そこで、PI3Kの活性化を抑制する、あるいは活性化させる蛋白をアデノウイルスベクターを用いて強発現させ、フィラグリンの発現の変動を観察した。その結果、PI3Kの活性化がフィラグリンの発現を抑制することが示された。そこで、PI3K活性化の指標としてAKTのリン酸化を指標とし、IL-22によるAKTのリン酸化が見られるかどうかを検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
表皮角化細胞をconfluentの状態で培養することで誘導される分化において検討を行っている。一定の条件下で検討を行っているが、それでも分化誘導の状況にある程度の変動が生じることは否めない。条件を決定するため、また、ひとつの現象を確認するために、想定していたより時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
IL-22によりPI3Kの活性化が誘導されるかどうか、それがフィラグリン発現を抑制しているかどうかを引き続き検討する。まず、PI3Kの活性化を抑制する蛋白をアデノウイルスベクターで発現させ、IL-22によるフィラグリン産生が抑制されるかについて調べる。抑制される場合には、IL-22によるPI3Kの活性化を直接的に証明する。AKTのリン酸化によりPI3Kの活性化を証明できない場合には、他の方法を用いる。また、IL-22からPI3Kの活性化に至る細胞内経路を検討する。抑制されない場合には、他の細胞内シグナルを再検討する。 さらに、インボルクリンの発現誘導におけるIL-22の関与を検討する。これまでにわれわれのグループはインボルクリン発現にSTAT5、PPARγの経路が関与することを報告しており、IL-22はSTAT5を活性化するため、インボルクリン発現とIL-22の関与が明らかとなれば、この経路についてdominant-negative formのSTAT5(作成済み)などを用いて検討する予定である。
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Causes of Carryover |
一定となる実験条件を検討するのに時間を要し、研究に用いる物品の購入を延期したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験条件が決定できたため、今後は研究計画に乗っ取って、必要な物品を購入し研究を進める予定である。
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