2013 Fiscal Year Research-status Report
FDG―PETによる発症前アルツハイマー病診断の有用性に関する研究
Project/Area Number |
25461783
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
田渕 肇 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (10286578)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | アルツハイマー病 / 発症前診断 / 人間ドック / FDG-PET |
Research Abstract |
慶應義塾大学病院予防医療センターでスーパー癌ドック(全身FDG-PET検査)を受診した症例のうち、文書にて同意が得られた10例に対して脳FDG-PETを追加撮像し、MRI検査、認知機能検査、心理検査等を実施した。気分・不安の評価尺度であるCES-D,IES,STAIについては、FDG-PET検査や認知機能検査の結果の告知後6週間後、6ヶ月後(さらに1年後の予定)に再実施し、検査結果告知後の気分・不安の変化を評価した。脳FDG-PET、認知機能検査ともに明らかな異常を示した症例はいなかった。結果告知は全例で希望されたが、告知後の気分・不安について、現時点では有意な心理的変化は認められていない。 また、認知症の診断をテーマとした研究として、慶應義塾大学病院メモリークリニック受診者を対象に新規の手指模倣検査を実施し、アルツハイマー病(AD)、軽度認知障害(MCI)を対象に、模倣検査の診断的価値の検証を行った。ADではMCI・健常者と比べて、またMCIは健常者と比べ模倣検査の成功率が低かった。また模倣検査ができなかったADはうまくできたADと比較して、MMSE、記憶、遂行機能検査などの検査成績に差がなかったが、頭頂葉領域での血流低下が認められた。 さらにメモリークリニックでは、受診者を対象とした認知機能検査の結果からMCIからADへの進行リスクに関する検討も行った。いくつかの認知領域の機能検査や心理検査の中で、MCIにおける視覚性記憶の検査成績の低下がADへの進行と最も関係が深いことが示された。 以上の結果等について、国内外の専門学会や専門誌で発表を行い、認知症の診断等に関して専門家間での意見交換を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成25年度のスーパー癌ドックにおけるFDG-PET研究の目標は40症例に対する調査実施であったが、同意を得て諸検査を実施できた症例は10例であった。症例リクルートが予定通りに進行していない理由として、スーパー癌ドックには多数の症例が集まったが、本年度は本研究に参加する条件として(脳器質性疾患に対する不安を有する)脳ドックも同時受診した症例のみを対象としたため、対象者が予想数を大きく下回ったことが挙げられる。対象者の中で同意が得られた症例は約半数程度であった。症例リクルートには困難があったが、登録された症例については、全例において認知機能検査・心理検査ともに問題なく実施され、その後のフォローアップも継続されている。 当院のメモリークリニック受診患者を対象とした研究では、認知症(特にアルツハイマー病)の早期診断方法、およびMCIからADへの進行に関する検討を行い、新たな知見を得ることができた。これらの検討には、平成24年度以前に得られた患者データも合わせて利用したため、25年度中に比較的多数例からなるデータベースを構築し、解析を実施することができた。手指模倣検査の調査や、ADへの進行予測因子に関する調査の結果は、既知の知見を支持するものであり、かつ新たな知見も得ることができたため、国内外での専門学会・専門誌で発表を行った。 しかし本研究の第1の目的はFDG-PET検査によるAD診断方法の確立にあるため、研究目的の達成度はSlightly Delayedとした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の目標は、40例以上の新規症例の組み入れと、諸検査の実施、検査後のフォローアップ検査の実施である。目標達成のために、今後は大多数である「スーパー癌ドックは受診したが脳ドックは受診していない」症例にも対象を広げ、症例登録を増やしていく。また平成26年度も25年度同様にデータ解析を行い、中間報告の形で現状に関する学会報告を行う。 さらにスーパー癌ドック受診者を対象に、同意が得られた症例に対するアミロイドPETの実施を予定している。これらについてはすでに慶應義塾大学医学部の倫理委員会において研究計画の承認を得ている。FDG-PET、アミロイドPETを同時に実施すること、また詳細な認知機能検査・心理検査を実施し、その経過をフォローアップすることで、ADの発症前診断方法の確立、および診断結果告知の心理的影響に関する新たな知見が得られることが期待される。 メモリークリニックにおいては、MCIおよびADの診断に関して、どの認知機能検査がより鋭敏であるか等の検討を行うため、平成25年度以前に得られた患者情報を含む、新たなデータベースを構築し、平成26年度中にデータの解析を行う。解析結果は国内外の神経内科・精神神経科・老年科領域の学会に報告し、論文発表を予定している。また本研究全体を通じて得られたADの発症前診断方法・進行予測の方法・有用なAD診断方法に関する知見は、専門家だけでなく家族会などの患者団体によって催される講演会などでも発表していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度においては、症例リクルート数が予定数を下回ったこともあり、予定していた件数の検査・追跡調査等を実施することができなかった。また、中間報告のためのデータ解析費用や発表のための費用等も予定されていた額には至らなかった。しかし認知症の診断、また進行の予測などに関する調査では、比較的多数例に関する検討を実施し、いくつかの発表すべき結果を得ることができたため、これらに関する調査費用・解析費用、発表のための経費等が予定外に生じた。以上の経過により、結果的には当初の予定を2割程度下回る予算を使用することとなったため、若干の次年度使用額が生じた。 平成26年度においては、当初の計画通りの症例リクルートを行い調査を実施し、中間報告のためのデータ構築・データ解析を行い、研究成果を中間発表する予定である。さらに新たにアミロイドPET検査を用いることや、認知機能検査等によるAD診断方法の確立に向けた取り組みも予定している。当初の計画に加え、新たに開始する調査や解析に関する費用、および結果発表のための費用として、次年度使用額を当初の平成26年度予算に加えて使用する予定である。
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Research Products
(9 results)