2015 Fiscal Year Annual Research Report
逆流性食道炎による食道発癌過程での炎症性微小環境の解明とその抑制
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25462016
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
宮下 知治 金沢大学, 医学系, 助教 (30397210)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
太田 哲生 金沢大学, 医学系, 教授 (40194170)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 食道発癌 / 逆流性食道炎 / 腫瘍微小環境 / Valpronic acid |
Outline of Annual Research Achievements |
胃食道逆流症(GERD)に代表される消化液の逆流による慢性炎症が食道癌発生の大きな原因の一つとされている。申請者らはラットを用いて十二指腸液と胃液の混合液を食道に逆流させる手術を施行し、約40週間観察すると発癌剤を使用せずに食道癌が発生し、その発癌機序が組織学的にInflammation-Metaplasia-Adenocarcinoma sequenceによることを世界に先駆けて報告してきた。しかしこの惹起された炎症がどのようなプロセスを経て発癌に至るのか詳細は明らかになっていない。近年、腫瘍周囲の微小環境が癌の形成に大きな役割を果たしていることが示唆されている。慢性炎症によりIL-10, PGE2, TGF-β等が恒常的に産生される結果、Stat3の活性化が持続し、抑制性免疫担当細胞(調節性T細胞(Treg)、骨髄由来抑制細胞および 腫瘍関連(M2型)マクロファージ(TAM)が優勢な免疫寛容状態に陥っていることが問題であると考えられる。申請者らは第一に食道発癌のどの段階においてpStat3の活性化が惹起され、TAMやTregが誘導され、癌組織の微小環境が形成されるのかを検討した。次に、pStat3やTGF-β抑制作用を持つHDAC阻害薬であるValpronic acid(VPA)をこの逆流モデルに投与し免疫抑制性微小環境の改変効果を検討した。 最終年である当該年度は40週に達した十二指腸胃食道モデルラットを屠殺し、採取された標本の解析を行った。 逆流による慢性炎症により炎症初期の術後20週目よりpStat3の活性化および汎マクロファージ(M1型)の誘導が認められ、週数を経た扁平上皮過形成、Barrett上皮、癌発生時期にも発現が継続していた。TAMは術後30週目以降でBarrett上皮および癌部周囲に少数ながら誘導されていた。Tregは癌部周囲の一部に発現しているのみであった。またVPA投与群ではコントロール群に比べて癌発生率が低率である傾向を認めた。
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