2014 Fiscal Year Research-status Report
消化器癌における免疫回避機構の解明とその制御に関する基礎的研究
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25461955
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
有上 貴明 鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, 助教 (40527058)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上之園 芳一 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (60398279)
夏越 祥次 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (70237577)
石神 純也 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (90325803)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 癌免疫機構 / 好中球リンパ球比 / Fibrinogen / 全身性炎症反応 / 胃癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
癌細胞は宿主の免疫監視機構から回避する独自の能力を持っているとされているが、その詳細なメカニズムについては不明な点も多い。一方で癌細胞は、全身性の炎症反応を惹起し、免疫応答のバランス不均衡をもたらしている。この現象は、免疫回避機構の要因の一つでもあり、本年度は全身性炎症反応の指標とされるNeutrophil-Lymphocyte Ratio (NLR)に注目した。さらに血液凝固因子のFibrinogenも全身性の炎症反応と関連しており、癌細胞の浸潤や転移の過程において重要な役割を担っているとされ、ある種の悪性疾患においては、予後マーカーとしての有用性も報告されている。そこで胃癌における血清Fibrinogen値とNLRとを同時に評価したF-NLR scoreの臨床的意義について検討し、全身性炎症反応に起因した免疫回避機構のメカニズムを解析することとした。対象は、当科にて手術を行った切除胃癌275例であり、術前1週間以内の血液検体を使用した。血清Fibrinogen値とNLRを測定し、Hyperfibrinogenemia (> 305mg/dL)およびHigh NLR (> 2.34)の症例はF-NLR score: 2、どちらか一方のみ満たす症例をF-NLR score: 1、どちらも満たさない症例はF-NLR score: 0と定義して評価した。結果としてF-NLR score: 0, 1, 2はそれぞれ80例 (29.1%)、130例( 47.3%)、65例 (23.6%)であった。またF-NLR scoreは、有意に深達度やリンパ節転移、リンパ管侵襲、静脈侵襲、ステージと相関していた(P < 0.0001)。さらに予後との関係では、F-NLR scoreが高い症例ほど有意に予後不良であった (P = 0.0016) (Oncology letters, in press)。これらの結果より癌細胞は、全身性の炎症反応を誘発し、宿主の免疫監視機構から回避することで浸潤や転移をもたらす可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
癌細胞の免疫回避機構のメカニズムについて全身性炎症反応の観点から、その臨床的意義も含めて解析し、学会発表およびoriginal articleとして論文発表をすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究については、胃癌以外の消化器癌についても同様に全身性炎症反応の観点から解析を継続する。さらに癌細胞の免疫回避機構に関連し、近年注目されている免疫補助刺激分子であるB7 familyについて高度免疫不全NOGマウスを用いてノックダウン移植モデルを作成し、腫瘍増殖能の評価を行う。免疫不全状態下での宿主のT細胞性免疫応答に対する免疫補助刺激分子B7 familyの機能的な役割について検討を行う予定である。
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