2014 Fiscal Year Research-status Report
亜鉛欠乏および社会的隔離による情動変化に関する基礎的研究
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25461753
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
小俣 直人 福井大学, 医学部附属病院, 講師 (30334832)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清野 泰 福井大学, 高エネルギー医学研究センター, 教授 (50305603)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 亜鉛欠乏 / 社会的隔離 / うつ / 不安 / ノルエピネフリン / 神経可塑性 |
Outline of Annual Research Achievements |
亜鉛不足などの栄養学的な問題や、社会的隔離などの生活環境の問題はそれぞれうつ病の発症と関連することが報告されている。亜鉛不足に社会的隔離が重なることで精神機能はさらに悪影響を受け、うつ状態が増悪することが想定される。ところが、実験動物を用いた我々のこれまでの研究からは興味深いことに、亜鉛欠乏と社会的隔離の同時負荷により、うつ様行動や不安様行動はかえって減弱することが明らかとなってきた。一方、亜鉛欠乏や社会的隔離は神経可塑性に影響を及ぼすことも明らかとなってきた。従って、亜鉛欠乏と社会的隔離の同時負荷により、神経可塑性はさらに重篤な障害を受けているのかもしれない。そこで、亜鉛欠乏(Zn(-))および社会的隔離(Social Isolation, SI)の単独負荷あるいは同時負荷が神経可塑性に与える影響を評価することを目的に実験を行った。 3週齡のラットを搬入し、SI負荷は搬入直後より3週間隔離飼育を、Zn(-)負荷は1週間普通食を与えた後にZn(-)食を2週間与えることで行った。コントロール群、Zn(-)群、SI群およびZn(-)+SI群の計4群より海馬を切り出し、神経可塑性に深くかかわるタンパクであるbrain-derived neurotrophic factor (BDNF)やpost-synaptic density-95 (PSD-95)をターゲットしたwestern blottingを行った。BDNFやPSD-95の発現は、コントロール群と比較してZn(-)群やSI群ではある程度低下していたが、Zn(-)+SI群ではさらに低下していた。従って、神経可塑性は亜鉛欠乏や社会的隔離の単独負荷によりある程度障害され、亜鉛欠乏と社会的隔離の同時負荷によりさらに重篤に障害されることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、亜鉛欠乏(Zn(-))および社会的隔離(Social Isolation, SI)のモデル動物を作成して、うつ様行動や不安様行動など気分障害の指標となる行動変化を評価した。また、ノルエピネフリン(norepinephrine, NE)神経系の活動性の指標である3-methoxy-4-hydroxyphenylglycolの血中濃度測定や、NEトランスポーター(NE transporter, NET)の放射性リガンドである(S,S)-2-(α-(2-bromophenoxy)benzyl)morpholineを用いたNETの発現評価を通して、これらの情動変化にはNE神経系の変化が関与している可能性を示し、これらを平成26年度までに遂行することができた。更に、上記の行動変化に対する神経可塑性の影響の評価を加えることもできた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画には盛り込んでいなかったが、亜鉛欠乏(Zn(-))や社会的隔離(Social Isolation, SI)の負荷期間を延長することで、Zn(-)とSIを同時に負荷した場合と同様の行動変化やノルエピネフリン(Norepinephrine, NE)神経系への影響、神経可塑性への影響が現れるのかを評価する。 次いで、得られたデータを集積し、気分障害の指標となる行動変化と,NE神経系の変化や神経可塑性の変化を比較検討する。これらを総合的に評価することで、Zn(-)やSIが情動に与える影響およびそのメカニズムを解明していく。
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Causes of Carryover |
亜鉛欠乏(Zn(-))および社会的隔離(Social Isolation, SI)のモデル動物を作成し、ノルエピネフリン(norepinephrine, NE)神経系の活動性の指標である3-methoxy-4-hydroxyphenylglycolの血中濃度測定や、NEトランスポーター(NE transporter, NET)の放射性リガンドである(S,S)-2-(α-(2-bromophenoxy)benzyl)morpholineを用いたNETの発現定量を通してNE神経系の変化を評価したが、Zn(-)やSIによるNE神経系の変化が予測よりも顕著に表れ、当初計画していたよりも少ない実験動物・実験回数で目標を達成する成果が得られた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
既に開始している、Zn(-)とSIの同時負荷が神経可塑性に与える影響の評価を継続する。 また、当初の計画には盛り込んでいなかったが、亜鉛欠乏(Zn(-))や社会的隔離(Social Isolation, SI)の負荷期間を延長することで、Zn(-)とSIを同時に負荷した場合と同様の行動変化やノルエピネフリン(Norepinephrine, NE)神経系への影響、神経可塑性への影響が現れるのかを評価していきたいと考えている。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] New susceptibility variants to narcolepsy identified in HLA class II region.2015
Author(s)
Miyagawa T, Toyoda H, Hirataka A, Kanbayashi T, Imanishi A, Sagawa Y, Kotorii N, Kotorii T, Hashizume Y, Ogi K, Hiejima H, Kamei Y, Hida A, Miyamoto M, Imai M, Fujimura Y, Tamura Y, Ikegami A, Wada Y, Moriya S, Furuya H, Kato M, Omata N, et al.
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Journal Title
Human Molecular Genetics
Volume: 24(3)
Pages: 891-8
DOI
Peer Reviewed
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